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脱炭素から「活炭素」へ CO2を資源にする動きが本格化

脱炭素から「活炭素」へ CO2を資源にする動きが本格化

2022年02月15日

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は1月28日、グリーンイノベーション基金事業の一環である、「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」の公募を実施し、コンクリート分野で3テーマを、セメント分野で1テーマ、計4テーマを採択したと発表した。

コンクリート・セメント分野におけるCO2削減のポテンシャルとは

コンクリート・セメント分野への CO2の利用については、CO2固定化ポテンシャルが高いこと、生成物が安定していることなどから、早期の社会実装による大規模なCO2削減が期待され、日本国内において研究開発・実証が本格化している。

同プロジェクトは、コンクリート分野におけるCO2排出削減・固定量の増大と低コスト化に向けた技術開発と、セメント分野における製造プロセスのCO2分離・回収技術の確立、さらに回収したCO2のセメント原料化に向けた技術開発を目指す。

事業の予算総額は550億円(NEDO支援規模)。実施期間は2021年度~2030年度の予定で、今回の公募には6件の応募があった。採択されたテーマの概要は以下の通り(表1)。

表1

採択テーマ実施予定先
革新的カーボンネガティブコンクリートの材料・施工技術及び品質評価技術の開発鹿島建設
デンカ
竹中工務店
CO2を高度利用したCARBON POOLコンクリートの開発と舗装および構造物への実装安藤・間
内山アドバンス
灰孝小野田レミコン
大阪兵庫生コンクリート工業組合
大成ロテック
一財電力中央研究所
コンクリートにおける CO2固定量評価の標準化に関する研究開発東京大学
CO2回収型セメント製造プロセスの開発太平洋セメント
住友大阪セメント

出典:NEDOのHPを参考に筆者作成

セメント産業では国内で4,147万トン(2019年時点)ものCO2を排出しており、コンクリートの主な原料となるセメントは、石灰石や粘土を含んだ岩石を燃やして得られる「クリンカ」が主成分だ。このクリンカ製造時に石灰石を大量に使用するため、石灰石中の炭酸カルシウムの脱炭酸によるCO2排出が避けられない。CO2排出量の3分の2は、クリンカ焼成時の化学反応で発生する。残りの3分の1は、クリンカ製造に必要な窯の過熱に使う化石燃料による(図1)。

図1:セメント製造プロセス


出所:資源エネルギー庁

このCO2をリサイクルすることができれば、日本の排出量削減に大きなインパクトをあたえることが見込まれているため、CO2を資源としてとらえ活用していく「カーボンリサイクル」技術における研究開発が進められている。

それでは今回発表された「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」について詳しくみていこう。

CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクトとは?

革新的カーボンネガティブコンクリートの材料・施工技術および品質評価技術の開発を、鹿島とデンカ、竹中工務店の3社が実施する。3社はコンクリート製造時に発生するCO2の削減と固定量の最大化、低コスト化に向けた技術開発を進める。セメントの半分以上を、デンカが開発した副産物を原料とする炭酸化混和材と、高炉スラグなどの産業副産物に置き換える。それに加え、製造過程においてコンクリートに CO2を大量に固定することで、コンクリート製造時のCO2排出量を実質ゼロ以下、つまり大気中の CO2を減少できる。これは世界初のコンクリートだという。

今回の技術開発で取り組むコンクリートへのCO2固定化により、脱炭素から「活炭素」へのステージ移行をさらに推し進める(図2)。

図2:事業イメージ


出所:鹿島建設株式会社、デンカ株式会社、株式会社竹中工務店

また、幹事会社として安藤・間が全体の取りまとめをし、加盟全100社を動員してCARBON POOL(CP)コンクリートの研究開発の為のコンソーシアムを形成。セメント焼成⼯程などで発⽣するCO2を、コンクリート由来の産業廃棄物に固定化させるという地域内循環を構築し、さらに新たな技術を⽤いて引き渡しまでにCO2固定量を最⼤化したCPコンクリートを開発する。CPコンクリートの施⼯性や耐久性を確保し、舗装のみならず、建築・⼟⽊構造物にも実装する(図3)。

図3:事業イメージ


出所:株式会社 安藤・間

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東條 英里
東條 英里

2021年8月よりEnergyShift編集部にジョイン。趣味はラジオを聴くこと、美食巡り。早起きは得意な方で朝の運動が日課。エネルギー業界について日々勉強中。

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