11月4日のテーマは、環境という資産を守るための生涯学習というテーマだった。そこでは、ある参加者が指摘した「資本主義のイデオロギーによって、自然を支配している人間が社会的環境管理の失敗について責任がある」ということに象徴されるように、人類は目の前の経済だけではなく、自然や科学、伝統についてもっと学ぶ必要があるということだ。
11月5日は、ビッグデータへのアクセスが取り上げられた。個人情報保護の問題がある一方、さまざまな製品のトレーサビリティを確保していくためには大量のデータにアクセス可能であることが必要だ。この点は、11月6日の天然資源をめぐる議論にも引き継がれる。不当なサプライチェーンが資源管理を損ない、コモンズの悲劇(共有地を誰もが自由に使えるようにすると、誰もが最大の利益を得ようすることで荒廃してしまうこと)を引き起こすことなどが指摘される。このコモンズは地球全体におよび、気候変動問題や生物多様性問題に代表されるように、国境を越えた問題となっている。だからこそ、国境を超えた連帯が必要だというのが、11月8日の議論だ。
11月9日の議論は、生態系が人々の健康や幸福にも重要であることが議論された。とりわけ都市部において、生態系を保全していくことは大きな意味がある。
11月10日のテーマは再生可能な食糧生産だった。言うまでもなく、世界各地で森林伐採などを伴う持続可能ではない農業が展開されている。これを変えていくには、政府の不当な補助金をなくしていくことが必要だが、同時に何が持続可能なのか、農民への教育も必要だ。先住民の農業などを改めて導入することも効果がある。
持続可能な農業イベントで講演したSabrina Dhowre Elba氏とIdris Elba氏(2021年11月6日)
このように、毎日の議論を見ていくと、生態系保全、食糧生産、生涯教育、越境などそれぞれの問題は互いに密接につながっていることがわかる。
レジリエンス・ラボの最終日、11月11日は、金融がテーマとなった。持続可能な地球に変革していくとしても、投資は必要だ。とはいえ、新たな投資ではなく、現在の投資を変革していけばいい。とはいえ、生態系の経済的評価は簡単ではない。そのため、新たな金融メカニズムの採用や、短期的な損失があっても長期的な協力を促進するシステムの構築が提案された。さらに、現在の指標を使った投資では自然の価値が損なわれるという指摘もなされた。
こうしたレジリエンス・ラボが示した認識は、金融機関に対しても、これまでのような気候変動対策に関する評価にとどまらない、包括的な地球の持続可能性に資する金融が問われることを示している。同時に、そういった金融の変革が実現できるような経済社会の変革も必要となってくる。
政府間交渉では、気候変動対策や適応のための多額の資金調達が争点の1つとなっている。数兆ドル単位の資金の動員を実現するためには、ここで示されたような変革の必要性が、いずれ明確になってくるのではないだろうか。
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