最後に、みずほリサーチ&テクノロジーズが取り組む、少し変わったCO2排出量の可視化プロジェクトを紹介する。同社は、顧客のサプライチェーン排出量の算定を行うとともに、カーボンフットプリント(以下、CFP。個人や組織の活動に伴うCO2排出量を指し示す指標)を可視化するアプリケーションを制作し、参加者一人一人が、ゲーム感覚で脱炭素や気候変動問題を考えられるように取り組んでいるのだ。
この取り組みは、2020年1月に、ノルウェーのスタートアップ企業Ducky社と協業して始められた。両社は、組織とその参加者とが一体となって気候変動に取り組むためのプラットフォームサービス「Ducky(ダッキー)」の日本展開を狙っており、すでに実証実験が2020年1月から2月にかけて、みずほリサーチ&テクノロジーズ内で行われている。
Duckyの特徴は、参加者同士でCFP削減量を競い合い、その削減につながる行動の定着を狙うゲーム感覚のサービスを提供する点だ。「我慢」「節約」「意識高い」という脱炭素に対して抱きやすいネガティブイメージを、気軽で楽しいものに作り替えるための行動変容を導くことが狙いとなっている。
こまめな節電やリモートワークなど、身近でハードルの低い行動でも、どれだけ企業のCO2削減につながっているかを知ることができるので、個人レベルの脱炭素を大きく後押ししてくれる。
海外ではイケア・ノルウェー社がすでに導入しており、効果を上げている。導入によって、従業員間におけるサステナビリティ戦略の理解が深まったばかりか、従業員間のコミュニケーションも改善されたことを、みずほリサーチ&テクノロジーズは紹介している。
ここまでCO2排出量の算定について、①自社のシステムによって算定を行い、サービス提供を行う企業、②他社と協業して算定サービスを利用しながら、その二次利用によるサービス提供を行う企業、③排出量算定システムを使った新たな価値創造に取り組む企業と、そのビジネス形態を三段階に分けて紹介した。
このうち①と②においては、今後は珍しくないというよりも、事業を行う上で当たり前の取り組みとなるだろう。そうすれば、いずれは第三者に依頼するのではなく、自社内に排出量を算定するためのシステムを導入する企業も増えていくだろう。沖電気工業(OKI)グループの子会社、OKIエンジニアリングが始めた、受託した信頼性試験サービスに伴うCO2排出量の開示などはその良い例だ。
そして、自社導入の事例が増えれば、その支援をするためのコンサルティング業も活性化していくと思われる。
さらに、構築された算出システムを更に応用して価値創出する③については、ノウハウが浸透すれば、コンテンツ産業を得意とする日本にビジネスチャンスをもたらす可能性もある。
世界的な脱炭素の流れを受けて、乗り遅れる企業、対応する企業の中から、どこがビジネスチャンスを広げるのか。CO2排出量の算定サービスは、その動向から目が離せないビジネスとなるかもしれない。
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