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経産省、鉄鋼業脱炭素へロードマップ公開 日本製鉄、JFE、神戸製鋼は新技術に期待し、独自の挑戦

経産省、鉄鋼業脱炭素へロードマップ公開 日本製鉄、JFE、神戸製鋼は新技術に期待し、独自の挑戦

2021年11月02日

経済産業省は10月27日、二酸化炭素(CO2)排出量の多い鉄鋼業界が、どうやって2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするかをまとめたロードマップを公開した。

課題が多い鉄鋼業の脱炭素に対し、経産省が実現へのロードマップを提示

2030年までは省エネや高効率化による低炭素技術を軸にして排出量の30%削減を目指し、2030~40年では更なる省エネ・高効率化に加え、水素活用還元プロセス技術(COURSE50)などの新技術を導入。2040~50年にかけては、水素供給インフラや「二酸化炭素回収・貯留」技術(CCUS)が整備されることを前提に、水素還元製鉄などの脱炭素技術を導入してカーボンニュートラルを実現するというのが、経産省の描くロードマップの概要だ。


経済産業省「『トランジションファイナンス』に関する鉄鋼分野における技術ロードマップ」より

このロードマップは、鉄鋼業全体としての削減イメージであるとされており、個々の企業が脱炭素を進めていく際の参考になる。また、脱炭素設備の導入に際して、金融機関が融資判断の基準とするのにも使える。なお、経産省は今後、化学、電力、石油、ガス、製紙・パルプ、セメントの6分野についてもロードマップを作るという。

鉄鋼業は、単に日本国内で最大規模のCO2を排出しているだけでなく、現状、排出ゼロのための代替手段を得ることが技術的・経済的に難しい。加えて、鉄鋼は生活を支えるさまざまな製品に用いられているため、サプライチェーン(供給網)の川上に位置している。今後、排出量の把握・削減を取引先から求められていくことは間違いない。

国外に目を向けても、日本の鉄鋼業はその技術力から高級鋼を製鉄し、世界に向けて輸出してきた。脱炭素への移行が、国際競争力の維持や向上に寄与する観点も踏まえて、今回の技術ロードマップが策定されたという。

鉄鋼業から排出されるCO2量は産業全体の40%を占め、削減が急務

鉄鋼業によるCO2排出量は非常に多い。2019年度の国内における、産業部門のCO2排出量の40%、国全体においても14%を排出している。その最大原因は、鉄鉱石(酸化鉄)から金属の鉄にするにあたって、石炭を用いて酸素を取り除く(還元する)という点にある。

2008年にスタートしたCOURSE50は、石炭の代わりに水素を使う水素還元製鉄や、CO2の分離回収などによってCO2排出を削減するという取り組みで、30%削減が目標となっている。2016年から行われている実証高炉による実験では、石炭の一部を水素に置き換えることで、10%程度のCO2削減ができることを世界で初めて検証させた。

CO2排出30%削減を目標とした低炭素技術であるCOURSE50だが、将来はSuper-COURSEへと発展させ、さらなる技術開発によってカーボンゼロを目指す。そのほか、石炭ではなく天然ガスを利用する直接還元法の技術革新によってもCO2削減が可能になるとされており、別角度からもカーボンニュートラルを目指す姿勢だ。

とはいえ、現時点において上記における技術革新は、実用性を伴って確立されたわけではない。ロードマップにおいても「カーボンニュートラルへの円滑な移行を促進するためには、①前人未到の技術開発を複線的アプローチによって実現し、カーボンニュートラルを目指すとともに②直接的な研究開発・実証・設備投資等に加えて、 間接的にカーボンニュートラルに貢献する活動・取組に対しても、トランジション・ファイナンスによる資金供給が重要となる」とされている。

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高橋洋行
高橋洋行

2021年10月よりEnergyShift編集部に所属。過去に中高年向け健康雑誌や教育業界誌の編纂に携わる。現在は、エネルギー業界の動向をつかむため、日々奮闘中。

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