地域密着型エネルギー事業者の地域エネルギー論:これからの地域エネルギー事業のヒント2 地域新電力が直面する2つの課題 | EnergyShift編集部

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地域密着型エネルギー事業者の地域エネルギー論:これからの地域エネルギー事業のヒント2 地域新電力が直面する2つの課題

地域密着型エネルギー事業者の地域エネルギー論:これからの地域エネルギー事業のヒント2 地域新電力が直面する2つの課題

EnergyShift編集部
2020/05/12
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地域新電力は事業を展開するにあたって、乗り越えるべき2つの課題がある。それはどのような壁であり、いかにして乗り越えればいいのだろうか。エネルギー事業コンサルタントの角田憲司氏が、自らの経験を踏まえ、地域新電力の発展のカギを示す。

地域エネルギー事業との関わりの原点

筆者と地域エネルギー事業の関わりは、東日本大震災後の千葉ガス勤務時代にはじまる。分散型エネルギーシステムの機運が高まる中、千葉ガスは地元の自治体と地域新電力を設立すべく私的な研究会を立ち上げた。そこで地元の自治体や有力企業に声をかけ、自治体が保有するゴミ発電の電力やメガソーラーなどの再エネを持ち寄った「地産地消型の電力小売事業」ができないかと考えた。地域新電力の草創期だった2013年のことである。

自治体新電力を、当初から複数連携型で検討する例は今もって他にない。利害関係の調整がかなり大変だからだが、我々がこれを達成できた大きな理由は、複数の行政区域(6市3町)を供給区域とし、自治体とも信頼関係があった地元のガス会社だからだった。この研究会はある段階から事業化に関心のある自治体を中心とした「地域エネルギー事業会社設立検討会」に移行し、具体的な事業化を検討した。

その結果、千葉県成田市と香取市による「株式会社 成田香取エネルギー」という自治体新電力が設立できた。

株式会社 成田香取エネルギーの設立協定書調印式 2016年7月5日 出典:成田市

だが、そこに千葉ガスは参画できなかった。なぜなら設立直前に、千葉ガスが親会社の東京ガスに吸収合併され、消滅したからである。当時の東京ガスは電力小売自由化を機に新電力としての成功を収めるべく、着々とその準備をしていた。電力自由化が4年経過した今(2020年)でこそ、後述する「岡崎さくら電力」のように競争型の電力事業者が自治体新電力とアライアンスを組むようになったが、電力自由化競争の開始時点では考えられず、この案件を東京ガスに引き継げなかった。

しかし成田市・香取市の両市関係者はここまでの検討を無駄にせず、自らBG(バランシンググループ)事業者を公募し、2016年7月、前述の成田香取エネルギー設立に至った。

我々の目論見が早すぎたとも言えるが、このインキュベーション過程を通じて、筆者はガス事業者でありながら地域新電力に関する多くを学び、多くの気づきも得た。地域エネルギー事業を発展させていく上での多くの論点があるので、いずれ、ポイントを紹介していきたい。

地域新電力が直面する2つの課題とは

一般的に、地域新電力の事業スキームは下図のようになる。

このスキームの中で、地域新電力が事業性を保つカギがいくつかある。そのうちの代表的なふたつを取り上げてみる。

まずひとつは電源調達のあり方である。地産地消を目指すからには、当然、地域由来の電源の確保がカギになる。自治体として手に入れやすい再エネ電源の代表格は清掃工場のゴミ発電による電源だ。「成田香取エネルギー」をはじめ稼働している自治体新電力の多くは「ゴミ発電由来」である。
ただし、ゴミ発電も東京都くらいの規模にならないと安定電源とはならず、事業の安定的発展のためには、さらなる再エネ電源開発が必要となる。

むろん市場調達でもよいが、地域経済に貢献する地産地消型のエネルギー事業を志向するならば、「地産」が重要になる。今後、地方圏には再エネ電源を求めて多くの競争型エネルギー事業者が乱入してくる。その中で、どこまで地産電源の確保ができるかが課題となる。

ふたつ目のカギは売電先を拡大する問題である。一般に地域新電力では、専従の営業要員を確保することが難しい。ゆえに自治体施設や地元企業といった、特定少数の高圧需要家に絞って営業することが一般的だが、ここでふたつの課題が生まれる。

ひとつは既存電力をはじめとする、他の電力事業者との厳しい価格競争に打ち勝たねばならないこと。もうひとつは高圧ほど競争が厳しくないが裾野が広い低圧需要家(一般家庭、商店等)に営業できる体制を整備することである。

前者では、奈良県の「いこま市民パワー」や大阪府の「泉佐野電力」が既存大手電力の攻勢にあって苦境に立たされた事例が有名になったが、地元の高圧需要家を既存大手電力に奪回されて苦しんでいる地域新電力は意外に多いのではないか。
ただ、最近は「岡崎さくら電力」のように、自治体(岡崎市)と地元大手電力(中部電力)、地元有力新電力(東邦ガス)等が共同出資し、再エネの地産地消を促進する事例も出てきた。ただ、なぜ中部電力や東邦ガスのような競争型の電力事業者が自身の需要家を譲ってまで地産地消型の電力小売事業を支援するかは筆者には不明である。よいアライアンスではあるが、その後の発展には注視が必要である。

後者の問題は、地域新電力が発展できない大きな壁となっている。とりわけ市民電力を標榜する自治体新電力が市民レベルの「地消」まで行きつけないのは、市民に購入先をスイッチしてもらうだけのパワーを持ち合わせられないからである。

この点から、自治体新電力のパートナーにはすでに自社事業で顧客との接点や顧客アカウントを持つガス事業者やCATV事業者がふさわしい。現に山陰の「ローカルエナジー」や「とっとり市民電力」など市民需要家を獲得できている自治体新電力では、彼らが担い手となっている。
この担い手問題をどうクリアするかが、自治体新電力をはじめとする地域新電力が発展できるかのカギとなる。

プロフィール

角田 憲司(つのだ けんじ)

エネルギー事業コンサルタント・中小企業診断士
1978年東京ガスに入社し、家庭用営業・マーケティング部門、熱量変更部門、卸営業部門等に従事。2011年千葉ガス社長、2016年日本ガス協会地方支援担当理事を経て、2020年4月よりフリーとなり、都市ガス・LPガス業界に向けた各種情報の発信やセミナー講師、個社コンサルティング等を行っている。愛知県出身。


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