アンモニアの国際価格が昨年同時期の2倍で推移している。世界各地の生産トラブルで供給が絞られ相場水準が押し上げられたほか、原料の天然ガスの高値も重なったことが背景にある。
世界全体でのアンモニアの用途は、その約8割が肥料として消費されているが、残りの2割は工業用で、メラミン樹脂や合成繊維のナイロンなどの原料となる。アンモニアは燃やしてもCO2を排出しないことから、近年では発電の燃料として使われている石炭や天然ガスと置き換えることで、大幅なCO2の排出削減が期待されている。
生産国は上位から中国、ロシア、米国、インドが並び、この4ヶ国で世界生産の半分以上を占めており、これらの国はアンモニア生産に欠かせない化石燃料を資源として持つ。
中国では主に石炭からアンモニアを精製して尿素を作り、それを水に溶かすことで尿素水が生産される。ここ最近、中国では石炭不足が深刻化し、アンモニア生産が減少。今年10月中旬、共産党政権は国内需要を優先するために尿素水などの輸出を制限した。さらにインドや日本などにアンモニアを輸出するサウジアラビア、イラン、インドネシアのプラントでも年初から相次いで生産トラブルが発生し、アジア市場でアンモニアの供給が細った。
こうした背景により、国際指標のひとつであるアジア極東市場のスポット(随時取引)価格は11月24日時点で1トン600ドル台。300ドル弱だった2020年11月の2倍以上となっている。日経新聞の報道によると、市場では「8年ぶりの高値水準」との指摘が多いという。
海外高や円安のあおりで、日本への輸入価格も上昇している。財務省の貿易統計によると、無水アンモニアの2021年9月の輸入平均単価は1キログラム73円で前年同月の約2.4倍だ。
これにより、日本でもアンモニアの値上げ表明が続いている。三井化学は11月1日、アンモニア系製品を11月22日納期分から値上げすると発表した。今年5月以来の値上げとなったが、その後も原燃料価格の上昇などによるコスト増加が同社の事業運営に大きな負担となっているという。
現在、足元のスポット価格の急騰は一服しているが、今後も相場水準の上昇により、日本でも幅広い素材の転嫁値上げにつながるとみられる。
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