地熱・中小水力・バイオマス発電 地域活用の要件が緩和される 第65回「調達価格等算定委員会」 | EnergyShift

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地熱・中小水力・バイオマス発電 地域活用の要件が緩和される 第65回「調達価格等算定委員会」

地熱・中小水力・バイオマス発電 地域活用の要件が緩和される 第65回「調達価格等算定委員会」

2021年01月21日

審議会ウィークリートピック

2022年4月以降、一定規模未満の水力・地熱・バイオマス発電のFIT認定においては、「地域活用要件」が設定される。すでに2019年の調達価格等算定委員会において資源エネルギー庁事務局案が提示されていたが、第65回調達価格等算定委員会(2020年12月23日開催)において一定の見直し、要件緩和案が示された。今回は、地域活用要件の見直し、および発電種別のFIP適用範囲等についてお伝えしたい。

地熱・中小水力・バイオマス発電に関する地域活用要件

競争電源として速やかなコストダウン・市場統合が期待される大規模太陽光・風力発電と異なり、小規模な地熱・中小水力・バイオマス発電(以下、3電源という)は、コスト削減の道筋が明確化しておらず、FIT制度からの自立も中長期的な目標として位置付けられている。

3電源に対しては、エネルギーの地産地消やレジリエンスの強化に活用することが大きく期待されているとはいえ、コストを軽視してよいわけではない。よって、価格低減・導入量拡大・電力市場への統合という方向性に向けて、地域活用要件としては以下2つの方針が示されている。

FIP制度の適用対象拡大を念頭においた制度設計であること
いたずらにコスト増をもたらさないものであること

なお地域活用要件には「自家消費型」「地域一体型」といった2つのカテゴリーがある。

方針に関しては、3電源はほぼ計画的に発電できる(発電予測がしやすい)、出力を調整しやすい、という優れた特徴を持つため、FIP制度への適正が高いと考えられている。

方針に関しては、無理に電力を自家消費するなど、過度に厳しい地域活用要件を求めることはさらなるコストアップ要因となり得るため、これは避けるべきと考えられる。

地域活用要件「自家消費型」カテゴリー

事業所等の屋根に設置することにより自家消費が相対的に容易な太陽光と比較すると、例えば小水力発電は、需要家が存在しない山間部に発電所だけが設置されることにより、純粋な自家消費はほぼ不可能となる。また家畜糞尿を活用したバイオマス発電は家畜のそばに発電所を設置することが費用効率的であるなど、3電源は立地制約が大きいという特徴がある。

よって3電源については、電力・熱を地域内で面的に消費することも、自家消費型カテゴリーとして認めることとされた。具体的には、3電源に対する新たな「自家消費型・地域消費型」の地域活用要件としては、以下のいずれかの要件を満たすことを必須とした。

発電量の3割以上を自家消費するもの
発電された電力の3割以上が、再エネ電気特定卸供給先の小売電気事業者を通じて、当該発電設備が所在する都道府県内へ供給されるもの
再エネ発電設備により産出された熱を、常時利用する構造を有するもの。かつ、発電量の1割以上を自家消費するもの

今回の要件緩和のかなめは、であろう。はいわゆる地域新電力や自治体新電力であれば、電力小売の大半を同一県内でおこなっていることが一般的であるため、3割という数値はほぼ問題とならないと予想される。

ただし最大の問題は、現時点、大半の自治体には地域新電力や自治体新電力が存在しないことであり、これは民間発電事業者側の努力のみでは解決が困難な問題である。よって現実的には、多くの3電源は後述する「地域一体型」の適用を志向すると考えられる。

なお小売電気事業者には、新電力以外に旧一般電気事業者も含まれる。北海道電力や北陸電力等であれば3割基準を満たし得ると考えられるが、再エネ電気特定卸供給は売買双方の合意が必要であるため、北海道電力等がこれに応じるかどうかは不明である。

仮に無条件に応じるならば、北海道エリアのFIT電源はすべて要件②により新FIT認定となり得るため、要件定義の明確化が必要であろう。

地域活用要件「地域一体型」カテゴリー

レジリエンス強化の観点から、災害時に熱や電気を活用することを自治体の防災計画等に位置付けることを、地域活用要件として定めることは昨年の時点で決定済みである。

発電事業者からは、この「防災計画等」の適用範囲や計画主体の拡大が要望されていた

第65回委員会で提示された新しい要件は以下のとおりである。

再エネ発電設備で発電された電気・産出された熱を災害時に活用することを、自治体の防災計画等に位置付けること
自治体が自ら事業を実施するもの、又は自治体が事業に直接出資するもの

①については、再エネ発電設備が所在する地方公共団体の名義による取り決め(第三者との共同名義含む)において、災害時を含め、当該発電設備による電気・熱を当該地方公共団体内へ供給することが位置付けられているもの、という要件である。

これには農山漁村再生可能エネルギー法に基づく基本計画等も含まれると考えられるが、いずれにせよ災害時における電気の具体的な供給体制を整備することが不可欠となる。

②については出資額の多寡は問わないものの、自治体の主体的な参画がおこなわれることが大前提であるとされた。そのうえで、発電事業への出資だけではなく、電気供給先の小売電気事業者への出資も地域一体型として認めることとした。

具体的には、

②-1:地方公共団体が自ら発電事業を実施または直接出資する発電事業
②-2:地方公共団体が自ら小売電気事業を実施または直接出資する小売電気事業者(または登録特定送配電事業者)に対して、再エネ発電設備による電気を再エネ電気特定卸供給により供給するもの

いずれかの要件を満たすこととした。

自治体出資新電力はまだ少数であるため、これも民間発電事業者側の努力のみでは解決が困難な制約である。よって現実的には、多くの3電源は自治体の防災計画等の適用を志向するものと予想される。

出資という点だけを見れば、東京都が東京電力に、大阪市等が関西電力に出資しているような、自治体による旧一般電気事業者への出資例は多数存在する。まずは自治体の主体的な参画が大前提であることを踏まえ、脱法行為のようなものが起こらぬよう、認定段階で確認がなされる予定である。

なお沖縄・離島においては、3電源について地域活用要件を求めないと補足されている。

今回決定される地域活用要件は2022年度・2023年度は継続するが、今後、必要に応じて見直される予定である。

以降では、3電源それぞれの2022年度以降の取り扱いやFIP制度の適用範囲等について、紙幅の都合上、簡潔に報告することをご容赦願いたい。

地熱発電 2022年度以降の取り扱い

地熱発電はすでに2019年度の委員会取りまとめにおいて、2022年度にFIT地域活用電源となりうる最大規模として、2,000kW未満とする案が示されていた。

あらためて定期報告コストデータを確認すると、1,000kWを超えると低コストでの設置が可能となることが判明した。また発電出力予測が比較的容易な地熱発電は早期の市場統合が期待されることから、2022年度・2023年度にFIT地域活用電源となりうる最大規模を、1,000kW未満に切り下げることとした。すなわち、1,000kW以上の新規電源はFIP制度のみを選択可能となる。当面、入札制度の予定はない。

2022年度・2023年度における地熱発電のFIP/FIT制度の対象


出所:第65回調達価格等算定委員会

50kW~1,000kWについてはFIT(地域活用要件)とFIPを選択可能であり、従来のFIT制度対象電源がFIPに移行することも可能とした。地元調整、関係法令の手続き等を勘案し、事業者に予見性を与える観点から複数年度3年間(2021~2023年度)のFIT調達価格・FIP基準価格を示すこととしている。

2022年・2023年度についてはいずれの規模・区分においても、2021年度の調達価格における各想定値を用いることとした。

中小水力発電 2022年度以降の取り扱い

中小水力発電はすでに2019年度の委員会取りまとめにおいて、2022年度にFIT地域活用電源となりうる最大規模として、1,000kW未満とする案が示されていた。

定期報告コストデータを確認すると、1,000kWを超えると低コストでの事業実施が可能という傾向は変わっていない。

発電出力予測が比較的容易な中小水力発電は早期の市場統合が期待されることから、2022年度・2023年度にFIT地域活用電源となりうる最大規模を、予定どおり1,000kW未満とした。すなわち、1,000kW以上の新規電源はFIP制度のみを選択可能となる。当面、入札制度の予定はない。

2022年度・2023年度における中小水力発電のFIP/FIT制度の対象


出所:第65回調達価格等算定委員会

50kW~1,000kWについてはFIT(地域活用要件)とFIPを選択可能であり、従来のFIT制度対象電源がFIPに移行することも可能とした。地元調整、関係法令の手続き等を勘案し、事業者に予見性を与える観点から複数年度3年間(2021~2023年度)のFIT調達価格・FIP基準価格を示すこととしている。

200kW未満、200~1,000kW未満については2022年・2023年度ではいずれの規模・区分においても、2021年度の調達価格における各想定値を用いることとした。

1,000~5,000kW未満および5,000kW~30,000kW未満については、2023年度以降は想定値の見直しを含め、来年度以降の本委員会であらためて検討することとした。

バイオマス発電 2021年度の取り扱い 

バイオマス発電については現時点調達価格が示されていない2021年度について、まず取り扱いを示す必要がある。

一般木質等(10,000kW以上)および液体燃料(全規模)については、従来通り2021年度も入札制の対象とした。上限価格は事前非公表とする。入札対象範囲外である一般木質等(10,000kW未満)については、2020年度の調達価格における各想定値を用いることとした。

新規燃料の取り扱いに関しては、ライフサイクルGHG排出量を含めた持続可能性基準について引き続き検討中であることを踏まえ、2021年度についてはバイオマス発電の新規燃料を認めないこととした。

バイオマス発電 2022年度以降の取り扱い

バイオマス発電はすでに2019年度の委員会取りまとめにおいて、2022年度にFIT地域活用電源となりうる最大規模として、10,000kW未満とする案が示されていた。

バイオマス発電は安定的な発電により出力予測が比較的容易であるほか、出力調整も可能であるため、最もFIPに適合しやすい電源であると考えられている。よって2022年度におけるFIT地域活用電源となりうる最大規模を、予定どおり10,000kW未満とした。すなわち、10,000kW以上の新規電源はFIP制度のみを選択可能となる。

一般木質等10,000kW以上および液体燃料50kW以上の電源はFIPの入札対象となる。

また2023年度以降早期に、FIP制度のみを認める対象規模を1,000kW以上に切り下げることを目指すとされた。

2022年度・2023年度におけるバイオマス発電のFIP/FIT制度の対象


出所:第65回調達価格等算定委員会

50kW~10,000kWについてはFIT(地域活用要件)とFIPを選択可能であり、従来のFIT制度対象電源がFIPに移行することも可能とした。

バイオマス発電については2023年度以降早期に1,000kW以上をFIP制度のみ認めることを前提とするならば、現時点調達価格を示すべきは2022年度分のみであって、2023年度以降の取扱いは、来年度の本委員会にて決定することになった。

2022年ではいずれの規模・区分においても、2021年度の調達価格における各想定値を用いることとした。

 

参照
経産省 第65回 調達価格等算定委員会

梅田あおば
梅田あおば

ライター、ジャーナリスト。専門は、電力・ガス、エネルギー・環境政策、制度など。 https://twitter.com/Aoba_Umeda

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