ファイナンス組成に関しても、何も月次の収益変動を発電事業者が負わず、市場価格の変動リスクを小売電気事業者、あるいは再エネ電力を束ねるアグリゲーター側で負うといったビジネスモデルも考えうる。
売電収入にプレミアムを乗せる形だと、月次の収益変動は生まれてしまうが、たとえば参照価格と呼ばれる1ヶ月ごとに機会的に算定される平均市場価格と環境価値の合計価格にプレミアムを乗せれば、擬似FITとして収入を固定化できる。
こうしたビジネスモデルは構築されつつある。
東芝ネクストクラフトベルケでは、発電事業者から参照価格で再エネ電力を買い取るスキームを打ち出している。発電事業者にとっては参照価格6.6円にプレミアム3.4円を上乗せした10円で買い取ってもらえることで、変動リスクを回避できるという仕掛けだ。東芝グループは擬似FITスキームを提供することで、太陽光発電所を増やし、オフサイトPPAとして脱炭素を目指す企業に供給しようという狙いがある。
オフサイトPPA拡大に向けたビジネスモデル
商流(例)
出典:経済産業省「FIP 制度の開始に向けて」をもとに編集部作成
もうひとつのビジネスモデルが小売電気事業者との連携である。
FITのもとでつくられた再エネ電力の調達価格は、JEPXの取引価格に連動する仕組みだ。だが、天然ガスなどのエネルギー価格がJEPX価格を高騰させる現状下では、FIT再エネの調達価格が顧客への販売価格を上回る「逆ザヤ」が生まれており、破綻や撤退に追い込まれる新電力が相次ぐ。
だがFIPであれば、新電力はJEPXを介さずに、たとえば10円/kWhという固定価格で調達し、需要家に直接、供給する相対契約を結ぶことで、市場連動になってしまっている再エネ電力の価格高騰を防ぐことが可能となる。
JEPXを介さずに再エネ電力を供給するビジネスモデル
出典:経済産業省「FIP 制度の開始に向けて」をもとに編集部作成
FIPは確かに複雑で、わかりにくい。しかし、シミュレーション結果やビジネスモデル事例を見ると、多少のリスクを取れば収益の拡大や、民間企業で導入機運が高まるオフサイトPPAの起爆剤になりうる可能性を秘めている。
太陽光関連事業者に淘汰の波が迫る中、オフサイトPPAなどさまざまなビジネスモデルが登場すれば、太陽光発電市場は再び成長軌道に乗るのかもしれない。
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