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Volta Charging、Amazonも採用した、EV充電器を広告スペースに変えたアイディア企業

Volta Charging、Amazonも採用した、EV充電器を広告スペースに変えたアイディア企業

2021/09/15

2021年6月から7月にかけて、米国のEV関連スタートアップの上場が相次いだ。米国EV上場特集の3回目となる今回は、とりわけユニークなVolta Chargingを紹介する。EV充電器を広告スペースとして活用することで、全米トップクラスの稼働率を誇っている。実際に、どのようなビジネスモデルなのか、また日本におけるEV充電器の普及のヒントになるのか、そうした点も含めて紹介していく。

デジタルサイネージ×EV充電器

Volta ChargingのEV充電器がどういうものかといえば、いわゆるデジタルサイネージにEV充電機能がついたものという表現が適当ではないかと思う。EV充電器の本体には、大型のディスプレイが配されている。そこにユーザーの興味を引く広告を配信し、稼働率アップを促すという訳だ。

広告を配信するといっても、ただ紙芝居のように表示させるだけではない。天気によって背景を変えたり、別のモバイルコンテンツとコラボレートし、特別なサービスやアイテムを獲得できるスポットにしたりもできる。

食料品店なら、その店で売られている商品を活用したレシピを表示することもできるし、映画館なら予告編を流したりもできる。また、今であれば、マスクの着用を促すようなメッセージを配信することも可能だ。

EV充電器そのものは黒を基調としたスタイリッシュなデザイン。正面に55インチのディスプレイがあり、側面から充電ケーブルが伸びている。一見するとシンプルなディスプレイのようにも見える。DC(直流)の急速充電タイプ、レベル2の普通充電(200V、80A相当)タイプ、ディスプレイのない柱状タイプの3種類がラインナップされている。


サイネージがついた充電器 同社ウェブサイトより

エンドユーザーの充電は無料?!

Volta Chargingは、全米の大都市圏を中心に1,900ヶ所を超える充電ステーションを展開している。そのうち西海岸が最も多く、カリフォルニア州近郊には約600ヶ所のステーションがある。

同社のメインとなる顧客は、広告主や、実際に充電器を設置する店舗などだ。設置場所の店舗などが広告主となることもある。EV充電ネットワークを展開する企業が、広告主のメディア戦略も手掛けるというのは、同社ならではの強みだ。

驚くことに、Volta Chargingのビジネスモデルでは、広告主や設置店舗などから費用を回収するため、一般のエンドユーザーは無料で充電ができるようになっている。多くの企業にとって、環境にやさしいイメージが強いEV充電器への広告掲載はよい宣伝になるだろう。実にユニークなビジネスモデルだ。

同社のEV充電器は、最近では、Amazonがカリフォルニアにオープンした生鮮食品の実店舗Amazon Freshで採用された。また、同じカリフォルニア南部の大手電力サザン・カリフォルニア・エジソン(SCE)も広告主として契約し、ショッピングセンターの充電器に広告を掲載するようになった。SCEは、供給エリアの中でも自社の勢力が弱いエリアにおけるフォローアップとして、このような広告掲載を始めたとのことだ。


Amazon Freshでのサイネージ 広告主はBloomberg 同社ウェブサイトより

今後はネットワークソリューションも強化

2021年8月27日、Volta Chargingはニューヨーク証券取引所に上場したのだが、その1週間ほど前に「PredictEV」という新製品を発表した。これは充電器のようなハードではなく、AIを使ったソリューションだ。大手電力サザン・カンパニーとともに開発してきた製品である。

「PredictEV」は、EV充電ネットワークを管理するソフトウェアで、もともと自社のネットワーク運用のために開発されたが、それを今回、製品化したということだ。ユーザーは、個別のニーズに応じた適切な充電オプションなどについて、通知を受けることができるようになっている。Fast Companyの2021年のWorld Changing Ideas Awardsにおいてファイナリストにも選出されている

今後、電力会社や公的機関、コンサルタントなどを対象に販売を強化するとみられる。デジタルサイネージ付きのハードウェアと異なり、EV充電ネットワーク各社がすでに展開しているソフトウェアにおいて、どこまで強みを発揮できるかが注目される。


2021年8月27日、Volta Chargingの上場 同社ウェブサイトより

充電スタートアップの上場ラッシュを経て

2021年夏は、米国のEV充電スタートアップの上場が続き、市場からの期待感の大きさをひしひしと感じた。EV充電器は、EVの普及を支えるインフラであると同時に、エネルギーマネジメントにおける役割も大きい。

だからこそ各社はソフトウェア開発に力を入れ、発展性のあるマネジメントを強化している。いかに時間をかけずに充電できるかというハード側の機能はもちろん、系統への負荷の軽減や充電コストの最適化、V2HやV2Gといった付加価値を追求している。

日本でも、近い将来こうした企業が生まれてくるだろう。今は、EV充電器といえば機器メーカーの印象が強いが、米国の状況を見ていると、むしろネットワークに関するさまざまなサービスを展開する事業者の誕生に期待を寄せたい。また、広告と組み合わせたビジネスモデルは、ぜひとも日本でも展開していただきたいと思う。そのことによって、EVの経済性が高まることを期待したい。

山下幸恵
山下幸恵

九州大学文学部卒。九州電力グループ会社にて大型変圧器・住宅電化機器の販売に従事。新電力ベンチャーにおいて、ディマンドリスポンスやエネルギーソリューションの提案を行う。自治体および大手商社と地域新電力の立ち上げを主管。福岡市にて、気候変動や地球温暖化、省エネについての市民向けセミナーを実施。2019年よりエネルギーライターとして活躍中。