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ユニコーン有望株の破産は序章か 異常な高騰続く電力卸価格、今冬、新電力の倒産が増えるおそれ

2021年12月10日

パネイルグループの破産は序章!? 新電力の倒産が増えるおそれ

足もとでは卸電力価格の高騰が止まらない。日本卸電力取引所(JEPX)の取引価格(24時間平均)は、11月平均が1kWhあたり18.5円と、5.6円だった2020年11月と比べ約3倍も上昇した。JEPXで取引が始まった2005年以降、11月としては過去最高値を記録したという。

卸電力価格の高騰要因のひとつがLNG(液化天然ガス)の高騰だとされている。アジアのLNGスポット価格(JKM)は2021年に過去最高値を2度も更新し、10月6日には100万BTU(英国熱量単位)あたり、56.32ドルをつけた。大手電力会社はLNGを長期契約で調達しているため、日本の輸入価格は10ドル前後で推移しており、LNGのスポット価格高騰はただちに影響しないと見られていた。

ところが、相次ぐ石炭火力発電所の故障と10月の気温上昇による電力需要の増加が重なった結果、LNGの消費量が増え、中国電力、九州電力、北陸電力、四国電力、関西電力の5社でLNGが在庫切れ寸前となり、11月以降、LNG火力の出力を大幅に低下させた。

大手電力会社はこの冬の需給ひっ迫をなんとか回避しようと、スポット市場からもLNGを調達していると見られる。こうした中、LNGのスポット価格を卸電力価格に反映させる動きが出始めている。11月22日に東北電力が卸電力市場に供給する電力価格の基準について、スポットで追加調達したLNGの燃料価格を参照すると表明。11月24には日本最大の火力発電事業者であるJERAも、12月1日に関西電力も同様の声明を発表した。

高騰するLNGのスポット価格を電力価格に反映させる対応は、逆ざやが増える大手電力会社を救済しようと、電力・ガス取引監視等委員会が10月22日に開いた制度設計専門会合において決定した方針である。だが、LNGのスポット価格高騰が卸電力価格に反映されれば、JEPX価格のさらなる上昇をもたらす可能性がある。

新電力からは「大手電力5社の出力低下や、この冬の燃料確保に向けた動きの結果、卸電力市場への玉だし(電力供給)が減り、その結果、卸価格が上昇したのではないか」と疑問視する声が出ており、電力・ガス取引監視等委員会などに、価格高騰に関する原因究明と大手電力会社に対する監視を強化するよう求めている。

本格的な冬の到来を前に、高騰する卸電力価格。新電力はJEPX市場への依存度を低下させようと取り組むが、電力の調達価格の高止まりは長引く公算が高く、新電力の経営破綻がさらに発生する可能性が浮上している。

 

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藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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