1月26日、日本総合研究所(以下、日本総研)とアビームコンサルティングは、「企業における脱炭素経営の取り組みの実態」についての報道関係者向け発表会を開催した。会は、世界的に加速するカーボンニュートラル動向に対応すべく、企業のGX(グリーントランスフォーメーション)化がどのように動いているのか、その実態をつかむべく両社が行ったアンケート結果を軸に進行された。
アンケートの対象となったのは、製造業(最終製品)、製造業(中間製品)、卸売業・小売業、金融・保険業、不動産業・物品賃貸業、運輸業・郵便業、情報通信業の7業種。その中で、省エネ法および温対法の報告対象事業者となる合計309社を対象に実施された。
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本会見では、まず序盤で、政府による2020年カーボンニュートラルやその後の種々の政策、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)を始めとした国際的イニシアチブなどに触れつつ、それらを背景に持つ現代での企業経営とGXとは大きく3つに分けられるとした。
1 | 既存ビジネスにおけるリスク「コスト増加による収益低下、外部からの企業評価の低下」への対応 | ・GXロードマップの早期策定や再エネ電力の安定的調達など、最適な温室効果ガス(GHG)削減対策による投資コストの最小化 |
2 | 既存ビジネスにおける機会「企業価値の向上による競争力強化」の創出 | ・サプライチェーン取引企業と連携したGHG削減モデルの構築 ・地域コミュニティと連携したGHG削減対策モデルの構築 |
3 | 新ビジネスにおける機会「新たなビジネスモデル構築による収益獲得」の実現 | ・設備運用最適化プロセスの構築による収益獲得 |
このように大きく3つに分類される企業のGXだが、上記のいずれにしても、その実現を達成するには、取り組みを「1.戦略」「2.対策」「3.データ管理/報告」の3つに分けて考える必要があるとしている。そして、その取り組み状況の実際をつかみ、課題傾向をつかむために行われたのが、今回の調査となった。
調査結果「GX戦略」
CN実現へのコミットメント状況
CN実現に向けたコミットメント表明企業多数
2050年までの戦略ロードマップ策定状況
2050年までの戦略ロードマップ策定の整備ができている企業は少数
GHG排出量の見える化実施状況
Scope3の見える化については、Scope1、2と比べ遅れている
出典:日本総研、アビームコンサルティング発表資料「エネルギー需要家企業におけるGX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けて」
まずは、第一の調査項目となった「戦略」についてだが、「カーボンニュートラル実現に向けたコミットメント」を表明している企業は74%となった。世界的な気運に乗り、企業にネガティブイメージを持たれないようにするためにも、脱炭素に向けた積極性自体は見受けられる状況だ。
一方で、「2050年までのロードマップ策定」を行っている企業はスコープ1(企業の直接排出)、スコープ2(企業の間接排出)に限っても16%止まりとなった。さらにスコープ3(スコープ1、2以外の全て)に目を向け、サプライチェーン全体でのロードマップ策定を見れば10%にまで下がるという。積極性を表す対外的な姿勢は見せているものの、実態が追い付いていないという現状が見えてしまった形だ。
またロードマップ策定の前段階に当たる「GHG排出量の見える化を実施している」については、スコープ1で53%、スコープ2で55%、スコープ3で46%となった。GHG排出量の見える化は、その対象範囲の広さや種類の多さによってスコープ1、2と3の間における負担差が大きくなるため、その影響が出た形だ。
これらを踏まえた日本総合研究所とアビームコンサルティングの総括においても「2050年のカーボンニュートラル実現は重要な経営課題と認識される一方、サプライチェーンを含めた全社GHG排出量の見える化および戦略策定は未整備であり、早急にアクションが必要な状況」としている。
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