コロナ危機からの回復に、グリーンリカバリーはどのように影響を及ぼすか 2つの試算より | EnergyShift編集部

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コロナ危機からの回復に、グリーンリカバリーはどのように影響を及ぼすか 2つの試算より

コロナ危機からの回復に、グリーンリカバリーはどのように影響を及ぼすか 2つの試算より

2020/07/29
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2020/07/29
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新型コロナのエネルギーへの影響を概観してみた

世界的な新型コロナウイルスの感染拡大で、エネルギー需要が落ち込んだが、電源別でいえば化石燃料が大きく落ち込む一方、再生可能エネルギーは順調に稼働している。では、経済が回復した場合、化石燃料の需要は伸びるのか。むしろ、この機会に再エネの開発を加速すべきではないか、というのが、IEA(国際エネルギー機関)の見解だ。コロナ危機を契機とした世界的なエネルギーシフトについて、日本再生可能エネルギー総合研究所の北村和也氏が解説する。

エネルギーの世界でもアフターコロナによる大きな変化

緊急事態宣言の全面解除で一安心したのか、東京を中心に患者数が増えている。しかし、政府は再度の強い自粛には腰が引けている。

経済の落ち込みがあまりにも大きく、新型コロナ対策だけにとらわれていては国の基盤が揺らぎかねないとの考えが背景にあるのは間違いない。

いずれにせよ、今、エネルギーの世界でもアフターコロナの動きが急となっている。
その主軸は再生エネである。

世界的な機関などがすでに新型コロナを原因としたエネルギーに関する予測をいくつか挙げていたが、それが、現実の数字などで後追いされ、実証されてきている。また、同時に制度も同じ再生エネ主導の道を歩むべく、整備が進められつつあるともいえる。

石炭火力発電所の大幅削減のショック

今年2020年7月初めに、経産省は国内の石炭火力発電所の大規模な休廃止の方針を発信した。140基ある石炭火力の発電施設のうち、いわゆる低効率なもの(およそ110数基)による発電量を9割程度カットするというものである。これを石炭発電全体の1割に当たる企業などが保有する自家発電にも適用するとしている。

一方で、高効率の石炭火力発電所は残し、さらに新設も認めるという。また、2030年時点でのいわゆるエネルギーミックスの石炭発電の数字、26%は変えるつもりはないないようである。それで本気の脱石炭と言えるのかとの批判が早くもあちらこちらから出ている。

とはいえ、言葉や字による宣言のインパクトは大きい。第5次エネルギー基本計画で明示された「再生エネ主力電源化」が実際の社会経済に与えた影響を思い起こせばよい。裏の意図はどうあっても、脱石炭火力は政府が支援する“高効率施設”をも巻き込んで確実に進むことになる。後戻りはできない。

再生エネに寄せる送電線の使用ルール

再生エネ電力拡大に向け、経産省は太陽光や風力などの再生エネの事業者が送電網を優先的に利用できる仕組みの検討を始めた。

これまでは、いわば早いもの順で送電線を押さえることができ、火力発電など既存の発電システムが有利に送電線を使うことができていた。これを再生エネ電力を優先的に送るシステムに変えることで、再生エネ発電の事業性を上げる一方で、例えば、低効率の石炭火力発電所からの脱却を後押しする構図を経産省は考えているのであろう。これが進めば、欧州では基本である再生エネの優先接続が初めて日本でも実現する可能性が出てくる。

この2つの経産省の施策は、ある種、コロナ前からの既定路線のひとつではあった。しかし、新型コロナがもたらしたエネルギー全体への大きなインパクトがこの施策の重要性を際立たせることになった。

新型コロナが押し上げた2020年前半ドイツの再生エネ電力

前回までのコラムで、世界的なエネルギーの需要減とその中でも拡大を続ける再生エネの予測などを、IEAやドイツの研究機関などのデータをもとに説明してきた。

6月も終わり2020年もちょうど半分が過ぎた。まさしく新型コロナに翻弄された劇的な年であったが、その中で再生エネに関するはっきりした数字が実績として出てきた。次に示すドイツの今年前半の発電状況のデータはその一つである。

ドイツの著名な研究機関フラウンホーファー研究所(ISE)のエネルギーチャートによると、ドイツでは今年1月から6月いっぱいまで6ヶ月間の全発電量のうち、再生エネ電力が全体の55.8%と半分を大きく超えた。中でも風力発電は、1月から2月に風況が良かったことも後押しして、全体のほぼ3割の30.6%となった。

すべての電源の中でぶっちぎりのトップである。

ところが、化石燃料は、例えば、石炭発電が良質の石炭と褐炭発電を合わせても19.7%で2割にも届いていない。また、太陽光発電はおよそ11.4%で天然ガス発電に並んだ。

これは新型コロナで社会経済活動が停滞して全体の需要が大きく減り、発電量自体が減少したことの影響も大きい。相対的に再生エネの割合が増えたというのが正しい見方である。

資料=FISE Stromerzeugung in Deutschland im ersten Halbjahr 2020

コロナショックは、再生エネでリカバリーを

4月末に、大幅なエネルギー需要の減少、世界でマイナス6%の経済成長率という景気の後退などを予測したIEAが、今度は、世界経済の再構築について、「再生エネを中心とした投資で行うべき」との提言を行った。6月中旬に行われた記者会見で示した「Sustainable Recovery:持続的な回復」というリポートが、それである。内容は、最近ちらほら聞かれるグリーンリカバリーと同じと考えてよい。

その心は、次にある。今回のコロナショックでは、エネルギー需要の減少に伴って、CO2の排出量を前年比8%マイナスとIEAは見込んでいる。

もちろんCO2の排出量が減るのはよいことであるが、社会経済活動の停滞による一時的なものである。実際に、2008年の金融危機では、その後の経済回復でCO2排出量が急激に増えた。IEAとしては、この苦い経験を繰り返さないために、再生エネを中心とした投資が肝心だと強く訴えた。せっかく減ったCO2が、化石燃料の使用で再び増加するのでは元も子もないという訳である。ここが、IEAの考えるアフターコロナの対策の肝である。

温暖化防止に寄与する年間100兆円規模の投資

リポートでは、今後3年間、毎年およそ1兆USドル、日本円にして100兆円を大きく超える投資を提言している。IEAが「持続的な回復計画」と名付けたこのプランでは、太陽光や風力発電の拡大、EVの積極的な導入を進めるなどの具体例を掲げている。この巨大投資で、世界の経済成長を年率1.1%に戻すことができ、およそ900万人の雇用を確保したり、増やしたりすることが可能になるとまとめている。また、最終的にエネルギー由来のCO2を年間45億トン減らし、空気汚染を5%削減できるメリットが生まれるとも訴えている。

IEA Sustainable Recovery World Energy Outlook Special Report 18 June 2020 より

ここで重要なのは、再生エネ拡大を世界経済の立て直しのツールだけにとどめていないことである。新型コロナで明らかになった世界規模でのリスクの存在を、温暖化による気候危機にまで広げて、再生エネを同時にその対策の任に当たらせる策を提示している点である。

この原稿を書いているこの数日間、九州地方を始めとする各地が豪雨に襲われ、多くの被害が出ている。総降雨量の新記録が毎日更新されるような出来事に、気象などの専門家は、原因の一つに温暖化を上げざるを得ないとの論評を繰り返している。
いまや、再生エネというエネルギーソリューションは、経済の解決策にとどまらず、地球的な危機という巨大で複雑な問題を解くカギになってきている。

リポートに戻ろう。

IEAは、この「持続的な回復計画」は世界の政策決定者に対しての提言であるとしている。そして、世界経済とエネルギー、そして気候変動への同時解決が短期間内で実現できることを示すものであるとも語っている。

重要なのは、何が起きるかという予想を示すだけでなく、データに基づいたうえで実際に何ができるかという現実的な施策を積極的に示したことにある。

IEAのビロル事務局長は、報告書の発表当日の記者会見で次のように締めくくった。「この計画は、各国政府が何をしなければならないかではなく、何ができるかを描いたものである」。アフターコロナに対して、再生エネが持つポテンシャルを、国際エネルギー機関IEAが明確に代弁したともいえる。

動き出した再生エネビジネス

かくして、新型コロナがもたらした厄災は、エネルギーでは再生エネという解決策を浮かび上がらせた。そして、未来への事業のカギとして、新たな投資先を映し出す鏡の役割も見せてきている。再生エネビジネスへの躍動が一気に始まる気配が見える。コロナ自粛の後の蠢動と感じるのは私だけだろうか。

来月のコラムでは、新型コロナのエネルギーへの影響を概観してみた④として、民間サイドの「始動」の一端を示したいと考える。再生エネに向けて重い腰をやっと上げた経団連の動き、PPAや自己託送など新しいシステムによる再生エネ利活用の拡大、交通革命を含めたエネルギーをきっかけとした変革などである。

新型コロナは自粛という内向きの力だけを引き出したのではなく、アフターコロナという新たな時代の躍動の出発点を提示する役割を果たすかもしれない。

参照

連載:新型コロナのエネルギーへの影響を概観してみた

北村 和也
北村 和也

日本再生可能エネルギー総合研究所 代表、株式会社日本再生エネリンク 代表取締役。 1979年、民間放送テレビキー局勤務。ニュース、報道でエネルギー、環境関連番組など多数制作。番組「環境パノラマ図鑑」で科学技術映像祭科学技術長官賞など受賞。1999年にドイツへ留学。環境工学を学ぶ。2001年建設会社入社。環境・再生可能エネルギー事業、海外事業、PFI事業などを行う。2009年、 再生エネ技術保有ベンチャー会社にて木質バイオマスエネルギー事業に携わる。 2011年より日本再生可能エネルギー総合研究所代表。2013年より株式会社日本再生エネリンク代表取締役。2019年4月より地域活性エネルギーリンク協議会、代表理事。 現在の主な活動は、再生エネの普及のための情報の収集と発信(特にドイツを中心とした欧州情報)。再生エネ、地域の活性化の講演、執筆、エネルギー関係のテレビ番組の構成、制作。再生エネ関係の民間企業へのコンサルティング、自治体のアドバイザー。地域エネルギー会社(地域新電力、自治体新電力含む)の立ち上げ、事業支援。

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