オフサイト型PPAで需要家による再エネ電力の直接調達実現へ 第31回「電力・ガス基本政策小委員会」 | EnergyShift

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オフサイト型PPAで需要家による再エネ電力の直接調達実現へ 第31回「電力・ガス基本政策小委員会」

オフサイト型PPAで需要家による再エネ電力の直接調達実現へ 第31回「電力・ガス基本政策小委員会」

2021/03/15

海外では、再生可能エネルギーの普及拡大のドライブの1つとなっているのが、オフサイト型のPPAである。しかし、現状日本では、さまざまな制約や制度面での整備ができていないことから、普及していない。今後、再エネを必要とするRE100加盟企業などを対象としたオフサイトPPAをどのように実現していくのか。2021年3月10日に開催された第31回「電力・ガス基本政策小委員会」では、この点が議論となった。

審議会ウィークリートピック

RE100加盟企業の増加などで高まる再エネ調達ニーズ

国内でもRE100加盟企業が増加するなど、企業による再エネ電力の調達ニーズが高まりつつある。

現在も、非化石証書を用いた再エネ電力メニューを提供する小売電気事業者と契約することにより、需要家は実質的な再エネ電力を使用することが可能である。

グローバル企業等の一部の需要家は多様な調達方法を確保するため、再エネ発電所(再エネ発電事業者)から直接、再エネ電力を調達することを希望しているが、この形態は日本では電気事業法上の「小売供給」に該当するため、需要家もしくは発電事業者のいずれかが、小売電気事業の登録をおこなう必要があった。

なお、需要家自身が小売ライセンスを取得して自社工場等に供給する形態はかつて「需要家PPS」と呼ばれ、部分自由化の時代から電気代削減を目的としておこなわれていた。

「電力・ガス基本政策小委員会」の第31回会合において、再エネ電源と需要家が契約することにより、再エネ電力の直接供給を可能とする方向性が事務局から示された。以下その概要を報告差し上げたい。本稿では需要家とは企業等の高圧以上の法人需要家を意味するものとする。

オンサイト型PPA

小売電気事業者から調達する方法以外に、需要家が再エネ電力を調達する手段には幾つかの類型が存在する。

最もシンプルな形態が「オンサイト型」であり、自社事業所の屋根等に太陽光パネルを設置することによる自家消費である。この太陽光パネルを自社ではなく、他社が設置したうえで当該太陽光による電力を需要家に供給する契約形態を「オンサイト型PPA」(Power Purchase Agreement:電力購入契約)と呼ぶ。

この形態はパネル所有者が誰であるかを問わず自家発電の自家消費に該当するため、電気事業法の規制対象外である。

しかしながら自社事業所の屋根や敷地面積には限りがあり、再エネの自家発電量だけでは自社需要を賄えないことが通常である。

なお、元々のオンサイト型PPAとは再エネに限ったスキームではなく、電気代削減(特にkW抑制)の観点で、自由化前から化石燃料を用いて広く実施されていた事業である。

自己託送制度の拡大

もう一つ、全面自由化以前からおこなわれていたスキームの一つに「自己託送」という制度がある。

これは複数の拠点を持つ事業者が、他の拠点の自家発電力量を自社内拠点間で融通することを目的とした仕組みであり、東日本大震災の電力需給逼迫以降、一般送配電事業者による標準的な送電サービスとなったものである。自営線を敷設することなく既設の送配電設備を使用できるという大きなメリットがある。

震災後の需給逼迫緩和を第一の目的とした制度であり、電源は再エネに限定されず、自社もしくは子会社等の「密接な関係」を持つ者の電源を活用することが出来る。

つまり一般送配電事業者の送配電網を使用するとはいえ、「ちょっと離れた自家発自家消費」の一類型のような位置付けである。需要拠点から見た「オフサイト」の自社電源を活用する仕組みである。

子会社等の別法人であれば法人間の契約書が必要であるが、あくまでグループ内自家消費であり、まったくの第三者と締結するPPAとは異なる仕組みであると言える。

図1.自己託送のイメージ

自己託送のイメージ
出所:電力・ガス基本政策小委員会

なお図1のイメージでは、需要家XのBオフィスが必要とする電力のすべてをA工場からの自己託送のみで賄うことは通常は困難であるため、小売事業者から部分供給方式により電力供給を受けることが一般的である。

再エネ電源を自己託送する場合、その再エネ電源(例えば太陽光)は仮想的に自家消費されているという扱いとなるため、FIT/FIP制度の対象とはならない。

よってその環境価値は自家消費と同じ扱いとなり、非化石証書の発行対象ともならない。

また、小売電気事業者から供給された電力ではないため、自己託送量にはFIT再エネ賦課金が掛からない

他方、系統利用ルールに関しては自家消費とは異なる位置付けがされており、一般送配電事業者と発電量調整供給契約・接続供給契約を締結のうえ、計画値同時同量を満たす必要がある。計画値と実績値のズレ(インバランス)はインバランス料金の対象となる。

このため太陽光等の変動性再エネ電源を自己託送で利用するには一定のハードルがあったが、最近では精緻な発電予測等によりインバランス発生を抑制している事例もある。

図2.太陽光発電 他拠点への自己託送イメージ

太陽光発電 他拠点への自己託送イメージ
出所:電力・ガス基本政策小委員会(ソニー)

オフサイトの自社電源を活用できる自己託送制度であるが、自社(グループ内)のオフサイト電源にも限りがあるため、さらなる拡大は困難な状況であった。

そこで自己託送制度とオフサイトにある他社電源とのPPA締結を組み合わせることにより、需要家による再エネ電源の直接調達を実現することが提案されている。

それが自己託送制度を通じたオフサイト型PPAであり、この実現のため自己託送制度に課されていた「密接な関係性を有する」者の要件を拡大することが検討されている。

自己託送オフサイト型PPAの課題

他方、無制限にオフサイト型PPAによる他社融通スキームを拡大することには様々な課題があることが指摘されている。

代表的な課題が、費用負担の公平性である。

上述のとおり、現行の自己託送ではFIT再エネ賦課金の支払いの対象外となる。このため自己託送が著しく増加し、賦課金を支払う者が減ることは、一般消費者等の他の需要家に負担が寄せられることを意味しており、需要家間の負担の公平性確保の課題がある。

また第三者(主に大口需要家)に再エネ電力を供給するという点では、オフサイト型PPAと小売電気事業者は競合することになるが、前者は賦課金支払いが不要であることから、供給業者間の競争の公正さという観点で課題がある。

また「電力の小売営業に関する指針」等により一定の規律がはたらく小売電気事業者と異なり、発電事業者にはそのような指針が無いため、需要家保護の観点からも課題があると考えられる。

これらの課題を踏まえ、新たな自己託送オフサイト型PPAに対しては以下の要件を定める案が示されている。

① FIT/FIP制度の適用を受けない電源であること

これは、他の調達手段があるにも関わらず特定の需要家のニーズに応じて新設される電源が、他の需要家の費用負担によって賄われるFIT/FIPを用いることは、やや本末転倒に感じられるためと推測する。

② 需要家の要請により専用電源として新設する電源であること

対象はあくまで新設電源であり既設は対象外となるが、新設であっても当初の需要家との契約が終了し、セカンダリーとなった場合は対象外となる。

③ 組合の定款等により電気料金の決定方法が明らかになっているなど、需要家の利益を阻害するおそれがないことがないと認められる組合型の電気の取引であること

現時点で、この具体的内容は不明である。

自己託送オフサイト型PPAはFIT/FIPを適用しない電源を対象とするということは、逆にFIT等では義務であった要件が課されないということを意味する。

FIT等では、柵塀・標識の設置や地域住民との適切なコミュニケーション努力、太陽光発電設備の廃棄等費用の積み立て等が求められているが、自己託送オフサイト型PPAに対してどのように事業規律を確保するかが課題である。

またFIT/FIP電源であれば、資源エネルギー庁はこれら電源に関する一定の情報を把握することが可能であるが、保安や安定供給等の確保から、新しいタイプの再エネ電源の導入実態をどのように把握していくかという課題が示されている。

再エネ賦課金の負担

現在のFIT法では、「小売電気事業者から電気の使用者に対して供給された電気」に対して賦課金を徴収することと規定されているため、自家消費電力量や自己託送は賦課金徴収の対象外となっている。

賦課金が徐々に高額化していることから、賦課金逃れを目的とした自己託送も一部存在するようである。

またすでにFITの効果やグリッドパリティの達成により、ある程度は自律的に住宅・事業所屋根に太陽光発電の設置が進みつつあるが、これにより小売電気事業者からの買電量は減少することが予想される。今後、屋根への太陽光発電の設置を義務付けるなどの新しい施策が導入されるならば、この傾向はさらに加速すると考えられる。

つまり将来的には、徐々に賦課金を負担する需要家やその対象電力量は減少することが想定される。

再エネ電力の買取に要する費用を電力の需要家全体で公平に負担するという基本的な考え方に基づくならば、小売電力だけを徴収対象とする現在の制度はいずれ見直しが必要になると考えられる。

FIT賦課金は暗示的カーボンプライシングの1つと位置付けられているが、脱炭素社会に向けた一層公平な負担の在り方について検討すべきと考えられる。

 

参照
第31回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会

梅田あおば
梅田あおば

ライター、ジャーナリスト。専門は、電力・ガス、エネルギー・環境政策、制度など。 https://twitter.com/Aoba_Umeda

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