連載第1回では、電力ビジネスがどんなビジネスなのかイメージできたのではないだろうか。今回は、2021年12月24日に「脱炭素先行地域づくりガイドブック」が公表されたことから、「地域脱炭素」を意識した電力ビジネスについて、小売電気事業者の目線で戦略を考えてみる。電力業界で業務を続ける傍ら、電力系YouTuberとしても活躍する棚瀬啓介氏が、わかりやすく解説する。
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第1回で解説したとおり、電力ビジネスは「発電(作って)」「送配電(運んで)」「小売(売る)」の3つに分けて理解すると分かりやすい。実際、電気事業のライセンスも「発電事業者」「送配電事業者」「小売電気事業者」の3つに分かれている。ここに地域脱炭素の要素が加わるとどうビジネスが変化するのだろうか? もっとも顧客に近い立場にある「小売電気事業者」の視点から解説していこう。
電力のメガトレンドである「5つのD」の切り口から地域脱炭素を考えてみよう!
出所:経産省
入門編なので、大胆に単純化すると、地域脱炭素 ≒ 脱炭素化 + 分散化。つまり、「脱炭素化を進める中で急激に分散化がドライブする」という形だ。
電力ビジネスに関わっていない読者には、このインパクトは伝わりづらいかもしれないので、地域脱炭素をもう少し解説してみよう。
地域脱炭素ロードマップによると「地域脱炭素は、脱炭素を成長の機会と捉える時代の地域の成長戦略であり、自治体・地域企業・市民など地域の関係者が主役になって、今ある技術を適用して、再エネ等の地域資源を最大限活用することで実現でき、経済を循環させ、防災や暮らしの質の向上等の地域の課題をあわせて解決し、地方創生に貢献できる。」と書いてあるように、地域内の再エネ(分散型電源)を最大限利用して脱炭素化することになる。
では、地域内の再エネの主役になるのは何だろうか? 地域脱炭素ロードマップ(概要)には、以下のように記されている。
脱炭素の基盤となる重点対策の全国実施
出所:環境省
これによると、1番目が「自家消費型太陽光発電」となっており、続く2番目が「地域共生・地域裨益型再エネ」となっている。地熱・風力・バイオマスなどはどこのエリアでもある再エネ電源でないことを考えると、2番目は「太陽光発電」が主力になることが予想される。
第6次エネルギー基本計画でも、水力はもともと9%程度が維持される一方、太陽光発電がこれまでの2倍程度の水準になっていることからも、2022年から2030年までは太陽光発電主役の地域脱炭素時代といえる。
<第6次エネルギー基本計画(抜粋)>
2030年の野心的見通し
再エネ 36-38%
(再エネ内訳)
太陽光 14~16% 風力 5% 地熱 1% 水力 11% バイオマス 5%
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