国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は11月4日、各国が国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で公表した最新の温暖化ガス排出削減目標を分析した結果、目標が完全に達成されれば、産業革命からの気温上昇を今世紀末時点で1.8度に抑えられるとの見解を公表した。
分析はIEAが独自に定めている政府の発表済み公約「APSシナリオ」を11月3日現在で更新・集計したものによる。
気候対策の国際枠組み「パリ協定」は、産業革命前と比べた世界の気温上昇を2度未満、できれば1.5度以内に抑える目標を掲げている。
IEAはCOP26開幕前の10月、各国がこれまで示した目標では今世紀末までに2.7度の気温上昇をもたらす恐れがあると公表していたが、各国が新たな対策を打ち出したことで、気温の上昇幅を抑えられる可能性があるという。
COP26ではインドのモディ首相が、2070年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにすると表明。インドが実質ゼロの期限を明言するのは初めてだ。さらにエネルギー需要の70%を石炭に依存するポーランドも2049年までの脱石炭を誓った。
COP開催前のIEAレポートでのAPSシナリオ集計では2.1度上昇となっていたので、それよりも低くなった。インドのネットゼロ公表などが反映されたと考えられる。
また、メタン排出量を2020年の水準から2030年までに少なくとも30%削減することを目指す「グローバル・メタン・プレッジ」に世界105ヶ国・地域が署名した。欧州連合(EU)と米国が主導する取り組みで、英国や日本、カナダも署名している。
パリ協定の目標達成に一歩近づいた格好であるが、多くの国がめざす気温上昇幅1.5度にはなお届かない。ビロル事務局長は「大きな前進だが、さらに多くの取り組みが必要だ」と述べた。
IEAは1.5度にさらに近づけるには「2030年までに大幅な削減を進める必要がある」と各国に呼びかけ、2050年までにネットゼロを達成するために、今後新たな化石燃料プロジェクトを承認しないとの見方を示した。
主要先進国では2030年代、世界全体では2040年代を目標にCO2排出削減措置のない石炭火力発電からの移行を実現するため、今後10年間に技術と政策を早急に拡大させる。石炭火力の依存度が高い日本への厳しい目が注がれている。
BIG NEWS 🚨 #COP26 climate pledges mean Glasgow is getting closer to Paris!
— Fatih Birol (@fbirol) November 4, 2021
New @IEA analysis shows that fully achieving all net zero pledges to date & the Global Methane Pledge by those who signed it would limit global warming to 1.8 C
A big step forward, but much more needed!
IEA事務局長によるツイート
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