世界の脱炭素エネルギーは水素にシフトしている。しかも、水素をどう利用するかではなく、どうつくるかに各国はしのぎを削る。二酸化炭素を排出しない「グリーン水素」製造に、世界最大級の太陽電池メーカーであるLONGiも、水素市場に参入してきた。
中国の太陽電池メーカーであるLONGiは太陽光発電パネル製造で世界一のメーカーになる。総資産は1兆円(2020年6月)を超える。太陽光発電パネルの各部品からパネルとしての完成品の組立までをになう。2020年の太陽光発電パネルの出荷量は世界で初めて20GW超えを果たした。
そんなLONGiが次に狙うのは、水素市場だ。
今年3月31日に、中国でLONGi水素テクノロジー社が正式に登記された。LONGiの創設者Li Zhengue氏は同社のGMになる。中国業界紙Solar Zoomが伝えた。
また、それから1週間後、LONGiは中国の石油・ガス大手のSinopecと戦略的協力協定を締結したと発表。この協定には両社が「グリーン」水素開発に協力し、「win-winの関係を築く」と表現されている。
つまり、LONGiが目指しているのは、製造時に二酸化炭素を排出しない「グリーン水素」だ。
水素の製造方法はいくつかにわけられており、化石燃料からの改質でつくられ、製造時の二酸化炭素を排出するのがグレー水素。化石燃料からの製造時にでる二酸化炭素をCCS(二酸化炭素貯留)技術などで抑えるのがブルー水素。水の電気分解により、二酸化炭素を排出しないでつくるのはグリーン水素と呼ばれる。
LONGiの産業ディレクターであるYunfei Bai氏は、太陽光発電のコストが下がり、それが水の電気分解コストの削減をもたらすと述べた。「現在の世界の水素需要は年間約6,000万トンで、その生産には1,500GW以上の太陽光発電が必要になる。エネルギーの貯蔵先としてもバッテリーよりも優れている」とも述べている。
アメリカのエネルギー省によると世界の年間水素生産量は約7,000万トン。そのうち、水の電気分解によるいわゆるグリーン水素は2%にすぎないが、石油メジャーのBPが出している「Energy Outlook 2020」によると、2050年にはグリーン水素は47%以上になると予測されている。世界の水素はグリーン、もしくはブルー水素になると考えられる。
そのアメリカは、現在の年間生産量が約1,000万トン。昨年2020年の11月には「Hydrogen Program Plan」をエネルギー省が発表。グリーン水素の研究・開発に国を挙げて取り組む。
EUもグリーン水素戦略を策定。他に国としてはオーストラリア、サウジアラビアなどでも大規模なグリーン水素プロジェクトが立ち上がっている。
今回のLONGiのグリーン水素参入をみるまでもなく、世界はすでに「グリーン水素」に向かっている。現在のグリーン水素の課題はコストだが、2030年にはコスト競争力を持つという調査もある。あと10年もない。
水素を利用するだけではなく、水素製造に国を挙げた競走が始まっている。
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