2050年までに「カーボンニュートラル」を目指すことを表明した日本政府。民間企業レベルでも温暖化ガスの排出抑制に向けた新事業の開発や方向転換がすでに始まっている。
発電所や工場などから排出されるCO2を回収し、燃料や化学品などに再利用する「カーボンリサイクル」も注目を集めている。三菱ケミカル、住友化学、旭化成といった大手化学メーカーもCO2の資源化に前向きだ。
製造時にCO2排出が避けられないセメント大手も、回収したCO2をコンクリートやセメントの原料に活用しようと、カーボンリサイクルの技術開発に取り組んでいる。
電力会社はCO2排出が多い石炭火力に代わって、燃焼時にCO2を排出しないアンモニア発電の実用化を進めている。東京電力と中部電力が火力を統合した合弁会社JERAは、2021年度から愛知県にある碧南火力発電所において、アンモニアを20%混焼した大規模実証をはじめた。
船舶分野の脱炭素に向けては、燃焼時にCO2を排出しない水素を燃料とした船用エンジンなどの開発が本格化している。航空分野でも、水素エンジンの開発はじめ、廃油や藻類などを原料とした次世代航空機燃料への転換を急いでいる。SAF(持続可能な航空燃料)と呼ばれる次世代燃料に切り替えると、従来のジェット燃料に比べてCO2排出量を最大9割削減できるといわれている。
2017年度の温室効果ガス排出量のデータは前述の通りだったが、カーボンニュートラルの実現に向け、官民一体となって動き出した今後の技術開発等に注目していきたい。
(Text:東條英里)
参照:
環境省・経済産業省
地球温暖化対策の推進に関する法律に基づく 温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度による 平成 29(2017)年度温室効果ガス排出量の集計結果
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