第1弾として物流・貨物企業向けの「カーゴ・プログラム」を開始。日本通運、近鉄エクスプレス、郵船ロジスティクスの3社が共同で貨物便にSAFを使用した。冒頭で述べた「コーポーレート・プログラム」はその第2弾として実施され、対象を広げたというわけだ。
図2:プログラムのしくみ
出所:ANA
世界的な脱炭素の潮流の中、企業にも脱炭素が求められている。同プログラムは、出張でANAが運航する便を利用した法人に対して、SAFによって間接的にCO2削減に貢献したと示す証書を付与するものだ。これにより、企業はTCFD、CDP等が求める開示情報の算出に使用(統合報告書等への反映)が可能となる。
SAFによってANAが削減したCO2の量の合計から、利用した範囲内で各法人が希望する削減量を割り当てるもので、その量に合わせて料金が発生する。今年4月より運用開始を予定している。
ANA広報室によると、国内大手の製薬会社や商社をはじめ、国内外の10社以上から問い合わせを受けているという(2022年1月時点)。
SAFの生産に関して、日本は大きく出遅れている。まだ研究・実証段階のものが多く、具体的な生産計画は見えてこない。
ANAが日本航空(JAL)と共同でまとめたレポートによると、2050年までに航空機から排出するCO2実質ゼロを実現するうえで、国内で必要なSAFの量は、最大約2,300万KLと試算している。
一方、世界のSAF供給量は航空燃料全体の1%以下で、コストも既存の化石燃料と比較して平均2~4倍と高いことが課題だ。加えて、現在SAFを商用生産できるのは欧米企業のみで、航空機を飛ばすための十分なSAFが確保できない危機感がある。世界的な争奪戦が激しくなるなか、ANAとJALはSAFの「国産化」を目指す。
ANAは、大手商社と組んで独自のサプライチェーンを構築し、去年からフィンランドの会社からSAFの輸入を開始した。JALでもアメリカの企業に出資して、アメリカの空港でSAFを給油できる体制作りを進める。
ANAが始めたプログラムを通じ、協力企業を増やすことでSAF搭載のコストを輸送網全体で負担できる仕組みを目指すことが狙いだが、急増する需要に供給が全く追いついていないのが現状だ。まずはSAFの確保のための取り組みが急がれる。
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