日本のLNGに対する恒常的な脆弱性が確認できた今、我々が考えるべきは③今後どうしていくべきか、だろう。しかもLNG不足は日本だけに限らない。今年の世界的なエネルギーのトレンドの一つといっても差し支えない状況で、その供給確保の困難とどう向き合っていくべきなのか。
ある意味で、今回の燃料制約は、大手電力10社が行う電源の安定稼働や燃料確保に向けた不断の努力だけでは、いずれ限界に来ることを知らしめたといえるかもしれない。
電力需給の対策などを検討する有識者会議の委員のひとりである松橋 東京大学大学院工学系研究科教授は「天然ガスが国家の基幹エネルギーになっている現状を鑑みると、大手電力会社に価格、量すべてのリスクを背負わせ、国民に影響が出ないようにしてくれ、というのはかなり厳しい要請ではないか。LNGを石油並みに備蓄することは難しいが、国が何らかの形で乗り出さなければ根本的に解決しない」と指摘している。このように、一企業にエネルギー安全保障を頼ったという構成、果たしてこれが適切だったのか、という点は議論の余地がある。
さらに言えば、LNGという選択肢そのものについても改めて考える余地がある。気候変動が激化する中、自給ができない日本にとって、供給が難しくなりつつあるLNGにいつまで頼るのか。そして今後は、何を代替燃料とするのか。
いずれにしても、燃料を輸入に頼る日本にとって、冬季を見込んだ燃料調達は欠かせない、ということになるだろう。
しかしその一方で、脱炭素についても無視することはできない。そのためにも、石炭火力は減らしていかざるを得ないが、貯蔵の観点からは石炭に一日の長がある。しかし、それにおいても老朽火力の故障という論点があり盤石ではない。
また、脱炭素の文脈で考える場合、再エネを増やしたときに、調整電源をどうするのかという論点も欠かせない。中国が自給にこだわっているように、日本もエネルギー自給にこだわるならば、ある程度の再エネを絡めようという流れになるだろう。
この「ある程度の再エネ」というのが、非常に難しいさじ加減になってくる問題がある。その中には、一定の発電量を維持する安定電源として、原子力をどう位置づけるのか、という論点も当然に出てくるだろう。そして、その他にも問題は尽きない。
ただ、明らかとなったのは、今年のようにLNGが不足し、原油が高騰、石炭も連動して価格上昇するという事態が、脱炭素への世界的な移行の中では出てくるし、それに対応していく必要があるということだ。供給可能な燃料についての前提条件が変わったときに、そこを織り込んでどのようにエネルギー構成を作っていくのか。それを短期、中期、長期の視点で考えていかねばならない。こうした点においては、すでに中国がしたたかにやっているため、参考にしてもよいだろう。
いずれにしても、日本の将来的なエネルギー問題については、本当に戦略的に取り組むべきだ。そして、最終的にたどり着くべき長期の答えは、島国でエネルギー資源のない日本には見えているはずだ。再エネの不安定さとどう向き合い、安定供給につなげ、エネルギー自給を高めるか。そこに日本の経済・社会の命運がかかっているといってもいい。
ということで、今日はこの一言でまとめたいと思う。
『日本の電力事情 思ったよりも脆弱だ』
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