BBCはイギリスの、もっというと欧州のメディアだ。
さて、彼らは果たして本当に「流出した文書を」入手したのだろうか。それとも、意図的なリークを受け取ったのだろうか。
ここは憶測の域を当然出ないが、筆者個人は後者だと思っている。
そもそも、本来流出してはならない大量の文書が流出したこと自体、おかしい。
おかしいことには裏がある。その裏には必ず意図がある。
なぜなら、外交官時代、どう考えてもクローズドな会議で参加国以外知りえない情報が、メディアにリークされ、議論の誘導に使われた、というのを何回も目の当たりにしているからだ。
そして、それは得てして、勝負所で情報が出てくる。
さらにいえば、それは、自分たちの都合のいい方に議論を誘導したいと思っているであろう国のメディアからリークされる。
例えば、とある原子力の論点で、米国と欧州の議論が対立していたときに、米国のブルームバーグと、欧州のロイターが同時に相手にとって困る情報を双方リークし合うということがあった。守秘義務があるので、詳しくはいえないが、日本もその論点に巻き込まれていたため、「なんだこれは」、と思ったのが鮮明に記憶に残っている。とともに、メディアというのもまた、こうした政治の道具に使われている、というのもまざまざと実感した。
世界に発信力をもつメディアを自国、ないし自地域に持つということの意味を痛感したところでもある。
その経験は、筆者がG20大阪サミットで、当時貿易と並んで激しい議論が行われていると報じられていた気候変動の首脳宣言の文言を起草し、そして各国と調整をしている当事者であったときに活きた。到底、調整が無理だといわれた気候変動部分の調整ができたのは、メディアへの流出も含めて計算し、逆に誘導をかけることができたからだと個人的には考えている。
そして、結果は、読み通り、各国に途中で送っているドラフト段階のものであって、秘匿しなければならないものが、メディアから随時報道をされ、そして彼らにとって持っていきたい方向に議論が誘導をされるということが起きた。その「流出」を所与にしていなければ、大阪での文言調整の成功はあり得なかっただろう。
筆者が、欧州はやり方が汚いと実感を込めて主張する理由・・・次ページ
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