冬に向け、ガソリンの価格高騰に拍車がかかる見込みだ。
石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の産油国でつくる「OPECプラス」は、11月4日の閣僚級会合で、原油の協調減産縮小ペースの維持を決定し、日本や米国といった消費国からの原油増産要請を受けないものとした。これから冬にむかい、暖房需要が伸びようとしている中で、ガソリンや暖房燃料の需要ひっ迫が、さらに差し迫ったものになろうとしている。
世界的な原油不足は、2020年5月に、史上最大規模の協調減産に踏み切ったことに端を発している。当時は新型コロナウイルスの影響で世界的に需要が落ち込んだ。協調減産の1ヶ月前の2020年4月には、ニューヨーク市場の米国産標準油種(WTI)の先物価格が一時的にマイナスになるなど、異常事態を招いた。減産は、今も規模を縮小しながら続いており、現在の原油価格高騰につながっている。英国ではガソリンの価格が10月26日に過去最高値を更新。日本でも11月1日時点で9週連続の価格上昇となっているなど、消費国からの増産要請の圧力は強まる一方だ。
それでも、追加増産に応じなかった理由として、ロシアのノバク副首相は、新型コロナウイルスの感染再拡大により、欧州連合(EU)で需要が弱まる可能性があるためだと述べた。実際、現在のペースで増産を続けた場合でも、2022年には供給過剰になる見通しが国際エネルギー機関(IEA)の調べで出ている。
加えて、世界における脱炭素の潮流が石油を「座礁資産」にして、その資産価値を下げるのは時間の問題だ。OPECプラスとしては、それまでにできるだけ高値を維持したい思いもあるだろう。
日本のガソリン価格は2014年以来、約7年ぶりの高値圏に到達し、167.8円/1Lとなっている。このまま原油高が続けば、レギュラーガソリンが全国平均で170/1Lの大台に達する可能性も見えてくる。ガソリン以外にも、プラスチックなど様々な石油化学製品や、ビニールハウス栽培の農産物など、様々な製品のコスト高にもつながっていくだろう。こうした事態を見込んで、日本政府はOPEC構成国のクウェートなどに増産を促す動きを見せていたが、成果につながらなかったのが、今回の増産見送りだ。
また、米国でもガソリン高騰への不満の声は高まっていると報じられており、WTIは2021年10月に、1バレル=80ドル台半ばという7年ぶりの高値を付けていた。
今回、増産が持ち越されたことによる圧力は、次回12月2日の閣僚会議に向け、冬の厳しさに比例する形でさらに高まることだろう。
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