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米エネルギー省「Hydrogen Program Plan」を発表。アメリカの水素エネルギー戦略とは

米エネルギー省「Hydrogen Program Plan」を発表。アメリカの水素エネルギー戦略とは

2020/12/03

米国エネルギー省(DOE:The U.S. Department of Energy)は2020年11月12日、水素研究の開発・実証計画である「Hydrogen Program Plan」を発表した。政府はエネルギー部門をはじめ、組織横断的に水素研究に取り組む。水素の生産や輸送、貯蔵や使用を強く後押しする目的だ。この計画は、これから数年にわたりアメリカの水素研究の戦略的方向性を示す柱となる。

アメリカの水素事情

米国の水素生産量は、年間約1,000万トン。生産量の約95%が天然ガスの集中改質によるものだ。水素の用途としては、主に石油の精製やアンモニア産業向けに生産されている。

エネルギー源としての水素には、多くの利点がある。アメリカ国内の資源を原料として生産でき、多用途に使えること。また、重量あたりのエネルギー密度が高く、ガソリンの約3倍だ。さらに、CO2排出量も非常に少ない。ギガワット単位のエネルギー貯蔵を可能にし、系統の安定化に貢献する。さらに、製鉄やセメント業など、国内産業界での汎用性も高い。

企業が主体となって立ち上げた燃料電池・水素エネルギー協会(FCHEA:The Fuel Cell and Hydrogen Energy Association)が、2019年に発行した「米国の水素経済へのロードマップ」では、低炭素型エネルギーミックスを実現するためには水素が欠かせないと主張している。

水素ビジネスが発展すれば、2050年までに年間7,500億ドルの経済効果と340万人の雇用が生まれると提言した。

業界横断的な水素ビジョン「H2@Scale」

DOEウェブサイト『H2@Scale』より

今回の「Hydrogen Program Plan」策定の背景には、DOEが中心となって推進してきた「H2@Scale」というフレームワークがある。

「H2@Scale」では、国立研究所や産業界から多岐にわたる20以上のプロジェクトメンバーが加わり、基礎研究から応用開発に至るさまざまな検討を行ってきた。この検討において、国立研究所は水素の潜在的な需要評価や資源評価、技術的・経済的可能性などについてのレポートを発表している。また、2016年ごろからアメリカ各地で燃料電池に関するセミナーも開催している。

DOEは、研究資金として2019年8月に約4,000万ドル、2020年7月に約6,400万ドルの資金を投入してきた。2020年の支援策では、電解槽製造の研究開発や圧縮水素貯蔵タンク用の炭素繊維開発や燃料電池研究といったテーマが支援対象となり、素材メーカー世界大手の3Mなどが名を連ねている。

水素利用の各プロセスに具体的な目標値

今回発表の、新しい「Hydrogen Program Plan」では、引き続きH2@Scaleビジョン達成のため、以下を主要な課題と位置づけた

  • コスト削減と製造や変換システムのパフォーマンス、及び耐久性向上
  • 水素と従来のエネルギーシステムとの統合と、輸出障壁への対処
  • 供給源の集約による大規模化
  • 水素による統合エネルギーシステムの開発と検証
  • 革新的で新しい価値提案

の5つだ。

これらを念頭に、水素の製造、輸送、貯蔵、変換、そして応用技術の5項目にわたって方向性が示されている。

目標値として例示されたのは、水素の製造コストと輸送コストをそれぞれ1kgあたり2ドルとすること、産業用途や発電源用途では1kgあたり1ドルを目指す。また、重負荷や長距離輸送に耐えられる放電時間が25,000時間以上の燃料電池コストは1kWあたり80ドルを目標とする。

応用技術として挙げられたのは、運輸分野や産業と化学プロセスにおける活用、分散型電源やバックアップ電源などの発電用途、ハイブリッドエネルギーシステムなどだ。ハイブリッドエネルギーシステムとして、発電所と送配電網の間に水素による貯蔵システムを設けるイメージが示されている。この貯蔵システムは、送配電網と双方向の電力のやりとりができることに加え、運輸分野や燃料電池へ直接水素を供給することもできる。

DOEウェブサイト『Hydrogen Program Plan』より

DOE長官のダン・ブルイエット氏は、「水素はアメリカのエネルギー資源を統合する燃料源だ。コスト低減と需要の増加を通して実用化を目指す」と述べている。

この発言にもあるように、水素の大きな特性は汎用性の高さだ。水素は、電力供給源として発電用途にも使用できるが、大規模な輸送や蓄電池などの最終用途にも使える。つまり、一次エネルギーとしても二次エネルギーとしても利用可能だ。

「Hydrogen Program Plan」では、この水素の汎用性がエネルギーシステムの重要な側面と位置づけられた。DOEは、アメリカ産業界や学術界、州などと連携しながら取組みを進めるとしている。

https://www.energy.gov/articles/energy-department-releases-its-hydrogen-program-plan

山下幸恵
山下幸恵

九州大学文学部卒。九州電力グループ会社にて大型変圧器・住宅電化機器の販売に従事。新電力ベンチャーにおいて、ディマンドリスポンスやエネルギーソリューションの提案を行う。自治体および大手商社と地域新電力の立ち上げを主管。福岡市にて、気候変動や地球温暖化、省エネについての市民向けセミナーを実施。2019年よりエネルギーライターとして活躍中。

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