発電所を建ててダム開発を止める:レジェンド?はたまた惰性?~足温(そくおん)ネット20年の軌跡 | EnergyShift

脱炭素を面白く

EnergyShift(エナジーシフト)

発電所を建ててダム開発を止める:レジェンド?はたまた惰性?~足温(そくおん)ネット20年の軌跡

発電所を建ててダム開発を止める:レジェンド?はたまた惰性?~足温(そくおん)ネット20年の軌跡

2020/02/21

今でこそ、FITによって、太陽光発電などの再生可能エネルギーは全国に拡大している。しかしそれ以前にオルタナティブな社会に向けて、再生可能エネルギーをリードしてきたのは、市民運動であり、市民による発電事業だった。彼らは独自に太陽光発電事業を実現し、道を切り拓いてきた。そして現在、市民による発電事業はどこに向かっていくのか。20年以上前から市民発電事業にかかわってきた、「足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ(足温ネット)」事務局長の山﨑求博氏によるコラムをお届けする。

20年を超える市民発電所

はじめまして。山﨑と申します。東京都江戸川区にある環境NPO足温ネットで事務局をしています。現在足温ネットでは、区内3カ所で計5基の市民発電所(市民立発電所)を運営しており、うち3基でFIT制度に基づく全量売電を行っています。

私たちが、江戸川区に太陽光発電による市民発電所を作ったのは、足温ネットを立ち上げて3年目の1999年7月、今から20年前のことです。以来20年におよぶ活動の中で様々な出来事を経験してきました。そこで、その出来事を振り返りながら、エネルギーのこれからについて考えてみたいと思います。どうか、お付きあいください。

環境NPO足温ネット(リンク:https://www.sokuon-net.org

ダム開発で消える渓谷

足温ネットが市民発電所を作ったのには理由があります。それはダム開発を止めることでした。

そのダムは「揚水発電ダム」です。今でこそ、再生可能エネルギーを貯めておく存在として注目されていますが、当時は、原子力発電所が電力需要の少ない夜間に発電した電気を貯めておく存在として、全国に40基が建設されていました。

揚水発電ダムは、位置エネルギーを稼ぎ出すため、急峻な山間部に上下2か所にダムを建設し、夜間電力を使い、下ダムから上ダムに水を引き揚げ、昼間の電力需要に合わせ、水を落として発電します。あまり人が住んでいない地域で建設されるため、反対運動も起きにくい状況でした。

包丁で有名な岐阜県関市に、板取という地区があります。集落を過ぎて、どんどん山の中に入っていくと、川浦渓谷(かおれけいこく)が姿を現します。この渓谷は深く、日中もあまり陽が差さないため、真夏でも冷涼な環境が保たれ、貴重な生態系が息づく場所でもあります。

ここに、中部電力が揚水発電ダムの建設計画を進めていました。地元の有志グループが渓谷の自然を守ろうとダム建設の反対運動に立ち上がります。そして、その人たちと出会うことで、私たちは揚水発電ダムとその問題点を知りました。

川浦渓谷(写真:著者提供)

発電所はお寺の屋根に

東京でエネルギーを消費する者として何か応援できないか、そう考えた私たちは、江戸川区内に太陽光発電による市民発電所を作ることにしました。

発電所は、真夏の電力需要のピークをカバーするために建設されます。その時期に最も発電するのが太陽光発電です。太陽光発電の発電によって、ピークが上がらなくなれば、それをカバーするための発電所も建設する必要がなくなると考えたのです。

最初、私たちは学校の屋上に市民発電所を作ろうと考えました。災害時の緊急避難場所になる学校なら、非常用の電力を供給できると考えたのです。ところが、区の教育委員会にこの話を持っていくと意外な答えが返ってきました。

「市民から太陽光発電パネルを寄付していただくなら大いに結構。しかし、寄付いただいたものは学校の備品となるので、学校で管理することになる」

市民が管理・運営してこその市民発電所です。学校の備品を提供するために作るのではありません。建設計画は振り出しに戻ると思われました。しかし、設立メンバーの一人であるお寺の住職が、客殿を立て替えるので、その屋根を使ってはどうか、と言ってくれました。そして、お寺の屋根に市民発電所を作ることが決まります。

あっ、お金が足らない!

実際に屋根の上に乗せる太陽光発電パネルは5.4kWと、今から考えると大変小さなものです。しかし、建設費用は590万円かかりました。1kW当たりの施工単価が100万円を超えていたのです。

私たちは、お金集めから建設、運営にいたるまで全て市民の力だけでやろうと決めました。この頃は国などの助成金制度があり、新エネルギー財団と自然エネルギー推進市民フォーラムからの助成金で 220万円をまかないました。

次に、お寺からもお金をいただきました。仕組みはこうです。太陽光発電による電気はお寺で自家消費され、余った電気は電力会社に売ります。なので、お寺は電気代がかからず、余った電気を売ることで収入を得ることになります。そこでお寺が足温ネットに対し、電気代相当分を10年分一括前払いすることで210万円を確保したのです。

残る160万円については、ひろく市民から寄付を募ることにしました。生活クラブ生協・東京の「草の根市民基金・ぐらん」からいただいたお金でチラシを作成し、呼びかけたのです。名称は「太陽かわら寄進」。昔からお寺が寄付を集める時に行われていた「かわら寄進」をもじったものでした。1口5千円です。ところが、寄付は思うように集まらず、集まったのは42万円でした。結局、118万円足りなくなってしまいます。

さて、どうやって工面したものでしょうか。そして、川浦渓谷の揚水発電ダム計画はどうなったのでしょう?それは、次回で。

太陽光パネル設置の様子(写真:著者提供)
山﨑求博
山﨑求博

1969年東京江東区生まれ。東海大学文学部史学科卒。現在、NPO法人足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ事務局長。自分をイルカの生まれ変わりと信じて疑わないパートナーとマンション暮らし。お酒と旅が大好物で、地方公務員と環境NPO事務局長、二足の草鞋を突っかけながら、あちこちに出かける。現在、気候ネットワーク理事、市民電力連絡会理事なども務める。