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実は日本が世界の最先端! 注目すべき期待のエネルギー、「人工光合成」研究成果を振り返る

2022年02月02日

■人工光合成の実用化に向けた研究の歴史

西暦内容
2011年4月大阪市立大学の研究チームが光合成の基となるタンパク質複合体の構造を解明。
二酸化炭素と水を用いた人工光合成を行う構想が打ち出された。研究の成果は、英国雑誌「Nature」に掲載され、話題を呼んだ。
2011年9月トヨタグループの豊田中央研究所が世界で初めて、水と二酸化炭素と太陽光のみを原料にして有機物を合成する人工光合成の実証に成功。
太陽エネルギー変換効率は0.04%。
一般的な植物の光合成効率の1/5程度だった。
2012年7月パナソニックが太陽光を照射する光電極に窒化物半導体を用い、有機物を生成する電極に金属触媒を使用した人工光合成システムを開発。
太陽エネルギー変換効率0.2%(主生成物:ギ酸)を実現。
2014年11月東芝が太陽エネルギー変換効率1.5%という世界最高(当時)の変換効率を達成する材料を開発。
2015年7月大阪市立大などの研究チームとマツダの技術研究所との共同研究で太陽光エネルギーを利用して自動車用燃料としてのエタノールを生成できる、新たな人工光合成技術の開発に成功した。
太陽光エネルギー変換効率は0.71%で、自然界の植物の光合成と同レベル。
2016年12月昭和シェル石油が太陽光と水と二酸化炭素だけでメタンやエチレンなどの炭化水素を効率良く精製する新たな人工光合成技術を世界で初めて開発。
燃料電池に使われるガス拡散電極を応用。
2017年7月飯田グループホールディングスと大阪市立大学人工光合成センターが人工光合成技術による「IGパーフェクトエコハウス」の実証実験を開始。
太陽光エネルギーから水素を作り出し、発電給湯を行う技術を確立。沖縄県宮古島市で、人工光合成ハウスを建設。
2018年8月産業技術総合開発機構(NEDO)と人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)が、植物の光合成のエネルギー変換効率0.3%程度の10倍以上となる世界最高の変換効率3.7%の光触媒を開発。
2021年度末を目標とする太陽光エネルギー変換効率10%を目指す。
2019年1月NEDOとARPChemが東京大学とともに窒化タンタル(Ta3N5)光触媒を用いて、太陽光によって水を高効率に分解できる赤色透明な酸素生成光電極の開発に成功。
太陽光エネルギー変換効率5.5%を達成。
2020年5月NEDOが世界初の100%に近い量子収率で水を分解する粉末状光触媒を開発。
人工光合成化学プロセス技術研究組合・信州大学・山口大学・東京大学・産業技術総合研究所の共同研究により開発され、光の粒子である「光子」を利用する効率=量子収率を最大化することができた。
2021年4月トヨタグループの研究所、豊田中央研究所が36cm角のセルで、太陽光変換効率7.2%を達成。
植物のエネルギー変換効率を大幅に上回った。
2021年8月NEDOなど、人工光合成により100m2規模でソーラー水素製造の実証実験に世界で初めて成功。
東京大学、富士フイルム、TOTO、三菱ケミカル、信州大学、明治大学とともに、100m2規模の太陽光受光型光触媒水分解パネル反応器と水素・酸素ガス分離モジュールを連結した光触媒パネル反応システムを開発。

出典:著者作成

人工光合成の重たい課題と今後の展望はどうなる?・・・次ページ

東條 英里
東條 英里

2021年8月よりEnergyShift編集部にジョイン。趣味はラジオを聴くこと、美食巡り。早起きは得意な方で朝の運動が日課。エネルギー業界について日々勉強中。

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