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再エネ主力電源化に暗雲? 太陽光発電の買い取り価格、いよいよ10円を切る時代に突入

2022年02月02日

期待のソーラーシェアリングでも問題が…

太陽光発電の導入適地が減る中、荒れた農地に太陽光パネルを設置し、発電しながらその下で作物を育てる「営農型太陽光発電」においても、経産省などは実態把握を急ぐ。

営農型太陽光発電は、10kW以上50kW未満ながら、荒廃農地の有効利用と再エネの拡大に向け、自家消費をせずとも、災害時の電力供給を条件にFIT対象となる数少ない区分である。ただし、FIT認定後、3年以内に農地転用の許可を得ることが条件づけられている。

ところが、2020年度(2021年12月末時点)の認定実績をみると、3,520件のうち実際に農地転用許可を提出したのは28件にとどまる。農林水産省などは再利用可能な荒廃農地は全国に約9.1万ヘクタールあり、少なくとも34GWもの太陽光発電の導入ポテンシャルがあると試算する。再エネ拡大と農業の発展いずれもが期待されるだけに、経産省は関係省庁とともに農地転用許可の実態把握を進める。

小規模事業用太陽光発電(10-50kW)の2020年度の認定実績

件数合計自家消費型営農型
合計農地転用許可の提出あり
2020年度認定5,659件2,139件(38%)3,520件(62%)28件

出典:経済産業省

着床式の洋上風力も2024年度からFIPのみに

風力発電、特に洋上風力に関しても、FIPへの移行時期が明らかとなった。

まず着床式の洋上風力は、秋田県八峰町および能代市沖などの海域において、すでにFITを前提として公募がはじまっている。そのため2024年度からFIPのみの対象となることが決まった

一方、開発途上にある浮体式は、国内外においても大規模な商用発電所の運転開始に至っていない。そのため2023年度、そして2024年度もFIT対象にする。

陸上風力については、2023年度から原則50kW以上はFIPのみの対象となり、FIPの上限価格14円/kWhが決まった。

地熱、中小水力については、2022年度から2024年度は1,000kW以上がFIPのみとなるが、ただし入札対象外。一般木質などのバイオマスは2023年度において2,000kW以上1万kW未満の区分についてはFIPの入札対象外、1万kW以上は2022年度からFIP入札のみとなる。バイオマスの液体燃料に関しては、2022年度から50kW以上がFIP入札対象となる。

FITやFIPは単なる補助金ではなく、(再エネの普及拡大に向けて)時間を買う政策である」(松村敏弘 東京大学社会科学研究所教授)ゆえ、いつまでも続けられる政策ではない。FIPからその先にある他の電源との市場での競争が最終目標だ。

ただし、思うように普及が進まず支援が必要な再エネ電源はまだある。この4月からはじまるFIPもうまく機能するかはまだわからない。国民負担の低減に向けたコスト削減にしても、地域との共生にしても、それを可能とする環境整備や、系統制約の解消などさまざまな政策の連動が欠かせない。脱炭素実現に向けた制度設計はまだまだ残っている。

 

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藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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