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JEPX市場価格高騰で浮き彫りになった、新電力の2021年問題とは:電力自由化の方向を修正するチャンスになれるか

JEPX市場価格高騰で浮き彫りになった、新電力の2021年問題とは:電力自由化の方向を修正するチャンスになれるか

EnergyShift編集部
2021/01/12

シリーズ 2021年電力ひっ迫

2020年末から、日本卸電力取引所(JEPX)の価格が高騰している。システムプライスは200円/kWhを超える時間帯もある。撤退する新電力もあるということだ。しかし、この異常な事態、ある面では、2016年4月の電力小売り全面自由化以降、大手電力会社も新規参入者も、何もしてこなかったツケではないだろうか。

必要なのは電気を売らない電力会社

およそ10年前、ある大手都市ガス会社の方が、将来像として「ガスを売らないガス屋になる」ということを話していた。ビジネスの中心はソリューションになっていくということだ。

ガス会社はビジネスはソリューションだということを経験している。給湯器がエコジョーズ(線熱回収型給湯器)に更新されることで、15%もガスの消費量が減る。実際に、家庭用のガス消費量は減少してきた。それでも、エコジョーズに更新することが、消費者のメリットになってきた。ガス会社と消費者の間のエンゲージメントができていれば、ガスの販売量が減少しても、別のチャンスがある、そう考えてもおかしくない。

何より、消費者が欲しいのが「ガス」ではなく、「快適な部屋」であり、「温かいお風呂」であり、「おいしい料理」なのだ。電気も同様に考えるべきだった。電力小売り全面自由化は、「電気を売らない電気屋」になるチャンスだった。しかし、そのチャンスを逃してしまった。

5年間、ソリューションを提供する電力会社になることができず、無策で過ごしてしまった。起こったことは、安値合戦と多少のバンドル化(セット販売)だけだった

省エネを売ることは、欧米では当たり前

この5年間、どの電力会社も、「どれだけたくさん電気を売るか」しか考えてこなかったといっていい。もちろん、新規参入の電力会社が経営を安定させるために、少しでも売り上げを伸ばそうと考えることは、理解できる。しかし、それは長期的には消費者のためにならない。

ある生協系の電力会社の人ですら「うまく節電してもらって、基本料金を下げたら、組合員にメリットがあるのではないですか?」という質問に、「それでは経営が成り立たない」という回答だった。生協であれば、LED電球を販売してもいいし、断熱リフォームの提案だって可能だったにもかかわらず、である。

しかし、省エネなどのソリューションを電力会社が提案することは、欧米では当たり前のこととなっている。

米国の場合、そもそも電力会社に対し、省エネの情報を提供することが義務付けられている。Duke Energyのように、LED電球を無償で提供する、というプログラムもある。さらに、毎月定額というメニューもある。前年の使用実績をもとに、11ヶ月で均等割りし、12ヶ月目に精算する。ユーザーが省エネをしたら、12ヶ月目には省エネ分のお金が返ってくる。こうしたメニューの背景は、行政が省エネに取り組む電力会社を支援しているということもある。

英国の場合、消費者に対して「電気の使用状況を見える化する」ことが義務となっている。スマートメーターの情報をスマホで見ることができることは最低限のことだ。英国の電気料金では、時間帯別料金やダイナミックプライシングはごく普通のこととなっているが、価格の情報がリアルタイムにわかれば、省エネに対するインセンティブともなる。プリペイドの料金メニューもある。

日本の電力会社は、少しでもこうしたことを考えたことがあるだろうか。

新電力の2021年問題

もう1つ、指摘しておきたいのは、新電力の経営を左右する2021年問題である。この問題は2つある。

まず、2021年にはそもそも供給力がタイトになることがわかっていたのではないか、ということだ。

2017年から2018年にかけての冬、そして2018年の夏は、電力価格が高騰した時期があった。このときも、エリアによっては、ピークで100円/kWh前後の価格となっていた。その結果、多くの新電力の経営に大きなダメージを与えた。その後、2020年夏の後半までは、逆に価格が下がり、新電力は大きな利益を得てきたはずだ。

しかし、2021年には、再び価格が上昇する可能性があった。それが、2021年問題である。

電力広域的運営推進機関(OCCTO)が作成した供給計画では、もともと2019年度版では2020年から2022年頃まで、供給がタイトになっていた。

これは、主に旧一般電気事業者(以下、旧一電)が老朽化した石油火力発電所などの廃止を進めようとしたからだ。しかし、OCCTOは旧一電に廃止を少し待ってもらうように要請し、2020年度の供給計画ではこのタイトさは改善されている。

ただ、旧一電としても、採算がとれない設備をずっと維持するわけにはいかない。そのための「容量市場」だったと言ってもいいだろう(とはいえ、筆者は容量市場ではなく戦略的予備力が適していると思っているが)。その上でなお、需給がタイトになる可能性があったことは、新電力はあらかじめ認識すべきではなかったか。

もう一つの新電力の2021年問題というのは、FITの小売電気事業者が負担する電力価格だ。

FITの買取価格は固定されていたが、この電気を小売電気事業者が買い取る旧FIT法では、火力発電相当の価格となっていた。これが改正FIT法では、JEPXの価格となった。

移行措置として、すでに小売電気事業者と売買契約したFIT電源については、火力発電相当の価格で5年間据え置かれたが、この据置期間が終了すれば、安価なFIT電源ではなくなる。これも、新電力の経営にダメージを与える要素だ。

いずれにせよ、新電力は電力調達にあたってのリスクはある程度覚悟すべきだった。特に2020年前半、JEPXの電力価格が低迷した時期に、後半に向けての蓄えが新電力にはできていただろうか。

淘汰されてしかるべき新電力

日本では小売電気事業者はおよそ700社ある。しかし、この機会に淘汰されてもいいのではないだろうか。

そもそも、参入のきっかけは(最初は)安価なFIT電源を開発してきた事業者が、次のビジネスチャンスと考えたことや、比較的安かったJEPXの電力価格によって旧一電よりも安く電気を販売できた、ということだろう。しかし、前述のように、そこに消費者・需要家の視点はない

あらためて「電気を売らない電力会社」であることが、求められているといえるだろう。

その上で、省エネも、単純にkWhを減らせばいいという時代ではなくなっている。いかに、再生可能エネルギーをたくさん導入できるようにするのか、このことが、需要側にも求められているということだ。

難しいことばかりではない。ガス会社の方々に話すと、ちょっとうける話ではあるが、炊飯用土鍋を販売する、ということもその1つだ。一般的に、JEPXの電力価格は夕方が高い。そうであれば、消費者には、夕方の炊飯をガスによる土鍋炊飯にしてもらえばいい。高い電気を供給しなくてすむし、ガスの消費も増える。何より、おいしいごはんが炊ける。

今は電力会社にとって苦しい時期だ。特にLNGの供給が不足している今回の事態は、予想できなかったかもしれない。

とはいえ、政府に「節電要請」を求めることは間違っている。たとえ価格が高騰しても、まだ市場は機能している。だとしたら、それぞれの事業者が、需要家にいかに丁寧に、そして具体的に節電要請をしていくか、ということではないだろうか。

今後は再生可能エネルギー電源がますます増えていく。2022年以降、供給は安定していくのではないだろうか。そうしたことを背景に、お客様に適切なソリューションを提供できる会社が、将来を担う電力会社として生き残っていけばいいのではないだろうか。

(Text:本橋恵一)


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