EV車デビューは中古車がおトク? | EnergyShift

脱炭素を面白く

EnergyShift(エナジーシフト)

EV車デビューは中古車がおトク?

EV車デビューは中古車がおトク?

2021/08/17

世界中がカーボンニュートラルに向けて動き出した中、毎年のように新しい電気自動車が登場している。昨年はホンダとプジョー、DS、ポルシェから、今年に入ってからもレクサス、マツダ、メルセデス・ベンツ、アウディまで……。もちろん今年度後半もまだまだ新型の電気自動車がデビューする予定だ。その一方で、10年以上前から電気自動車が販売されている日本では、電気自動車の中古車も台数が増えつつある。新車より安い中古の電気自動車は確かに魅力的だが、果たして購入しても損はしないのか? 現状の電気自動車の中古車事情をのぞいてみよう。

連載/脱炭素で車社会はどう変わる?

1年落ちの中古EVなら
新車のガソリン車並みの価格に

世界で初めて電気自動車の量産化に成功したのは三菱自動車だ。同社の電気自動車「i-MiEV」は2009年にまず法人向けから、2010年からは個人向けにも販売された。日産も2010年からリーフの発売を開始。同車は2017年に現行型へとフルモデルチェンジを果たした。

残念ながらi-MiEVはさほど台数が伸びず、2021年3月末で生産終了したが、日産リーフは2020年3月末時点で世界累計約52万台、日本で約14万台が販売されている。またテスラは2010年から、BMWは2014年からそれぞれ量産型の電気自動車を日本でも販売している。

このように電気自動車は増えてはいるが、量産化によるコスト低減効果はまだ十分ではない。つまり価格が高いのだ。分かりやすい例として、ガソリン車と電気自動車をラインナップしているプジョー208シリーズで見てみよう。

1.2Lガソリンエンジンを搭載する208アリュールの車両本体価格は267万1000円。一方で電気自動車のe-208アリュールは396万1000円。同じグレード(つまり同じ装備)にもかかわらず、e-208アリュールのほうが約130万円高い。

プジョーe-208。ガソリン車の208と見た目での違いはほぼない

もちろん208シリーズは昨年登場したばかりの最新型であり、当然、従来比ではある程度のコスト低減が行われているのだが、それでもこれだけ差がある。

一方で、電気自動車は中古車になると一見かなりお手頃に見える。例えば、2021年8月13日現在、車両本体価格233万円の2020年式(現行型)・走行距離0.4万kmのリーフX Vセレクションを見つけた。新車時の車両本体価格は406万3400円だから、わずか1年落ちで約170万円も安く買える。

日産リーフX Vセレクション。先進運転支援技術「プロパイロット」も備える

中古EV車の価格低下の要因は
バッテリーの持ちへの不安から

これは電気自動車の新車購入時に利用できる補助金制度の影響と、中古車としての不人気さが理由と考えられる。

まず補助金制度を見てみよう。国は現在「CEV(クリーンエネルギービークル)補助金制度」を設けていて、令和3年度の補助金額は上記リーフのグレードの場合38万8000円となる。

さらに各自治体でも補助金制度があり、東京都の場合なら令和3年度で45万円が補助される。いずれの補助金制度も中古車は利用できないため、当然中古車は新車価格より国と自治体の補助額の合計(この場合なら83万8000円)以上安くないと中古車としての魅力がない。

次に中古の電気自動車に対する不安感による不人気要因だ。新車と違い中古車は人気が高いほど価格は高くなり、人気が低ければ安くなる。電気自動車の場合、バッテリーの劣化や、「自宅に充電設備がないから」「外で充電すると30分はかかるから」といった不便さからあまり人気がないのだ。

リチウム電池の寿命は7~8年
一定条件を満たせば中古はコワくない

ではバッテリーはそんなに劣化するのか?

そもそも劣化とは容量、つまり蓄えられる電気量が低下することだ。容量が低下すれば、1回の充電で走れる距離は当然短くなる。

現在の電気自動車の駆動用バッテリーはリチウムイオン電池が使われている。ちなみに従来のガソリン車がヘッドライトやエアコンなど主に補機類に使うバッテリーは、いわゆる鉛電池と呼ばれるものだ。リチウムイオン電池も鉛電池も、使用していけばいずれ劣化する。例えばロードサービスの出動理由で最も多いのは、バッテリー上がり(鉛電池)だ。使用状況によるが、一般的に2〜3年で交換が必要になる。

鉛電池と比べて、リチウムイオン電池はまだ寿命が長い。容量が70%を下回ると車の駆動用バッテリーとしては使えなくなると言われているが、その目安は従来なら5年、最近は8年と言われている。

日産リーフの場合「8年または走行距離16万kmのいずれか先に達するまで」バッテリーに保証がつく

それを裏付けるように新車購入時に8年を目安としたバッテリーの保証を付けているメーカーは多い。例えば日産リーフやプジョーe-208、ホンダeなどは「8年または走行距離16万kmのいずれか先に達するまで」保証している。その間に規定容量を下回った場合、修理や交換を無料で行ってくれる。それだけメーカーとしては自信(と責任)を持っているという証だろう。

バッテリーの寿命は、充電の仕方など日頃の使い方によっても変わる。なぜならリチウムイオン電池は「満充電」や「急速充電」で劣化しやすいからだ。また温度変化にも弱い。冬の寒いスキー場でスマートフォンのバッテリーが急に減った経験はないだろうか。これと同じ様な現象が電気自動車でも起こり得るのだ。

そこで日産ではなるべく寿命を延ばすために、ホームページ上でリーフの取り扱い方について下記のように注意している。

 

・頻繁に(週に一回以上)急速充電するときは、充電量を80%以下にする

・リチウムイオンバッテリーを充電するときは、なるべく、普通充電を使用し、急速充電の使用は最小限に抑える

・車両を外気温が49℃以上の場所に24時間以上放置しない

・車両を外気温がー25℃以下の場所に7日間以上放置しない

……etc.

 

さて、その上で「中古の電気自動車は買いか?」だが、正直多くの人に勧められる状況ではない。やはり電気自動車は、これまで見てきたように何かと制約が多いからだ。

しかし自宅に太陽光発電があり、普通充電器も整えられて、かつ「主に普段の買い物や家族の送り迎えに使い、たまに遠出を楽しむ人」で「たまの急速充電時に、30分待つのも厭わない人」なら一考の価値はある。従来のガソリン代に相当する燃料費が、ほとんどタダになるからだ。ちなみに普通充電器の設置は、壁に電線を這わせるなら数万円程度で工事できる。またガソリン車にはない、電気モーターならではの静かで力強い加速感など、「新しい乗りもの」感を手頃な価格で味わうことができる

そうした人であれば、安くなった1年落ちくらいの中古の電気自動車を買っても十分楽しめるだろう。また新車時のメーカー保証期限内の年式や走行距離の中古車であれば、たいてい残り分を引き継ぐことができるので安心だ。現行型リーフの1年落ちなら残りは7年ある。

一方で、手放す際の買取価格はあまり期待できないので、購入したら乗りつぶす覚悟も必要だ。まあ200万円前後の中古車を7年間乗ったら、ガソリン車でも手放す際にほとんど値段がつかないだろう。そういう損得勘定ができる人なら中古の電気自動車をオススメしたい。

 

*バックナンバーはこちら

籠島康弘
籠島康弘

(有)ぴえいる工場/代表取締役 リクルートの中古車情報誌『カーセンサー』編集部を経てフリーライターに。『カーセンサー』『カーセンサーEDGE』のほか『OCEANS』など一般紙・webでも執筆中。現在の愛車はアウディA4オールロードクワトロと、フィアット パンダを電気自動車に改造した「でんきパンダ」