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再エネ主力電源化に暗雲? 太陽光発電の買い取り価格、いよいよ10円を切る時代に突入

再エネ主力電源化に暗雲? 太陽光発電の買い取り価格、いよいよ10円を切る時代に突入

2022年02月02日

再生可能エネルギーの普及拡大を牽引してきた太陽光発電の買い取り価格がいよいよ10円を切る時代に入る。経済産業省は2022年度の第1回目の入札上限価格を1kWhあたり10円に引き下げる。これにより、250kW以上の事業用太陽光の買い取り価格は2022年度中に9円台に突入する。さらに2023年度からは50kW以上250kW未満の買い取り価格も9.5円にする方針だ。経産省は再エネの最大限導入と国民負担の低減に向け、さらなるコスト低減を追求していく。

2022年度以降、FIT・FIP価格はどうなるのか?

再エネからつくられた電力は、FITによって大手電力会社などが20年間、決められた価格で買い取ることが義務づけられている。その買い取り費用の多くは「賦課金」として家庭や企業などが負担する仕組みであり、2021年度には標準的な家庭の年間負担額がはじめて1万円を超え、国民負担の抑制がまったなしの状態となっていた。

経産省はFITの買い取り価格を引き下げるとともに、2022年度から大規模な太陽光発電や陸上風力などには、固定価格ではなく卸電力市場の価格に一定の金額を上乗せした価格で買い取るFIP制度を導入する。

1月28日、経産省は調達価格等算定委員会を開催し、2022年度以降のFITおよびFIP価格について、再エネ電源ごとの買い取り価格案を提示し、大筋で了承された。

太陽光発電だが、1,000kW以上はFIP入札のみ、250kW以上1,000kW未満はFIP(入札外)とFIT入札の選択制となり、1,000kW未満/以上で取り扱いが異なってくる。2022年度からそれぞれで入札を実施する。とはいえ、1,000kW以上のFIP入札および、250kW以上1,000kW未満のFIT入札の上限価格は同じ。第1回が10.00円/kWh、第2回9.88円/kWh、第3回9.75円/kWh、第4回9.63円/kWhが設定され、いよいよ9円台に突入する。

第1回目の募集容量は250〜1,000kW未満が50MW、1,000kW以上は175MW。いずれかが募集容量に達せず、札割れした場合は、入札枠を融通する。

また工場や倉庫などへの普及拡大に向けて、既存の建物屋根に太陽光発電を設置する場合は、入札の対象外とし、FIT価格10円/kWhが適用される。

さらに2023年度のFIT価格についても公表。50kW以上250kW未満の買い取り価格が、2022年度の10円から0.5円引き下げられ、9.5円/kWhとなる。10kW以上50kW未満こそ10円/kWhとなんとか10円を維持するが、太陽光発電の買い取り価格は10円を切る時代に入っていく。

その他の区分については、次のとおり。

10kW未満(住宅用)2023年度のFIT価格16円/kWh、2022年度17円/kWhから1円減額。
10kW以上50kW未満2023年度のFIT価格10円/kWh(消費税別)。
50kW以上250kW未満2023年度についてはFIT/FIP選択制となり、いずれも9.5円/kWh。
250kW以上500kW未満2023年度はFIT(入札)/FIP(入札外)の選択制に。FIP価格は9.5円/kWh。2024年度からはFIPのみに。
500kW以上1,000kW未満2023年度からはFIPのみに。
1,000kW以上2022年度からFIPのみに。 

10kW未満に浮上した法令違反 取り締まりを強化

だが、太陽光発電の最大のボリュームゾーンだった10kW以上50kW未満は、2020年度から自家消費比率30%など、いわゆる地域活用要件が課されて以降、認定件数の減少に歯止めが利かない。その一方で、10kW未満の地上設置のFIT申請・認定件数が急増している。2020年度は2019年度比約4倍となる申請件数3,668件、認定件数3,187件を記録。2021年度は2022年1月時点ながら、申請件数2,643件、認定件数834件で推移する。

急増の裏には地域活用要件逃れから、意図的に10kW未満に分割している疑いがあり、地域とのトラブルも増加中だという。そもそも10kW未満は、住宅用太陽光発電とも呼ばれるように、自家消費をおこなったうえで、使いきれない電気を買い取る仕組みだ。経産省はFIT認定に際して、建物登記などを提出させ、きちんと自家消費がおこなわれているのか、確認している。

一方、地上設置に関しては、設置場所の土地登記簿謄本のみの提出を求めるだけで、制度逃れの分割を生むひとつの原因になっていた。経産省は制度の悪用を防ぐために、地上設置として申請があった案件についても、本当に電気を消費する建物があるのかどうか確認するため、建物登記などを提出させるよう厳格化する方針だ。

10kW未満の申請・認定件数(2022年1月時点)

 2017年度2018年度2019年度2020年度2021年度合計
地上設置申請件数9586869373,6682,6438,892
認定件数7896108243,1878346,244
屋根設置申請件数151,881150,488146,355126,747173,563749,033
認定件数143,499145,207142,791123,775141,110696,382
合計申請件数152,839151,174147,292130,415176,206757,925
認定件数144,288145,817143,615126,962141,944702,626

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出典:経済産業省

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藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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