トヨタ・日産の持たざる経営に転機は本当か? 分析で見えるトヨタの本当の強さとは。 | EnergyShift

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トヨタ・日産の持たざる経営に転機は本当か? 分析で見えるトヨタの本当の強さとは。

2021年09月17日

トヨタは「持たざる経営」に10年前から取り組んでいた!?

トヨタはそのジャストインタイム方式の徹底ぶりから、実は、過去に一度危機に瀕したことがある。

それが、東日本大震災のときだ。

このとき、トヨタは生産調整を迫られている。あまりにもタイトなジャストインタイム方式がゆえに、有事に、余裕が出なかった。

特に、彼らが教訓として得たのが、半導体だ。発注してから納品までのリードタイムが長い半導体は、いざというときに備えて十分な在庫を確保しておく必要があると、このときトヨタは認識した。この経験と長年にわたり社内に蓄積した半導体への知見と相まって、トヨタは生産が止まりかねない「有事」への抵抗力を身に着けたとされている。

ロイターが報じたところによれば、車載情報システムや高級オーディオを手掛けるハーマン・インターナショナルは、2020年11月ごろから製品に使う中央演算処理装置(CPU)やパワー半導体不足を感じるようになった、しかし、トヨタ向けに納める製品に必要な半導体については、4ヶ月分以上の在庫を調達済みだったと、ハーマンとトヨタの取引に詳しい関係者は話したという。

それはなぜか。トヨタとの間で結んでいる契約があったからだ。

そう、トヨタは東日本大震災の教訓から、もともとこの指示をメーカーに出していた。

その結果、何が起きていたか。

VWやゼネラルモーターズ(GM)、ホンダ、ステランティスなど、自動車各社は半導体の調達が間に合わず相次ぎ生産調整に追い込まれた。その中でトヨタはどうだったか。もちろん影響は出た。出たが、トヨタは会見で「半導体減産の影響は限定的」と述べている。

実際、トヨタは2021年3月期の販売計画を31万台積み増し、営業利益の見通しを54%引き上げている。

ジャストインタイム方式に注目しがちだが、こうしたBCP(事業継続計画)は、トヨタがかつて失敗したからこそ、構築できたものだ。

ただ、トヨタは在庫を持たない、サプライヤーが在庫を持つ、「これってどうなの?」という批判は当然ある。

これについてロイターによると、複数の関係者の証言として、トヨタは半導体在庫を積み増したサプライヤーに対し、毎年の原価低減活動で下がったコストの一部を還元している、という。

こうして見ると、トヨタに関しては、持たざる経営の転換は、何も今はじまったわけではなく、10年前ということになるだろう。

10年前からの取り組みを活かして、トヨタは業績を伸ばしている。そこで次は、トヨタがこの危機に打った逆転打、について解説したい。

前田雄大
前田雄大

YouTubeチャンネルはこちら→ https://www.youtube.com/channel/UCpRy1jSzRpfPuW3-50SxQIg 講演・出演依頼はこちら→ https://energy-shift.com/contact 2007年外務省入省。入省後、開発協力、原子力、官房業務等を経験した後、2017年から2019年までの間に気候変動を担当し、G20大阪サミットにおける気候変動部分の首脳宣言の起草、各国調整を担い、宣言の採択に大きく貢献。また、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略をはじめとする各種国家戦略の調整も担当。 こうした外交の現場を通じ、国際的な気候変動・エネルギーに関するダイナミズムを実感するとともに、日本がその潮流に置いていかれるのではないかとの危機感から、自らの手で日本のエネルギーシフトを実現すべく、afterFIT社へ入社。また、日本経済研究センターと日本経済新聞社が共同で立ち上げた中堅・若手世代による政策提言機関である富士山会合ヤング・フォーラムのフェローとしても現在活動中。 プライベートでは、アメリカ留学時代にはアメリカを深く知るべく米国50州すべてを踏破する行動派。座右の銘は「おもしろくこともなき世をおもしろく」。週末は群馬県の自宅(ルーフトップはもちろん太陽光)で有機栽培に勤しんでいる自然派でもある。学生時代は東京大学warriorsのディフェンスラインマンとして甲子園ボウル出場を目指して日々邁進。その時は夢叶わずも、いまは、afterFITから日本社会を下支えるべく邁進し、今度こそ渾身のタッチダウンを決めると意気込んでいる。

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