実は燃料切れ寸前だった!? 11月上旬から大手電力4社のLNG火力、出力低下 この冬の電力は本当に大丈夫なのか | EnergyShift

脱炭素を面白く

EnergyShift(エナジーシフト)
EnergyShift(エナジーシフト)

実は燃料切れ寸前だった!? 11月上旬から大手電力4社のLNG火力、出力低下 この冬の電力は本当に大丈夫なのか

2021年11月25日

燃料制約の発生はイレギュラー? それとも頻発していたのか?

今冬の電力ひっ迫回避に向けさまざまな対策を検討してきた小委員会だけに、「昨冬のような燃料制約が起こることは極めて例外的な事象であり、こんなにも簡単に起きるとは衝撃的だ」(松村敏弘 東京大学社会科学研究所教授)といった意見が出された。松村委員は続けて、「頻繁に発生するのであれば前提が変わってくる。過去にも起こっていたのか」と指摘。同じ意見は複数の委員から出され、「燃料制約が例外的ではなく、過去、何度も起こっていたのならば、特段の対策を取らなければ、2022年以降も起こりうる」とし、小委員会に出席した電力4社に対し、明らかにするよう求めた。

中国電力は、「大型石炭火力の脱落は長いもので1ヶ月近くかかる。その間、LNGの燃料消費が進むので、当然、次の配船まで燃料がもたないということは基本的にありえる」と述べるにとどめた。

九州電力は、「2020年12月から2021年1月にかけて2基のLNG火力で燃料制約をかけた。また2017年12月末、そして2012年2月にも燃料制約をかけた」と過去にも発生していたことを明らかにした。

北陸電力は「消費の変動分を調整する中であった」と述べ、四国電力からは具的的な言及はなかったが、少なくとも今回、大手10電力のうち4社で燃料制約があり、過去にも数件発生していた状況が明らかとなった。


中国電力のLNG柳井発電所 TT mk2, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commonsより

ぜい弱性を解消しなければ、電力不足は今後も続く

世界的なLNG不足が深刻化する中、日本でも今冬、電力ひっ迫が起こりうる可能性が改めて浮上した。さらに今回の燃料制約は、大手電力10社がおこなう、電源の安定稼働や燃料確保に向けた不断の努力だけではいずれ限界に来ることを露呈したのかもしれない。委員のひとりである松橋隆治 東京大学大学院工学系研究科教授は「天然ガスが国家の基幹エネルギーになっている現状を鑑みると、大手電力会社に価格、量すべてのリスクを背負わせ、国民に影響が出ないようにしてくれ、というのはかなり厳しい要請ではないか。LNGを石油並みに備蓄することは難しいが、国が何らかの形で乗り出さなければ根本的に解決しない」と指摘した。

寒波は毎年のように来る。燃料を輸入に頼る日本にとって、冬季を見込んだ燃料調達は欠かせない。

その一方で、脱炭素社会の実現に向けては、再生可能エネルギーの主力電源化とともに、火力発電の比率の引き下げは急務だ。だが、今回の事象によって、石炭など火力発電の旧廃止が過度に進めば、電力の安定供給に支障をきたすという、日本の電力構成のぜい弱性が改めて浮き彫りとなった。一定の発電量を維持する安定電源として、原子力をどう位置づけるのか、という課題もある。昨冬の電力ひっ迫、そして今回の事例を教訓に、今一度、電力の安定供給と脱炭素の両立を議論する必要があるのではないか。

藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

エネルギーの最新記事