11月1日、損害保険ジャパングループ(以下、損保ジャパン)は、太陽光パネルの再利用(リユース)や再資源化(リサイクル)を促進する新サービス開始を発表した。発電所の太陽光パネルが台風や豪雨、積雪などにより破損した場合、廃棄せずにリユースやリサイクルにまわすと、更新時の保険料が安くなる特約を無料でつける。保険料コストの低減に加え、新たなエコシステムに与することで企業価値を向上させられるという2つのメリットで、新規の顧客獲得につなげる狙いだ。
通常、太陽光パネルに損害が生じた場合、保険会社は発電事業者が出した見積もりを審査し、それに応じた保険金を支払う。そして、その支払い金額に応じて更新した火災保険料が見積もられるというのが一般的な流れだ。今回のサービスでリユース可能の判断が下された場合には、廃棄処理費用が割り引かれ、業者の買い取り額に応じては火災保険料も低減される場合がある。
脱炭素を促し、環境保全につながるとされている太陽光発電だが、現在の日本では年間約4,400トンの太陽光パネルが使用済みとなって排出されている。さらに、2030年代後半に入ると、その廃棄物が年間50~80万トンにも及ぶ見込みだ。SDGs達成の観点からは、その運用だけでなく、廃棄の仕方やリユース・リサイクルに関する取り組みも必要だろう。
実際、環境省は2019年11月時点で、すでに太陽光パネルの再利用義務化の方針を発表している。これは、太陽光発電の導入が2012年に始まった固定価格買い取り制度(FIT)により加速度的に広まり、その電力買い取り期間が2030年代で終わることを見越してのものだ。
太陽電池モジュール排出見込量(寿命20、25、30年)
環境省「太陽光発電設備等のリユース・リサイクル・適正処分に関する報告書」より
現在、国内で製造・使用されている太陽光パネルの多くは、リユース可能ながらも、そのまま産業廃棄物として処理されている。背景には、リユースや流通の可否を判断できる再販事業者と、発電事業者がつながることのできていない現状がある。
今回発表したサービスでは、損保ジャパン側が、同グループ内のSOMPOリスクマネジメント株式会社が持つ専門的な知見を活かして、太陽光パネルの損傷具合を査定し、提携業者への仲介を無料で行う。リユース可能と判断された太陽光パネルは、日本国内のみならず、アフリカなど発電網が発達していない海外へ輸出されることも想定されており、クリーンエネルギーの世界的な普及に役立てられる。
また、廃棄処理費用がかかるのは太陽光パネルを支える足場も同様だが、実はこちらの方がパネル以上に費用が掛かるという。
普及の陰で見落とされがちな廃棄処分問題。10年以上先を見据えて動き出した損保ジャパンの取り組みが、エネルギーを生んだ後も循環型社会を意識すべきだと訴えかけている。
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