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LNG不足は本当に日本の電気・ガス料金に大打撃を与えるのか

電気料金・ガス料金の値上がりはいつまで続くのか

結論から先に言うと、もはや安価なLNGはないと考えていいでしょう。季節的な変動はありますが、2030年までの中期的なLNGの需給はタイトなものになる可能性が高くなっています。

なぜタイトになるのでしょうか。短期的にはLNGの需要は伸びていきます。中国の需要が急増している他、インドなどでも需要が増加しています。また、欧州でも脱石炭のための電源として天然ガスの需要は伸びています。その一方で、新たなガス田の開発は今後、停滞が予想されます。というのも、IEA(国際エネルギー機関)は2050年カーボンゼロの達成にあたっては、新規ガス田への投資には否定的です。しかし、そもそも今からガス田開発をしても、カーボンゼロ社会に近づけば生産ができなくなり、その結果としてガス田開発では投資回収ができない可能性があります。その結果、投資は減速するということです。

国家政策およびネットゼロシナリオにおける石油およびガス生産への投資、2016年から2030年


IEA「エネルギー安全保障と無秩序な変化のリスク」をもとに再編集

したがって、天然ガス(石油もですが)は既存ガス田で生産力が高い中東やロシアへの依存度が高まります。そうなると、価格を引き下げるインセンティブがはたらきにくくなるといえるでしょう。

一方、北米も天然ガスの生産が中期的には増加しないでしょう。一時期はシェールガスの生産が盛んでした。しかしコロナ危機の時期の需要減による価格低迷によってシェールガスの採掘が減速した上、水質汚染などの環境問題が指摘されるようになり、現在の新たなガス田の採掘抗の掘削は停滞しています。

目の前で天然ガスの需給がタイトであったとしても、とりわけ欧州はこれを再エネ開発やエネルギーの効率化によって乗り切ろうとしています。エネルギーの効率化として、英国では給湯や暖房の電化を進めています。ガスボイラーの利用をやめ、電気で運転するヒートポンプを拡大しようということです。同時に、ガスについては再エネ賦課金を引き上げ、ガスから電気へのシフトを促しています(英国ではガスにも再エネ賦課金がかかっているのです)。さらに、欧州ではカーボンクレジットの価格も上がっており、中期的には簡単には電気・ガス料金は下がらないでしょう。

では、日本はどうでしょうか。

日本も電気料金は下がらない

結論を言えば、日本の電気・ガス料金も簡単には下がりません。ただし、LNGだけが要因ではありません。冬期の電力の供給力不足への懸念は続きますが、これは老朽火力の休廃止が主な要因です。LNGについては、長期契約がほとんどですが、スポット市場に連動した価格指標による取引も増加が見込まれていますし、原油価格もまた高値で推移することが予想されるため、欧州ほどではないにせよ、価格は高止まりする傾向となるでしょう。

したがって、電気・ガス料金は簡単に下がらないということになります。

さらに厳冬ともなれば、電力・ガス需要は増加するため、ますます需給がひっ迫します。昨冬、米国テキサス州では電力もガスも需給がひっ迫し、強い寒波の中で暖房なしで過ごすことになった人がたくさんいました。

とはいえ、電気代・ガス代が下がらないということではありません。例えば住宅など建物の断熱性能を向上させ、あるいは古いエアコンや冷蔵庫などを買い替えることで、電気代を下げることができます。また、日本全国でこうした取組みを進めることで、電力・ガスの需給を緩和することができます。

とはいえ、厳冬となった場合、やはり需要は増加します。これに対応するためには、安定供給を可能とする権益の確保が求められます。同時に、化石燃料の消費を急速に減らしていくような再エネ開発とエネルギーの効率化が必要です。この2つがあってはじめて、2020年代のエネルギーの安定があると考えていいでしょう。それに、電気・ガス料金が高値で推移すれば、再エネや省エネの競争力が高まります。見方によっては、現在の気候変動問題の原因の1つは、エネルギー価格が安すぎたのではないかという指摘もあります。貴重なエネルギーを大切に使うということも、必要でしょう。

もとさん(本橋恵一)
もとさん(本橋恵一)

環境エネルギージャーナリスト エネルギー専門誌「エネルギーフォーラム」記者として、電力自由化、原子力、気候変動、再生可能エネルギー、エネルギー政策などを取材。 その後フリーランスとして活動した後、現在はEnergy Shift編集マネージャー。 著書に「電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本」(秀和システム)など https://www.shuwasystem.co.jp/book/9784798064949.html

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