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本当は高くない再エネ、これからのビジネスチャンスはどこにあるのか 国際大学 橘川武郎教授 インタビュー(中編)

本当は高くない再エネ、これからのビジネスチャンスはどこにあるのか 国際大学 橘川武郎教授 インタビュー(中編)

2021/06/02

前編では、2030年および2050年のエネルギーミックスはどうあるべきかという点について、経済産業省の総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会の委員である、国際大学教授の橘川武郎氏におうかがいした。中編では、再生可能エネルギーやカーボンゼロをめぐるビジネスチャンスを中心におうかがいしていく。(全3回)

(前編はこちら)

シリーズ:エネルギー基本計画を考える

「再エネが高い」と思うのは日本だけ

― ところで、5月13日の基本政策分科会では、RITE(地球環境産業技術研究機構)によるシナリオが示されました。再エネ大量導入で価格が2倍になる、という報道がなされています。

橘川武郎氏それはメディアのミスリードです。世界で再エネが高いと思っているのは日本だけです。示されたシナリオでは何をやっても電力のコストが2倍に上昇しています。唯一、再エネ100%の場合のみ、5倍になっているというだけです。また、シナリオには明記されていませんが、原子力を50%にしてもコストが2倍近くになることが、審議会で言及されました。

RITEがシナリオを作るにあたって2050年に原子力10%という仮定を置いていることにはリアリティがあります。政府の本音としては10%しかいかないということを表明したようなものです。

― エネルギー基本計画は目標数値を設定するだけではなく、エネルギー政策の方向性を示します。次の基本計画に盛り込まれるべき、重点政策はどのようなものであるべきでしょうか。

橘川氏:政府の参考値は火力発電のウエイトが高くなっていることは、意外に思うかもしれません。しかし、カーボンニュートラルを実現しようとすると、ボトルネックがあります。それは、太陽光発電や風力発電など変動する再エネが増えると、調整力を必要とすることです。

その対策の1つである蓄電池はまだコストが高い上、サプライチェーンは中国に依存しており、不確実性が高い。そこで火力発電の調整力を利用することになるのですが、そうするとCO2が排出されます。

その点、JERAが火力発電をカーボンフリーにしていくと表明したことが重要です。これはゲームチェンジャーになります。さらに、唯一のメリットがカーボンフリーだった原子力の必要性もなくなります。

―4割を担うカーボンフリーの火力発電というのが、重点政策の1つになっていくということですね。

橘川氏:それから、RITEのシナリオが示した電力料金2倍化を回避するために、電力のコスト上昇を抑制することも必要です。そのためには、既存インフラを使い倒すのが勝負所です。

カーボンニュートラルへ向けての日本独自の技術といっていいアンモニア燃料とメタネーションがそれにあてはまります。石炭火力発電の設備を使って燃料をアンモニアに転換させていくことができますし、メタネーションにより水素からメタンを製造すれば既存のガスパイプラインが利用できます。

日本がこうした対策をとれば、アジア諸国もこれに従うでしょう。

アンモニアは肥料産業で使われているため、グローバルなインフラがありますし、電力会社は火力発電の脱硝装置でアンモニアを扱っています。

とはいえ、アンモニアは毒性があるため、民生用には適していません。アンモニアを選択する電力業以外の産業分野、製鉄などでは水素が使われるでしょう。アンモニアと水素は技術的には近いですが、ビジネス的には別物になっていくと思います。

― とはいえ、アンモニアそのものの供給も課題だと思います。

橘川氏:アンモニアで火力を運転するためには、ものすごく大量のアンモニアが必要です。2030年に300万トン、2050年には3,000万トンが必要だといいます。

とはいえ、グリーン成長戦略においては、優先順位としては、第一に洋上風力、第二にアンモニア、第三に水素、第四が原子力となっており、原子力よりもアンモニアと水素が優先されています。

日本はアンモニアについて、全世界の需要のうちおよそ半分の1億トンにコミットするとしています。これは簡単なことではないと思います。


国際大学国際経営学研究科 橘川武郎教授(2020年撮影)

太陽光発電は屋根上と卒FITにビジネスチャンス

- コストのお話しが出ましたが、日本における再エネのコストも政策課題だと思います。

橘川氏:太陽光のFIT価格は、最初は40〜42円/kWhだったものが、現在は12円/kWhまで引き下げられています。政府が目標としている7円/kWhも不可能ではないでしょう。

太陽光発電の普及にはポイントが2つあります。

1つは屋根上利用です。住宅用もありますが、工場など事業所の屋根上への設置にもチャンスがあります。

工場は安普請なので屋根に太陽光発電を設置できないという意見もありますが、その点についてはパネルの軽量化が大事になってきます。そのときは、軽量化しやすい非シリコン系太陽光発電パネルの日本メーカーであるソーラーフロンティアにもチャンスがあります。

米国にはファーストソーラーという会社があり、同じ非シリコン系の太陽光発電パネルを製造していますが、この会社のビジネスモデルはサブスクリプションモデルです。設置するだけではなく、アフターサービスまできちんと対応しています。こうした事業にモデルチェンジしていく必要があるでしょう。

もう1つのポイントは、卒FITとなる太陽光発電です。2032年から事業用太陽光発電のFITの期間が終了しはじめます。2032年問題という人もいますが、その頃には太陽光発電は原子力より安くなっているでしょう。そのため、これまで事業基盤が不安定な会社が所有していたものを安定的な会社が買取、リニューアルして運用する可能性があります。

この2つがチャンスだと考えています。

とはいえ、この2つを現実化するためには、低圧の託送料金を引き下げることが大事になってきます。現在、10円/kWh程度という託送料金は国際基準の倍です。しかしこれを下げることができれば、例えばオフグリッドのようなシステムを構築して、屋根上の余剰電力を利用したり、電気自動車の充電を拡大したりすることができますし、太陽光発電のチャンスが拡大します。

再エネというと、新電力が担うというイメージかもしれません。しかし私は、大阪ガスのような会社がメインプレーヤーになると考えています。大阪ガスはカーボンニュートラルを目指して2030年までに5GWの再エネを開発していくとしています。洋上風力発電にも参画します。このようにインフラを担う会社が本格的に進出するというのが、私のイメージです。こうした企業が進出することで、国民負担なしに拡大できるのではないでしょうか。もちろん新電力にもがんばって欲しいと思います。

2021年1月の電力市場価格高騰ではっきりしたのは、経営破綻したFパワーのように電源をもっていない事業者にとってリスクが大きい一方、イーレックスのように自社電源を保有している事業者はむしろ利益を出しているということです。

電力会社には自前の電源が必要です。その点でも、不安定な会社が保有してきた太陽光発電を安定的な事業者が買い取ってリニューアルし、自前の電源として運用することが重要だと思います。

また、リニューアルにあたっては、少し西向きにすることが大事です。電力需要に対応するもので、電力不足が多くの場合夕方に生じることを意識して、米国のカリフォルニア州やテキサス州などでも太陽光発電は少し西向きになってきています。

(明日公開の後編へ続く 前編はこちら

(Interview &Text:本橋恵一、小森岳史、Photo:岩田勇介)

橘川武郎
橘川武郎

国際大学国際経営学研究科教授 1951年生まれ。和歌山県出身。1975年東京大学経済学部卒業。1983年東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。同年青山学院大学経営学部専任講師。1987年同大学助教授、その間ハーバード大学ビジネススクール 客員研究員等を務める。1993年東京大学社会科学研究所助教授。1996年同大学教授。経済学博士(東京大学)。2007年一橋大学大学院商学研究科教授。2015年東京理科大学大学院イノベーション研究科教授。2020年より現職。東京大学・一橋大学名誉教授。総合資源エネルギー調査会委員。前経営史学会会長(在任期間2013~16年)。

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