EUは、域外へのインフラ投資プロジェクト「グローバル・ゲートウェイ」を11月2日にブリュッセルで発表した。2021年から2027年までの投資規模は最大3,000億ユーロ(約39兆円)で、途上国のインフラ整備に投資する。
このインフラ投資には、気候変動、環境保護、サプライチェーンの強化、教育、デジタル化、ヘルスケア、研究、エネルギー等が想定されている。
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は次のようにリリースでコメントした。「COVID-19は、私たちの住む世界が、どのように相互につながっているかを示しました。世界的な復興計画の一環として、私たちはより良く前進するために、世界のつながりを再設計したいと考えています。欧州モデル(グローバル・ゲートウェイ)は、ハードとソフトの両方のインフラ、デジタル、気候とエネルギー、輸送、医療、教育、研究への持続可能な投資、そして公平な競争環境を保証する環境への投資です」。
そして、「私たちは、EUの民主主義的価値観と国際的な規範・基準に沿って、最高の社会的・環境的基準を尊重した、質の高いインフラへのスマートな投資を支援します。グローバル・ゲートウェイ戦略は、欧州が世界とのより弾力的なつながりを構築するためのテンプレートである」と述べた。この「民主主義的価値観と国際的な規範・基準」という箇所は、明示的ではないが、中国の一帯一路を意識していると各メディアは分析している。
文書には「グローバル・ゲートウェイのアプローチ」として、まず挙げられているのが「民主的な価値観と高い基準」「よりよりガバナンスと透明性」「平等なパートナーシップ」だ。これらのアプローチの最大限の重視を融資先の国に求めている。
特に「民主的な価値観と高い水準」では「法の支配を遵守し、高水準の人権、社会権、労働者の権利を守り、国際的なルールや基準から知的財産に至るまでの規範を尊重すること」をパートナー国に求めている。
一方で、中国の一帯一路には不満も出ている。2013年にこの中国の戦略は始まり、今では数十の国が鉄道、港湾などのプロジェクトで参画している。しかし、この一帯一路は債務条件が厳しいことや、環境や建築基準について不十分であるという声も上がる。
今年11月には一帯一路の一環として中国の鉄鋼会社(徳龍鉄鋼)がインドネシアで進めている事業での労働者の人権侵害も問題になった。
文書ではG7にも協力を求めている。「グローバル・ゲートウェイは、G7で開始された活動と連携し、Build Back Better Worldのようなイニシアチブを相互に強化していく」とし、今年6月のG7サミットで合意された一帯一路に対抗する巨額インフラ投資計画を踏まえたものだとしている。また文書では、2018年のEU-アジア連結戦略と、今年締結された「日EU戦略的パートナーシップ協定(SPA)」にも言及している。
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