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発電側課金の調整措置 再エネ賦課金増額へ 第32回「再エネ大量導入・次世代電力NW小委員会」

発電側課金の調整措置 再エネ賦課金増額へ 第32回「再エネ大量導入・次世代電力NW小委員会」

2021/06/09

2021年5月12日に開催された総合資源エネルギー調査会の第32回「再エネ大量導入・次世代電力ネットワーク(NW)小委員会」で議論されたテーマのうち、「発電側課金」についてお伝えする。これは、現在、小売電気事業者のみが負担している、送配電線の使用量である「託送料金」について、新たにその一部を発電事業者にも負担させるという仕組みである。

審議会ウィークリートピック

託送料金原価の1割を発電事業者が負担

2023年度の託送料金改革(レベニューキャップ制度の導入)に合わせて、「発電側課金」の導入が予定されている。

従来の仕組みでは、電力需要の拡大に応じて送配電設備を整備してきたことから、需要家が起因者・受益者であるとの考え方に基づき、託送料金の全額を小売電気事業者(需要側)が負担してきた。近年は再エネを中心に分散型の電源が増加しており、発電事業者が送配電設備増強の起因者・受益者となるケースが大幅に増加している。

このため既存の送配電設備を効率的に利用することや、再エネ導入拡大に向けた系統増強を効率的かつ確実におこなうことを目的として、系統利用者間でより公平な費用負担とすることが、発電側課金が導入される趣旨である。発電側課金の規模は、託送料金原価の1割程度(5,333億円)と想定されている。

図1.発電側課金のイメージ

出所:再エネ大量導入・次世代電力NW小委

なお、あくまで託送料金原価の一部の負担者が変更されるだけであるため、託送料金の総額(社会全体の負担額)は不変、もしくは今後の系統整備が効率化されることにより総額は抑制されると考えられる。

本稿では、第32回「再エネ大量導入・次世代電力NW小委員会」における、発電側課金の調整措置に関する議論の様子をお届けしたい。

現時点の発電側課金制度案

当初は「発電側基本料金」と呼ばれていたとおり、その全額を契約kWによる基本料金・固定料金として課金することが想定されていた(総額約5,300億円)。この場合、設備利用率の低い発電種別である太陽光や風力発電の実質的負担が相対的に大きくなるという課題も生じていた。

しかしながらその後の基幹送電線利用ルールの抜本的見直し等を踏まえ、kWhも考慮した課金体系に見直すこととして、契約kW課金(基本料金)とkWh課金(従量料金)の比率は、1:1とすることが合意されている(それぞれ約2,650億円)。

kWh課金を併用する見直し案では、当初の全額kW課金方式と比べ、再エネ電源の発電種別により、費用負担の影響に差異が生じている。

図2.再エネ電源別 見直し前後の負担単価イメージ

※括弧内の数値は設備利用率

出所:再エネ大量導入・次世代電力NW小委

図2では、太陽光の見直し後では0.97円(約1円)と試算されており、この「約1円」が後述するように議論のメルクマール(指標)となる数値である。

なお図1の数値は全国平均の試算値であり、実際にはエリアにより託送原価や再エネ導入量も異なることから、発電側課金の料金水準もエリアにより異なることとなる。

表1.発電側課金 エリア間の幅(電源別・割引なし)

太陽光 :0.84 ~ 1.07円/kWh

風力 :0.64 ~ 0.78円/kWh

地熱 :0.41 ~ 0.47円/kWh

中小水力 :0.39 ~ 0.44円/kWh

バイオマス :0.37 ~ 0.42円/kWh

出所:再エネ大量導入・次世代電力NW小委

発電側課金の調整措置

発電側課金は発電種別を問わず、火力や原子力、再エネ、FIT電源等すべての電源が課金の対象とされる(ただし住宅用太陽光発電は、当面は発電側課金の対象外)。

他方、図1で示したとおり、小売電気事業者が負担すべき託送料金は従来と比べて1割程度減額されることとなる。

発電事業者と小売事業者間では相対取引により、電気の卸供給に関する契約が締結されているはずであることから、発電側課金導入により生じた影響に関して事業者間の協議を通じて、既存契約の内容を適切に見直すことが望ましいと考えられる。

このため電力・ガス取引監視等委員会では、新たに「発電側課金に関する既存相対契約見直し指針」を策定する予定としている。指針では、小売事業者の需要側託送料金の減額分(全国平均では約0.5円/kWh。エリアにより0.43~0.65円/kWh)を、発電事業者・小売事業者間の取引価格に適切に充当すべきとしている。

発電側課金が小売事業者側へ円滑に転嫁されるならば、発電事業者の実質的な負担は生じないこととなる。

しかしながらFIT電源では、この原則から外れることから費用負担の調整措置の在り方について、2018年以来3年もの間、議論が継続されてきた。

FIT電源はFIT制度による調達価格が定められているため、発電側課金導入により新たに生じた費用負担を、FIT発電者は自然体では他者に転嫁することが出来ない、という課題があった。

この他者とはFITの買取義務者であり、FIT制度開始当初は小売電気事業者、2017年4月以降は一般送配電事業者のことを指す。

制度設計専門会合や、調達価格等算定委員会、再エネ大量導入・次世代電力NW小委における3年間の検討の結果、小売事業者が買い取るFIT電源については、火力等の電源と同様に、FIT調達価格とは別に、事業者間の協議により適切に転嫁可能と整理された。

図3.小売買取の場合の転嫁(太陽光想定)

出所:再エネ大量導入・次世代電力NW小委

この小売事業者に転嫁できる部分以外については、なんらかの調整措置が必要とされているが、その原資としてはFIT再エネ賦課金を用いることが事務局案として示されている。

また図4の送配電買取の場合は、小売事業者と発電事業者間での直接の取引が無いことから、小売事業者への転嫁は困難である。このため送配電買取では発電側課金の全額が調整措置の対象となり得る。

図4.送配電買取の場合の転嫁(太陽光想定)

出所:再エネ大量導入・次世代電力NW小委

なお先述のとおり、発電側課金や小売託送料金減額の水準はエリアにより異なるが、FIT認定件数(住宅用太陽光を除く)は70万件以上存在することや、発電側課金が安価である地域に新規電源の立地誘導を図る観点から、調整措置は全国一律とすることが提案されている。

FIT新規認定案件に対する調整措置

FIT新規認定案件に対する調整措置はシンプルである。

発電側課金によりFIT発電者の費用負担は増えるものの、発電側課金をFIT制度の「事業が効率的に実施される場合に通常要すると認められる費用」として扱うことにより、調達価格に上乗せされる(売電価格も上がる)ことで調整される。

発電側課金の上昇分は、エリア別ではなく全国平均値を想定する。

また発電側課金では、電力系統の潮流改善効果に着目した複数の割引制度が設けられているが、FIT新規案件調達価格設定に際しては割引制度の適用は考慮しないこととする。

つまりFIT電源が割引対象地域に新設された場合は、実際には割引が適用されながら、FIT売電単価は全国共通であるため、発電者は追加的な利益が得られる状態となる。

これにより割引制度の狙いどおり、潮流改善に役立つ地域への立地が促進されると期待される。

FIT既認定案件に対する調整措置案

FIT既認定案件に対する調整措置の案は複雑である。

まず調整措置の検討の中で、既認定案件はFIT調達価格の算定に関連して、

①制度上の追加的な利潤配慮がなされているもの(利潤配慮期間内の事業用太陽光)

②利潤配慮がなされていないもの(利潤配慮期間外の事業用太陽光、それ以外の電源)

の2つのカテゴリーに分けて検討がなされてきた。

①の案件は、FIT制度開始時点における様々なリスクの発生を見込み、「適正な利潤」の上に更なるIRRが例外的に上乗せされた調達価格が設定されているため、調整措置は不要という考え方である。

認定量ベースでは事業用太陽光(計67GW)のうち、利潤配慮期間内は50GW、利潤配慮期間外は17GWほど存在する。

小売買取案件に対する調整措置に関しては、小売事業者への転嫁(0.5円/kWh)を通じた調整をおこなうことを前提としたうえで、なお残る負担分の調整方法として、以下の3つのタイプが検討されている。

A)負担分全額水準をFIT賦課金で調整する

B)負担の一部を賦課金で調整し、残りを再エネ発電事業者が負担する

C)負担分全額を再エネ発電事業者が負担する

C案は、小売事業者への転嫁(0.5円/kWh)以外には調整措置は不要という考え方であり、逆にA案は既認定発電者に最も配慮した案である。

B案はその中間であり、最も発電側課金kWh単価が高い太陽光(約1円)において小売転嫁(0.5円/kWh)後に残る負担水準(約0.5円/kWh)を、発電者と賦課金で半分(0.25円/kWh)ずつ負担しましょう、という案である。

調整措置の費用水準の観点から、上記図2の再エネ電源別に費用負担イメージを描きなおしたものが図5である。

図5.電源別 発電側課金の転嫁と調整額のイメージ

出所:再エネ大量導入・次世代電力NW小委

図5を見ると、設備利用率が相対的に高い地熱・中小水力・バイオマスの3電源(小売買取案件)は、小売事業者への転嫁(0.5円/kWh)を通じた調整(青色の部分)のみで、発電側課金を原則カバーすることが可能であると考えられる。

また風力発電については、小売転嫁を超える部分は0.22円/kWh程度であることから、A案とB案で実質的に差異がないと考えられる。

利潤配慮期間の内外による①②の2つのカテゴリーと、調整措置のタイプとしてA・B・C案の3つを組み合わせる中で、②利潤配慮がなされていない案件については調整措置を講じる方向で議論されてきたことから、②-C案は除外される。

措置案として残された6つの組み合わせにおいて、調整措置に要する再エネ賦課金の規模を示したものが表2である(FIT認定量ベース)。

表2.現時点の小売/送配電買取に基づく賦課金の規模

  利潤配慮されていないもの
(利潤配慮期間外の事業用太陽光、それ以外の電源)
A)負担水準全額を賦課金で調整B)負担の一部(0.25円/kWh)
を賦課金調整、残り負担
利潤配慮
されているもの
(利潤配慮期間中の事業用太陽光)
A)負担水準全額を賦課金で調整約660億円/年約610億円/年
B)負担の一部(0.25円/kWh)
を賦課金調整、残り負担
約530億円/年約480億円/年

出所:再エネ大量導入・次世代電力NW小委

利潤配慮期間の内外①②のいずれもA案「負担分全額水準をFIT賦課金で調整する」場合(①-A+②-A)の賦課金の増額は年間660億円となると試算された。なお仮に、小売案件がすべて送配電買取に移行した場合には、(①-A+②-A)は約1,170億円へと増加する。

このケースの場合、FIT発電者の利益を保護するために一般消費者等の需要家の負担が年間660~1,170億円増加することを意味している。

そもそも調整措置を講じることの必要性に関しても、現在も委員の間では意見が大きく分かれている。2050年カーボンニュートラルに向けた再エネ大量導入という長期的観点から、適正な調整措置が実現することを期待したい。

梅田あおば
梅田あおば

ライター、ジャーナリスト。専門は、電力・ガス、エネルギー・環境政策、制度など。 https://twitter.com/Aoba_Umeda

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