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岸田新総裁の脱炭素・エネルギー観を分析 菅政権の功績も振り返る

2021年09月29日

岸田内閣が直面するであろう数々の脱炭素スケジュールとは

まず、盛沢山なのが10月だ。エネルギー基本計画、地球温暖化対策計画、長期戦略と脱炭素に大きく関係する3つの政策文書の閣議決定が10月中に予定されている。

11月1日~12日には気候変動について国際社会が協議するCOP26が予定をされている。去年のCOPがコロナで延期されたこともあり、各国の脱炭素アピールはここに集中することになるだろう。

その前にもちろん、衆議院選挙がある。この結果ばかりはなんとも分からないが、自民党・公明党の連立与党がここを乗り切ったときには、すぐにこのCOPがある。COPには通常大統領級はいかないのだが、今年はイギリスでの開催だ。しかも去年開催されなかったという中でのCOPであるため、元首級が集まる可能性もまったくゼロではない。

ちなみに、パリ協定が採択されたときのCOPには、オバマ大統領はじめ元首級が集まり、安倍総理も出席している。

ただ、それはパリ協定という歴史的合意があるから、というのがあったためであり、今回は何か歴史的な合意があるわけではない。ただし、バイデン大統領が選挙に勝った時に、イギリスのジョンソン首相が、COP26への招待を伝えており、可能性はゼロではない。

バイデン大統領が出席するのなら、岸田氏もCOPに出るだろう。そこでは何かしら、脱炭素土産をもっていかないといけない流れになる。

また、COPにいけば、そこで、岸田氏は変わるはずだ。

「岸田内閣、脱炭素とは何かを知る」

といったところだろうか。


自民党公式Youtubeチャンネルより

COPの前には、G20サミットが10月30日〜31日の日程で開催される。

ここでも気候変動・エネルギーは大きなテーマになるのも見えている。米中が両方入る枠組みで、後日、解説するが、中国はアメリカに外交的には脱炭素で譲歩をさせられているので、ここは日本の、いや岸田氏の予想を上回る議論が行われることが予想される。

その流れで、日米首脳会談も行われるだろうから、実現したら、脱炭素文脈での協力、中国包囲網形成、この辺りもアメリカから突きつけられるだろう。

これが当座のスケジュールになる。否が応でも、10月、11月と脱炭素に向き合わないといけないスケジュールが待っており、そこでどこまで認識が変わり、発言に現れるのか。

岸田次期"総理"。筆者自身、外務省時代にお仕えもし、何せ高校も同窓などのご縁もあり、また仕事でも密接に携わったことのある方だ。堅実で、落ち着いて物事を考えられるタイプの方であり、そして、しっかり周りの言うことを聞くタイプの方でもある。この点に関しては、今日のスピーチでも述べられていた。

だからこそ、発言は攻めずに慎重を期す。これまでの発言との整合性もかなり重視されることを考えれば、認識が新たになっても、すぐに大きな発言の変更になるとは思えないが、ただ、政策面には現れてくるのではないか。しっかり説明を聞き、ロジカルに考える方だからこそ、そして、政策をしっかり理解され、全体像も見えるからこそ、脱炭素については、必ず、どこかのタイミングで気付かれ、そして、国際的な潮流と国内の特に利権周りのところとのギャップについても気付かれるタイミングが来ると思っている。

そこも含めて、個人的には期待したい。

今回はこの一言でまとめたいと思う。

『菅政権が残した脱炭素の置き土産 岸田次期政権もいずれその重要性に気づくだろう』

前田雄大
前田雄大

YouTubeチャンネルはこちら→ https://www.youtube.com/channel/UCpRy1jSzRpfPuW3-50SxQIg 講演・出演依頼はこちら→ https://energy-shift.com/contact 2007年外務省入省。入省後、開発協力、原子力、官房業務等を経験した後、2017年から2019年までの間に気候変動を担当し、G20大阪サミットにおける気候変動部分の首脳宣言の起草、各国調整を担い、宣言の採択に大きく貢献。また、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略をはじめとする各種国家戦略の調整も担当。 こうした外交の現場を通じ、国際的な気候変動・エネルギーに関するダイナミズムを実感するとともに、日本がその潮流に置いていかれるのではないかとの危機感から、自らの手で日本のエネルギーシフトを実現すべく、afterFIT社へ入社。また、日本経済研究センターと日本経済新聞社が共同で立ち上げた中堅・若手世代による政策提言機関である富士山会合ヤング・フォーラムのフェローとしても現在活動中。 プライベートでは、アメリカ留学時代にはアメリカを深く知るべく米国50州すべてを踏破する行動派。座右の銘は「おもしろくこともなき世をおもしろく」。週末は群馬県の自宅(ルーフトップはもちろん太陽光)で有機栽培に勤しんでいる自然派でもある。学生時代は東京大学warriorsのディフェンスラインマンとして甲子園ボウル出場を目指して日々邁進。その時は夢叶わずも、いまは、afterFITから日本社会を下支えるべく邁進し、今度こそ渾身のタッチダウンを決めると意気込んでいる。

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