-再エネについておうかがいします。これまで日本では固定価格買取制度(FIT)を通じて再エネが急拡大してきました。しかし、事実上FITが終わる中で、これまで以上に再エネを拡大していくことが求められています。今後どういった政策や対策があればいいか提案はありますか?
竹下氏:2050年カーボンニュートラル実現に向け、市町村にも地域の再エネを活用した脱炭素を促進する事業にかかる方針などを定めることが求められています。こうした背景から「再生可能エネルギー基本条例」を定めている自治体は、30を超えるようになりました。
中でも、鹿児島県と山形県のエネルギー戦略、普及計画について注目しています。
鹿児島県については、地域の特性を生かした再エネの導入促進に自治体が努めるとして、エネルギー転換の波及効果で雇用創出が実際にできるという推計報告が上がっています(再エネ導入の試算効果では生産誘発額約2,783億円、就業者誘発数2万7,684人)。
また、山形県は(計画が)「緻密」という印象ですね。県内に賦存する再エネの有効活用を図るため再エネの事業計画が具体的です。地元住民の意見等を反映させる仕組みなど、エネルギー政策を立てていて、私共と考えが通じるものとして見ています。
―山形県と鹿児島県のケースが示すように、自治体が主役になって地元の発展を考えながら再エネを推進していくということですね。これに対して国の役割は自治体の取組みを後押ししていく、ということでしょうか。
竹下氏:その通りで、「地域主体」で推進していくことが前提にあると考えています。
大規模な太陽光や風力発電は、住民合意がない中で導入されてしまうと、結果的に環境破壊や住民生活の中でトラブルに繋がるリスクがあります。住民への配慮を無視してはエネルギー事業を推進することはできないということです。
また、地域外からエネルギーを「買ってくる」というだけでは、地域外に富が出て行ってしまうので、経済は回らないわけですね。
再エネで地域経済を循環させる仕組みをつくるという「地産地消」が、地域の雇用や経済活性化につながるので、地域主体でエネルギー事業を展開することに、地方で力を入れて取り組んでいくべきだと考えています。地域で循環させるということができれば、地域の中で雇用を生み出すことにもなるのです。
―再エネが分散化していくということを考えると、「経済」も分散化されていくべきなのかもしれませんね。そうした中、労働組合として、気候変動問題に対してはどのような取組みをされているのでしょうか。
黒澤幸一氏:我々としては、やはり「原発をゼロにする」取り組みですね。また、エネルギー問題を考えていくことを通じて、地方の経済を活性化し、雇用を生み出していく、ということが労働組合として重要な取り組みとなってきます。
それに加えて、気候危機の問題に対して、金儲け資本主義の在り方について労働組合として普段からの規制を図っていくことも求めています。
例えば、足元の長時間労働という問題の解決や働きやすい環境づくりをしていくことが、回りに回って、気候危機対策につながるという思いでいます。
同時に、官民がどのようにしてCO2排出を削減していくのか、その取り組みをうながすという点に関しても、「自治体」と「企業」の両方に労働組合から働きかけることも大切です。
(Interview:本橋恵一、Text & Photo:東條英里)
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