2021年は2050年カーボンニュートラルが世界的に認知された1年だった。必ずしも各国政府が具体的な提案を行なったわけではないが、世界は確実に動いているといえよう。また、エネルギー業界も大きな変動を見せ、主役の交代を印象付けたのではないだろうか。では、2022年の脱炭素はどのように進展するのだろうか。
あけましておめでとうございます。2022年がスタートしました。今年も「EnergyShift」をよろしくお願いします。
さて、2022年の脱炭素においてもっとも注目されるのは、オフサイトのコーポレートPPAです。なぜ注目されるのか、順を追って説明します。
PPAというのは発電所と企業による電力供給の契約です。屋根や敷地内に太陽光発電を設置するオンサイトPPAかこれまでかなり設置されてきましたが、送電線を使って電力供給するオフサイトPPAはあまり行われてきませんでした。その理由は託送料金というコストがかかることや、需給管理が必要なこと、再エネ賦課金(FIT電源に対する交付金の原資で、2021年度は1kWhあたり3.36円)がかかることなど、採算のとれる事業にするのが難しかったからです。
しかし、オンサイトと同様に自家消費であれば賦課金が免除されます。そのための自己託送要件が緩和され、自家消費モデルのオフサイトPPAがやりやすくなります。また、FIP制度がスタートしますが、これもオフサイトPPAに適用できます。自家消費モデルではない場合は、FIP電源としてプレミアムの交付金を受け取ることができます。この2つによって、オフサイトPPAを実施する環境が整備されたといえるでしょう。
ただし、これはあくまでフィジカルPPA(企業から直接電力供給を受ける契約)であり、非化石証書と電力供給を分けたバーチャルPPA(卸電力市場を介し電力供給を受ける契約)については、まだ普及に時間がかかると思います。
出典:自然エネルギー財団 コーポレートPPA 実践ガイドブック
とはいえ、2030年にむけて再エネを拡大していくためには、当面は開発リードタイムの短い太陽光発電がメインとなってきます。PPAに限らず、政府はさらなる普及拡大策に頭を悩ませているというのが実情です。どのような事業モデルが可能なのか、官民連携をとって探っていくことが必要ですし、太陽光発電事業者もどんどん知恵を出していくことが求められています。
2030年以降の再エネの主役と考えられているのが、洋上風力発電です。すでに、政府は青森県、秋田県、山形県、新潟県、千葉県、長崎県などで促進区域を指定しており、さらに区域は拡大していく見込みです。また、こうした区域での開発にあたっては、セントラル方式が検討されています。これは、政府が事業性の調査を実施した上で、開発事業者を入札によって決めるというものです。
洋上風力発電については、すでに国内外のさまざまな企業が参入しています。東京電力リニューアブルパワーをはじめ、関西電力、中部電力、東北電力、JERA、Jパワーなどの旧一般電気事業者やその関連会社、東京ガスや大阪ガス、ENEOS、コスモエコパワーといった在来の石油・ガス会社、三菱商事や住友商事などの商社、そしてレノバなどの新興企業、さらにオーステッドなど外資も開発主体となっています。案件の規模が大きいことから、複数の企業が共同で案件に参加する形をとっています。
2022年度はさらに多くの企業が参入してくると予想されますし、とりわけ外資のさらなる参入が注目されるでしょう。
開発のリードタイムこそ長いのですが、FITの買取り単価は高く、長期的な投資としては魅力ある案件だと思います。また、石炭火力発電にとって替わる発電インフラともなるため、エネルギーを供給していく事業者にとっては、参加しない理由はありません。
ただし、案件として活発化してくるのは、着床式の洋上風力発電に限られるでしょう。
日本風力発電協会は日本近海での着床式風力発電のポテンシャルを90GWだと試算しています。そして官民で作成した「洋上風力産業ビジョン」では2040年までに30~45GWを開発するとしています。ということは、コストがかかる浮体式洋上風力の設置を急ぐ理由はなく、当分は着床式の開発が進むということです。もちろん、将来を見据えれば浮体式の技術開発は必要ですが。
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