水素需要の拡大に向け、政府やトヨタなどが期待するのがFCトラックだ。
貨物を運ぶ大型トラックなどの商用車におけるFC化は、EUやドイツ、フランスなどが発表した水素戦略においても、高い期待が寄せられている。
10トン以上の荷物を積んで長距離輸送する大型トラックになると、最大積載時の総重量は20トンを超える。そのためEVで仮に東京〜大阪間の500キロメートルの航続距離を確保しようとすれば、約4トンもの蓄電池を搭載せねばならず、これでは積載量を減らさざるをえない。
そこで大型トラックは航続距離が伸ばしやすく、水素充填を短時間でできるFC化が注目を集めているわけだ。政府もFCトラックにおける国内の潜在水素需要は年間600万トンにのぼると試算する。今の水素需要が200トンであるだけに、その3万倍となる。しかも、世界のFCトラック市場は2050年に最大300兆円(1,500万台)になると予測する。
FCトラック分野は、トヨタとその子会社の日野自動車が25トン級の大型FCトラックの開発を進めるなど、世界をリードしている。2022年度春にも物流事業者とともに実証を実施し、アメリカで2024年、国内では2020年代半ばでの量産を目指す。
トヨタと日野自動車が開発する25トンFCトラック
出典:日野自動車
ホンダといすゞはFCトラックの開発に向けた共同研究契約を締結した。
一方、海外勢もFCトラック開発に取り組む。ボルボ(スウェーデン)とダイムラー・トラック(独)は燃料電池の大量生産に向け、合弁会社の設立に合意。ダイムラー・トラックはFCトラックの試験走行を2023年に計画する。また世界大手の一角、マン・トラックバス(独)も2023〜2024年にFCトラックの試験走行を予定している。
政府は、FCトラックなどの普及を通じて、水素需要を創出し、その後、水素発電や鉄鋼、化学分野などでの水素転換を図るという絵を描く。またFCトラックの量産が進めば、規模の経済が働き、車載用FCシステムのコスト低減も実現でき、FCVの価格低減にもつながる。
トヨタが推すFCVの普及は、FCトラックの量産にかかっているのかもしれない。
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