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日本企業309社の脱炭素の取り組み状況を徹底調査 見えてくる企業の本音と課題とは 日本総研・アビーム報道発表より(前編)

2022年02月08日

企業のGXマネジメント現状調査——2.対策について(スコープ3)

Scope3対策の実施状況

Scope3対策の課題


出典:日本総研、アビームコンサルティング発表資料「エネルギー需要家企業におけるGX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けて」

最後にスコープ3だが、「戦略」のGHG排出量見える化でも述べたように、取引先企業を巻き込むため範囲が膨大となるスコープ3は対策が難しく、中々進んでいないという状況だ。範囲や総量の大きさ故、単純に排出量を把握して具体的な対策を練るのが難しいというのもあるだろうが、課題に「取引先と連携した対策実施」が46%、「取引先に対するコスト負担の依頼」43%が上がっていることを見ても、経営上における企業間のバランス調整が難しい現実が見えてくる。

しかしながら、スコープ3は自社の努力だけで達成することが非常に難しい要素であるため、サプライチェーン内でのすり合わせをどのように行っていくのか、環境対策への意識とは別ベクトルの努力が求められるだろう。

企業のGXマネジメント現状調査——3.データ管理/報告について

エネルギーコストデータの管理状況


出典:日本総研、アビームコンサルティング発表資料「エネルギー需要家企業におけるGX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けて」

取り組みの最後となるのはGHG排出量のデータ管理/報告の仕組みについてだ。

アンケートでは各企業の「エネルギーコスト情報の一元管理状況」を調査。その結果、「エネルギー使用量のみ」もしくは「エネルギー使用量+コスト合計値」という一部分の情報管理を行っている企業が73%となった。一方で、契約単価、再エネ賦課金、燃料・原料調整費などの明細値に関しては、市場経済が及ぼす影響が大きいこともあり、完璧に管理できている企業は15%に留まっている。

両社は、この差異が生じた背景について、従来のGHG排出量管理が省エネ法や温対法の遵守を前提としたものであったため、大枠でのエネルギー使用量データが管理されていれば十分であったため、対応が追い付かなかったのでないかとしている。

今後は、技術革新によって脱炭素への取り組み方がさらに多様化・複雑化していく。従来の省エネによる「化石エネルギーの消費削減」だけでなく、再エネ電力など「非化石エネルギーへの転換」、CCUS等の「クレジット調達」など、さまざまな対策方法の中から、最も高効率で経営リスクの低い手法を選ぶ必要がある。そのため、より詳細なデータの管理体制が整っているかどうかは重要なのだ。

また、算定・管理の手法についても両社は言及している。現在のGHG排出量管理のためのデータ収取は現場での手入力が多いとしており、業務効率性や正確性に改善の余地があると伺える。

Scope1、2のデータ管理における課題

Scope3のデータ管理における課題


出典:日本総研、アビームコンサルティング発表資料「エネルギー需要家企業におけるGX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けて」

現在、日立製作所やNTTグループなどの企業がCO2排出量算定システムをリリースしており、ビジネスに結び付けているが、こうした背景と非常にマッチしていることがわかるだろう。

では、こうした状況下にあって、企業はどのように対応していくべきか。日本総研とアビームは、そこの疑問に対して4つの指針を示唆している。後編ではその内容について語っていきたい。

後編はこちら

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高橋洋行
高橋洋行

2021年10月よりEnergyShift編集部に所属。過去に中高年向け健康雑誌や教育業界誌の編纂に携わる。現在は、エネルギー業界の動向をつかむため、日々奮闘中。

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