実は燃料切れ寸前だった!? 11月上旬から大手電力4社のLNG火力、出力低下 この冬の電力は本当に大丈夫なのか | EnergyShift

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実は燃料切れ寸前だった!? 11月上旬から大手電力4社のLNG火力、出力低下 この冬の電力は本当に大丈夫なのか

実は燃料切れ寸前だった!? 11月上旬から大手電力4社のLNG火力、出力低下 この冬の電力は本当に大丈夫なのか

2021年11月25日

今冬の電力不足が懸念される中、11月上旬から中国・九州・北陸・四国電力の大手4社でLNG(液化天然ガス)が在庫切れ寸前となり、燃料制約からLNG火力の出力を大幅に低下させていたことがわかった。相次ぐ石炭火力の故障と気温上昇による需要増が要因だ。経済産業省は燃料在庫の監視を強化するなど対策を急ぐが、専門家からは「燃料制約がこんなにも簡単に起こるなんて衝撃的だ」という意見が出るなど、再び電力がひっ迫するのではないかという不安が広がっている。

大手10電力中4社で燃料制約が発生

北陸電力、中国電力、四国電力、九州電力の4電力において、複数の石炭火力発電所で故障が発生したうえ、10月の気温が高く、冷房使用の増加が重なり、LNGの消費量が増加。在庫切れに陥る可能性があったため、11月4日から10日にかけて、LNG火力や石油火力の出力を大幅に落としている。

燃料制約は中国電力で11月30日までにLNG235.5万kW、石油125万kW、九州電力は11月26日までにLNG262.5万kW、北陸電力は11月22日までにLNG42.4万kW、四国電力は12月20日までにLNG64.6万kW、石油68万kW(11月30日まで)となる見通し。四国電力の燃料制約は12月以降も続く見通しだ。

燃料制約の状況


出典:経済産業省

今回の燃料制約と関連のある足元の停止火力

【中国電力】

発電所燃種出力停止期間
水島2号石炭15.6万kW9/14〜10/28
下関1号石炭17.5万kW11/3〜11/28

【九州電力】

発電所燃種出力停止期間
苓北2号石炭70万kW11/7〜11/14

【電源開発】

発電所燃種出力停止期間
橘湾2号石炭105万kW9/5〜10/15
松浦2号石炭100万kW10/30〜11/4

出典:経済産業省

11月18日に開催された、電力需給の対策などを検討する電力・ガス基本政策小委員会(第41回)で示された。

LNGの追加調達について、中国電力は売主と供給数量の積み増し、配船日の前倒しなどについて協議中。九州電力は12月上旬に追加の船1隻を手配済みだという。一方、北陸電力はLNGタンクが1基しかないうえ、発電所のある港には橋がかかっており、入港可能な船が限定されるため、追加調達は困難だという。タンク1基しか持たない四国電力も、追加調達は難しいとした。

経産省はLNGの在庫量について、11月15日時点でおよそ220万トンと、昨年同時期と比べ約60万トン多く、過去5年でもっとも高い水準だとする。

しかし、この冬の電力需給の見通しは、全国7つのエリアでピーク時の需要に対する電力供給の余力を示す数値が3%台しかなく、過去10年間でもっとも厳しくなる見込みだ。厳しい冬を想定した場合、2022年2月の供給余力(予備率)は、東京電力管内で3.1%と3%ギリギリになっているほか、中部や関西、九州など7つのエリアで3.9%と、極めて厳しい状況になるという。

経産省では、電力4社に対し、今冬に備えLNGの確保を求めるとともに、燃料在庫のモニタリング強化などを急ぐ。だが、LNGは今、追加調達をかけても届くのは2ヶ月先となる。石油のような備蓄も難しい。また、多くの老朽火力を抱える中、今回のような発電所トラブルが重なれば、突発的にLNG消費量が増え、在庫切れ回避から、出力を落とさざるをえない事態に陥ってしまう。市場からは「今冬の電力需給は本当に大丈夫なのか」と危惧する声があがっている。

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藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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