エクイノールとRWE、欧州最大のグリーン水素プロジェクト「NortH2」に参加 世界の水素ビジネス最新動向 | EnergyShift

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エクイノールとRWE、欧州最大のグリーン水素プロジェクト「NortH2」に参加 世界の水素ビジネス最新動向

エクイノールとRWE、欧州最大のグリーン水素プロジェクト「NortH2」に参加 世界の水素ビジネス最新動向

2020年12月17日

欧州最大級の水素プロジェクト「NortH2」とは?

2020年12月7日、ノルウェーの洋上風力発電大手エクイノール(Equinor)とドイツの電力大手RWEは、ヨーロッパ最大のグリーン水素(再エネによって生産される水素)開発を目指す「NortH2」プロジェクトに参加した。

このプロジェクトでは、オランダ北部のフローニンゲン港沖に洋上風力発電を建設し、そこで発電された自然電力でグリーン水素をつくりだし、ヨーロッパ北西部で使用するというものだ。

プロジェクトは2020年2月に発足。当初はシェル、オランダのガスネットワークオペレーターであるGasunie、グローニンゲン港による企業コンソーシアムが運営していた。そこにエクイノールとRWEが新しく参加した形だ。

プロジェクトの予定では、2027年までに発電容量1GW、2030年までに4GW、そして2040年には10GW以上を目指す。これは、2030年に40万トン、2040年には100万トンのグリーン水素生産量に相当する。

2030年に4GWが達成されれば、ヨーロッパ全体での水素分解機器の設置目標40GWの10分の1に相当する。2040年に100万トンのグリーン水素が生成されれば、年間800万~1,000万トンのCO2排出量削減が期待される。

当面は、2021年後半のプロジェクト開始を目指し、各種の調査が行われている段階だ。この調査にはRWEも参加している。


NortH2 Websiteより

エクイノール、電源開発、水素プロジェクトに次々と参加

各企業の水素関連の動きを見てみよう。

エクイノールといえば、2020年9月、秋田県沖(能代市、三種町及び男鹿市沖)における洋上風力発電事業の応札に向け、JERA、電源開発とコンソーシアムを組んだニュースは記憶に新しい。

欧州では2020年11月に、Panasonic、ハイドロと電池市場の可能性評価のためのパートナーシップを結んだばかりだ。この締結で、2021年夏に向け、欧州における電池ビジネスモデルを構築していくという。

世界有数の産油国ノルウェー出身のエクイノールだが、水素をエネルギー転換の重要なファクターととらえ、これまでも多くの水素プロジェクトに参加している。

例えば、2034年までにイングランド北部の家庭370万軒など(85TWh、英国人口の12.5%に相当)へ、水素を供給するという構想のプロジェクト「H21 North of England」もそのひとつだ。Northern Gas Networks、Cadentと共同で進めており、詳細なレポートを2018年に出した。

オランダでは、Vattenfall社のマグナム火力発電所を天然ガスから水素に切り替えるプロジェクトが進行中だ。2023年までに、440万MWのコンバインドサイクルガスタービン(CCGT)3基中1基の転換をまずは目指している。

RWEは2040年の脱炭素を宣言

独RWEは、子会社のRWE Renewablesを中心に全世界で洋上風力発電所を展開している。日本関連では、2020年5月には、九州電力グループの九電みらいエナジーと秋田県由利本荘市沖の洋上風力プロジェクトの共同入札参加協定書を締結した。

2020年9月、RWEは2040年までのカーボンニュートラルを宣言した。化石燃料を段階的に廃止し、年間15億ユーロを投資していくという。RWEはすでに、2012年から2018年の間に6,000万トンのCO2排出量削減に成功している。今後さらなる削減に向け、イギリス、オランダ、ドイツなどの火力発電所を廃止していく考えだ。RWEは、洋上風力発電において世界第2位、再生可能エネルギーでヨーロッパ第3位のシェアを誇る。

EU、「気候中立」に向け、水素戦略ロードマップを策定

一方、EUでは「欧州グリーンディール」で2050年のカーボンニュートラルを目指し、各目標値を引き上げるなどの措置をとっている。

水素に関しては、今年7月に「欧州の気候中立に向けた水素戦略(A hydrogen strategy for a climate-neutral Europe)」という政策文書を発表した。この戦略が意図するのは、ヨーロッパの電源構成におけるグリーン水素比率を高めること。現在の水素の割合は2%にすぎず、しかも大半が化石燃料によって生成された水素だ。

2050年までのロードマップによる目標値は、次の通り。

  • グリーン水素の電解装置の設置規模と生産量を、2024年までに6GW以上と100万トンに引き上げ
  • 同じく2030年までに40GWと1,000万トンにそれぞれ引き上げる。
  • 2030年以降は、グリーン水素技術を成熟させ、航空業や運送業といった脱炭素化が困難な業種での水素活用を拡大させる。

世界各地で「グリーン水素」のイニシアチブ続々

2020年12月8日には、「Green Hydrogen Catapult(グリーン水素カタパルト)」という国際イニシアチブが発足。Ørstedやイベルドローラなど7社が名を連ねる。グリーン水素生産量を2026年までに25GWに増加させるという。現在の約50倍だ。生産コストは1kgあたり2ドル以下とし、脱炭素化の加速を狙う。

日本では、同じく12月7日にトヨタやホンダなど88社が「水素バリューチェーン推進協議会」を立ち上げた。「事業化・規制ワーキンググループ」「渉外ワーキンググループ」「調査ワーキンググループ」の各ワーキンググループにおいて議論をとりまとめ、2021年2月に政府へ提言する予定だ。

(水素バリューチェーン推進協議会については、エナシフTV『トヨタやホンダなど 水素を2030年に主要燃料に』でも紹介している)

 

参照
Equinor "Equinor joins Europe’s biggest green hydrogen project, the NortH2-project" 2020.12.7
RWE "New partner for NortH2: RWE strengthens one of the most ambitious hydrogen projects in Europe" 2020.12.7
Equinor "Hydrogen Projects"
H21 North of England
JERA "秋田県沖の洋上風力発電事業開発に向けたコンソーシアムの組成について" 2020.9.9
九電みらいエナジー "秋田県由利本荘市沖洋上風力発電の事業化に向けた本格検討の実施について" 2020.5.28
EU "A hydrogen strategy for a climate-neutral Europe"
Race to Zero "Green Hydrogen Catapult" 2020.12.8
トヨタ自動車 "水素社会の実現を推進する新たな団体「水素バリューチェーン推進協議会」の設立について" 2020.12.7
熊谷徹 "ドイツ最大の電力会社、RWEが脱石炭・グリーン化に踏み切る理由" EnergyShift

山下幸恵
山下幸恵

大手電力グループにて大型変圧器・住宅電化機器の販売を経て、新電力でデマンドレスポンスやエネルギーソリューションに従事。自治体および大手商社と協力し、地域新電力の立ち上げを経験。 2019年より独立してoffice SOTOを設立。エネルギーに関する国内外のトピックスについて複数のメディアで執筆するほか、自治体に向けた電力調達のソリューションや企業のテクニカル・デューデリジェンス調査等を実施。また、気候変動や地球温暖化、省エネについてのセミナーも行っている。 office SOTO 代表 https://www.facebook.com/Office-SOTO-589944674824780

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