国内洋上風力発電のパイオニア的立ち位置にある戸田建設、ただし収益貢献のタイミングが注目される【脱炭素銘柄】 | EnergyShift

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国内洋上風力発電のパイオニア的立ち位置にある戸田建設、ただし収益貢献のタイミングが注目される【脱炭素銘柄】

国内洋上風力発電のパイオニア的立ち位置にある戸田建設、ただし収益貢献のタイミングが注目される【脱炭素銘柄】

2021年08月16日

脱炭素が加速する中で、政府は洋上風力発電を再生可能エネルギーの切り札と位置付けている。国内では戸田建設が長崎県五島市沖で洋上風力発電を2012年から手掛けており、一連のノウハウを蓄積している。

戸田建設は国内洋上風力発電のパイオニアとなりうる立ち位置にあり、株価も洋上風力発電事業の成長を織り込み始めている。ただし洋上風力発電事業が収益貢献を始めるタイミングには注意を払う必要がある。

国内風力発電は洋上風力発電が次の主戦場に

風力発電は国内でも比較的長い歴史を持つ。国内最大の風力発電事業者は商社の旧トーメンを源流に持ち、現在は豊田通商と東京電力HDが株主のユーラスエナジーHDだ。ただし国内の地上で風力発電に適した場所には、概ね風車の設置がなされている状態だ。

世界的に脱炭素が加速する中で、国土を海に囲まれた日本では洋上風力発電に注目が集まっている。国内の洋上風力発電は殆ど手が付いておらず、政府は洋上風力を再生可能エネルギーの切り札と位置付けている。その中で経済産業省と国土交通省は、7月30日に北海道、山形県、岩手県の3地域で洋上風力発電の開発を進めるための調査を行うと発表した。

戸田建設は五島市沖で浮体式洋上風力発電の実証実験を2012年から手掛けている

既に海外では欧州中心に着床式洋上風力発電が実用化されているが、欧州に比べ海底が深い国内では浮体式洋上風力発電の導入が現実的とされる。準大手ゼネコン・戸田建設<1860>は2012年に長崎県五島市沖に2,000kWの浮体式洋上風力発電設備の建設を行い、事業全体を取り仕切ることで浮体式洋上風力発電のノウハウ蓄積を進めている。

また戸田建設を始めとする6社のコンソーシアムは、本年6月に五島市沖で浮体式洋上風力発電8基を建設し総出力16.8MWの発電事業を行うことが認められた。尚、事業規模は数百億円規模と予想されている。

政府が推進する北海道(着床式)、山形県(着床式)、岩手県(浮体式)における洋上風力発電事業はこれからの状態だ。一方で戸田建設は五島市沖で浮体式洋上風力発電について実証実験の段階を終え実用化がなされており、今後更に事業の拡大が期待されている。

洋上風力発電について一連のノウハウの蓄積を始めている戸田建設は、国内における浮体式洋上風力発電で欠かせない存在となりつつある。しかし五島市沖での浮体式風力発電が実用段階にあり、コンソーシアムで参加する五島市沖での浮体式洋上風力発電は事業規模数百億円とされているが、同社の決算に対する収益貢献のタイミングと規模はフタを開けてみないと分からない。


「崎山沖2MW浮体式洋上風力発電所」より

戸田建設の業績及び株価推移

戸田建設の2021年3月期実績及び2022年3月期予想決算は下記である。

2021年3月期 売上高5,071億円(対前年同期比▲2.2%減)、営業利益276億円(同▲21%減)、当期純利益197億円(同▲23%減)

2022年3月期(予想) 売上高5,150億円(同1.6%増)、営業利益236億円(同▲14%減)、当期純利益169億円(同▲14%減)

2021年3月期は対前年同期比で営業利益は▲21%の減益となり、2022年3月期も▲14%の減益予想である。尚、部門別損益では洋上風力発電事業を含む「新領域」セグメントは、売上高20億円、セグメント利益▲10億円の規模に留まる状態だ(2021年3月期)。

戸田建設の決算は減益が続く予想であるが、直近10年の同社株価は緩やかな右肩上がりで推移している。2018年6月の1,013円が天井となり、コロナショック時には484円まで下落した。その後は徐々に回復しており、本年3月以降は800円を前後する水準で取引が続いている。

戸田建設の予想PERは約14倍(8月10日時点、以下同様)だ。ゼネコン大手の鹿島<1812>9倍、大成建設<1801>11倍、清水建設<1803>10倍に比べて若干高い水準にある。また戸田建設の予想PERの推移を見ると2017年以降では平均約11倍であり、大手ゼネコン並みの予想PERで推移している。現在の同社予想PERは過去水準から見ても買われている状態だ。

浮体式洋上風力発電事業の成長への期待感は、既に同社の株価に織り込まれ始めているといえよう。

戸田建設の株価は期待先行で上昇も浮体式洋上風力発電事業の収益貢献のタイミングが注目される

戸田建設は五島市沖で既に浮体式洋上風力発電の事業を展開しており、政府が洋上風力発電を再生可能エネルギーの切り札として位置付ける中で、国内洋上風力発電のパイオニアとなりうる立ち位置にある。

ただし同社は浮体式洋上風力発電の様々なノウハウを有しているとはいえ、同事業が収益貢献を始める時期や規模はまだ不透明な部分がある。減益が続く決算の一方で、株価及び予想PERの緩やかな上昇が続くなど、気の早い株式市場は既に同社の浮体式洋上風力発電事業の成長を織り込み始めている状態だ。

戸田建設の洋上風力発電事業が今後どのようなスケジュールでどの程度の成長を見せるのか、株価の推移ともに注目される。

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石井 僚一
石井 僚一

金融ライター。大手証券グループ投資会社を経て個人投資家・ライターに転身。株式市場や個別銘柄の財務分析、為替市場分析を得意としており、複数媒体に寄稿中。過去多数のIPOやM&Aに関与。ファンダメンタルズ分析に加え、個人投資家としてテクニカル分析も得意としている。

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