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スポット価格高騰がFIT買取に与えた影響 第24回再エネ大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会

スポット価格高騰がFIT買取に与えた影響 第24回再エネ大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会

2021/02/24

審議会ウィークリートピック

2020年12月から2021年1月にかけての電力市場価格の高騰は、FIT電気の買電・使用にも影響を及ぼしている。本来、FIP等の制度設計により再エネ大幅拡大に向けた検討をおこなう場である「再エネ大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」だが、2021年2月16日に開催された第24回会合では、FIT制度の見直しに向けた検討にあたって、この問題が取り上げられた。

FIT電気の買取義務者とその費用負担

まず現状のFIT制度において、卸市場価格の高騰が誰にどのような影響を与えるのか、その仕組みから説明しておきたい。

FIT制度は度重なる制度変更がおこなわれてきたが、重要なキーワードはFIT電気の「買取義務者」と「回避可能費用」の2つである。 まずFIT制度に基づいて再エネ発電をおこなう者は、買取義務者にそのFIT電気を売電する。FIT制度が開始された2012年から2016年度まで買取義務者とは「小売電気事業者」であったのに対して、2017年度以降は各エリアの「一般送配電事業者」が買取義務者となっている。

図1.FIT制度における交付金等の流れ


出所:筆者作成

また小売電気事業者(ここではA社とする)は、自社で火力発電等をおこなう、もしくは他社から卸供給を受けるなどして、小売に必要となる電力を調達する。もしA社がFIT電気を調達するならば自社火力の燃料費等を節約することが可能となる。この節約された(回避された)費用に相当する金額が「回避可能費用」である。

買取義務者はFIT発電事業者に対して、FIT固定価格(例えば21円/kWh)を支払うと同時に、回避可能費用(例えば8円/kWh)との差額(13円/kWh)が費用負担調整機関から「交付金」として毎月交付される(後述の図2を参照)。

つまり「回避可能費用」とは、買取義務者にとってFIT電気の実質的な調達価格となっている。小売電気事業者全体で見ればFIT電気は、平均的には高くも安くもない、世間一般的な価格で調達可能な電気ということになる。

では、その回避可能費用とはどのように決まるのか。本稿では過去の詳細は割愛するが、2016年度以降はJEPXのスポット価格に基づき算定されており、市場価格に連動した価格となっている。

表1.FIT電気の買取義務者と回避可能費用算定方法


再エネ大量導入小委資料を基に筆者作成

交付金は1ヶ月単位で算定・交付されているため、まれにスポット価格が高騰しようとも、月間でまとめて見れば、買取義務者に深刻な影響を与えることは無かった。

ところが今冬の電力需給逼迫により、2021年1月のスポット市場月間平均単価は66.53円/kWh(東京エリアプライス)まで高騰したため、回避可能費用・交付金のいずれも前例のない水準となった。 表1のケース④においてスポット価格が長期間高騰を続けた場合、回避可能費用や交付金はどのように扱えばよいのだろうか。

図2.FIT回避可能費用と交付金の関係


出所:筆者作成

送配電事業者への影響

表1のケース④のように、送配電事業者が買取義務者であるものを慣例的に「送配電買取」と呼んでいる。

送配電事業者自身は需要家を持たないため、そのままでは買取したFIT電気の行き先が無い。よって全量をJEPXのスポット市場において、スポット価格で売却している(※後述する例外を除く)。

現行のFIT法では交付金はマイナス値を付けることができないため、図2の計算式において2021年1月の交付金は「ゼロ」とされる。よって図2の仮値の場合、送配電事業者には1kWhあたり45円の利益が積み上がることとなる。

なお2022年4月に改正される再エネ特措法においては、「交付」のほかに「納付」も可能となることから、2022年度以降はシンプルに差額を「納付」させることとなる。

元々送配電事業者は、FIT送配電買取において利益を出す/または損失が生じることは想定されておらず、パススルーするだけの存在であった。

またそもそもFITは、需要家が支払う再エネ賦課金によって支えられた制度であることから、送配電事業者に生じたFIT収支余剰は需要家に還元する(再エネ賦課金の軽減に充てる)ことが適切と判断された。ただし法改正前の現時点では直接返納することは出来ないため、翌月以降の交付金支払において収支余剰相当額を相殺することにより、間接的に還元することとした。

なお省令を改正することにより、2020年12月から2021年1月に生じた収支余剰についても遡及的に相殺することとされた。

小売電気事業者への影響

表1のケース①~③のように、小売電気事業者が買取義務者であるものを慣例的に「小売買取」と呼んでいる。 スポット価格の高騰は小売電気事業者に対しては、主に2つのルートを経由して影響を及ぼしている。

第1のルートが表1のケース③である。これを図2の仮値に基づき非常に単純に説明すると、2021年1月は小売電気事業者が受け取る交付金はゼロとなる。よって、FIT電気買取のため発電事業者に対して支払った21円がそのまま実質的な調達価格となる(小売買取は、FIT電気を自社需要に充てることが通常であると考えられる)。これは平常時に8円であったことと比較すれば、大幅な原価アップが生じることとなる。

このケース③については、小売電気事業者に対する救済(もしくは余剰収益の還元)措置は何もおこなわないこととされた。

自治体新電力等は、その設立目的から、現行制度の中で現実的なヘッジ策・リスクコントロール手段は少ない

より甚大な影響を与えた第2のルートが、表1のケース④である。

送配電事業者が買取したFIT電気は「再エネ特定卸供給」という仕組みを用いることにより、小売電気事業者は間接的にFIT電気を調達することが可能である。

純粋な送配電買取のみの場合、いわゆる地域新電力等であっても地元の特定のFIT電気を一切買電することが出来ないことから、この課題を解消することを目的とした補完的な制度である。

現在、「特定卸供給」を通じてFIT電気を調達する小売電気事業者は135者に上る。 なお、旧一般電気事業者の小売部門がこの制度を利用することは想定しにくいため、実質的には新電力がこの制度を利用していると考えられる。

ケース④の特定卸供給の場合、新電力によるFIT電気の調達価格はスポット価格となるため、1月は市場価格の高騰を直接的に被ることとなる。

例えば自治体新電力「かづのパワー」(秋田県鹿角市)は、今冬の損失額が5,600万円に上ると試算されており、会社解散を視野に小売事業を休止した(現在、事業再開に向けて検討中)。

一般論としてはどのような小売電気事業者も、相対契約や先渡取引等を活用することにより市場価格の高騰に対してヘッジ策を講じておくことが適切である。しかしながら自治体新電力等は、その設立目的(地元の再エネ電気を調達し地域内で小売する)を踏まえると、現行制度の中では現実的にはヘッジ策・リスクコントロール手段は少ないと思われる。

まずFIT電気という現物を調達することが大前提であるため、価格変動に対しては先物取引を通じたフィナンシャルなヘッジ策が有効であると考えられるが、日本では先物取引は未成熟な状態である。

また、特定卸供給を契約したFIT電源からの受電量を日々随時、柔軟に増減させることなどは出来ないため、スポット・時間前市場からの調達と異なり、小売電気事業者の意思による量のコントロールも出来ないという難点もある。

このため市民団体等からは、主にFIT電気を小売する新電力に対して何らかの救済措置を講じることが要望されている。

資源エネルギー庁は、需要家保護の観点から、FIT特定卸供給の支払猶予、分割払いに応じた

この要望に対して資源エネルギー庁は、主に需要家保護の観点から、FIT特定卸供給の支払を猶予すること、および分割払いに応じる措置を講じることとした。これ自体で損失額が改善されるわけではないが、小売電気事業者のキャッシュフローに対しては大きな経営支援策になったと思われる。

図3.FIT特定卸供給 支払猶予措置のイメージ


出所:再エネ大量導入小委資料

なお表1のケース①と②の回避可能費用は現時点は固定単価であるが、2021年3月末に改正FIT法の「激変緩和措置」が終了することにより、すべてケース③と同じくスポット価格連動の調達価格となる。

このため2021年4月以降、小売電気事業者がFIT電気を調達するという行為のリスクは大きく上がると考えられる。

なお2022年度から開始される「FIP」では、その環境価値は発電事業者に帰属すると整理されている。FIT発電所(太陽光であれば50kW以上)はFIPに移行することが可能であるため、自治体新電力等はFIP発電所と契約することにより、FIT特定卸供給の価格高騰リスクを避けることが可能と考えられる。

FIT発電事業者への影響

買取義務者からFIT発電事業者に対して支払われる価格は固定価格であるため、JEPXスポット価格高騰とは直接の関係性は無く、安定的に発電事業が継続できる。
他方、上述のように2020年度末をもって改正FIT法の激変緩和措置が終了するため、多くの新電力にとって、FIT電気は価格ボラティリティの高いリスキーな電源という評価を加速する一因となったと考えられる。

具体的な件数等は不明であるが、すでに多くの小売買取FIT電源がその買取契約を解除され、送配電買取に移行しつつあるようである(特定卸供給の契約締結は無く、小売電気事業者との関係性は途絶)。

この意味では、スポット価格高騰は間接的にFIT発電事業者に影響を与えた可能性がある。
すでに事業用発電も随時「卒FIT」を迎えているが、安易に発電を終了させることなく、買電事業者と上手くリスクを分担しながら、今後も長期的な再エネ発電が継続されることを期待したい。

梅田あおば
梅田あおば

ライター、ジャーナリスト。専門は、電力・ガス、エネルギー・環境政策、制度など。 https://twitter.com/Aoba_Umeda

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