2021年12月27日、経済産業省において第43回「電力・ガス基本政策小委員会」が開催され、「今後の電力システムの新たな課題について」と題される中間取りまとめ案が提出された。示された最大の新たな課題は、電力の供給力確保のための枠組みだ。今冬も火力発電の計画外停止やLNGの不足、厳冬などにより、電力供給力における予備率が極めて低い日も出ているが、さらに夏にも再び不足することが予想されている。今後、慢性的な夏冬の電力不足の可能性も指摘されているが、どのような対応が検討されるのだろうか。
電力・ガス基本政策小委員会において、2021年9月から計5回にわたって審議されてきたのが、第6次エネルギー基本計画に対応した、2030年を念頭に置く電力システムの構築に向けた取り組みだった。具体的には、「電力供給力低下への対応と災害に対応した供給体制」、「脱炭素電源の拡大に伴う分散型電力システム」、そして「公正で持続可能な競争環境」の3つだ。
このうち、直面する最大の課題は、電力供給力低下への対応だ。すでに昨冬は電力供給力の予備力が不足し、大手電力会社(旧一般電気事業者)は綱渡りのような発電所の運用を行ってきたが、同時に電力卸取引所のスポット価格が高騰し、主に新電力の経営に大きなダメージを与えた。今冬においても電力供給の綱渡りが続いている。同時に、需要家にとっても電気料金そのものの引き上げにもつながっている。
なぜ、電力供給力の低下が課題となっているのか。電力小売り全面自由化前であれば、大手電力会社は必要とされる電源を、ある程度まで採算度外視で確保することができた。価格よりも安定供給が優先されていたし、発電コストについても、総括原価方式による電気料金で回収することができた。
しかし、電力小売り自由化によって、一義的に電力供給力を担保する主体が存在しなくなった。もちろん、小売電気事業者には小売り需要に応じた供給能力の確保が義務付けられている。とはいえ、これは電力卸取引市場が正常に機能していることが前提となる。そして、機能させるために電源の確保を計画するのが、送配電事業者やそれをとりまとめる電力広域的運営推進機関(OCCTO)の役割ということになる(図1)。
図1 広域機関の役割の変化
とはいえ、結果として、電力自由化、そして固定価格買取制度(FIT)による再エネの増加によって、スポット市場の価格の低下や火力発電所の設備利用率の低下によって採算性が悪化し、火力発電所を中心に電源の廃止が進んでいるという。2022年だけでも、300万kWを超える火力発電所の休廃止が予定されている。
こうした問題に加えて、LNGなど火力発電所の燃料の確保も課題となってきている。
追加電源に関しては、石炭火力の建設中止なども相次いでおり、住宅用太陽光発電などを含めた再エネのさらなる拡大や節電およびそれを活用したDR(デマンドレスポンス)の普及を進める必要性が高まっているということになる。
目の前の電力供給力の不足に対し、政府や広域機関が何もしなかったわけではない。中長期的な電源確保にあたって、容量市場が導入され、2020年に第1回の入札が行われた。しかし、このときのオークションで確保された電源は2024年度分であり、2021年度から2023年度までは、別途確保する必要がある。また、容量市場が導入されたからといって、確実に供給力が確保されたというわけでもない。
中間取りまとめ案では、小売電気事業者、送配電事業者、発電事業者、広域機関などそれぞれについて、電力供給力確保に向けた役割を明確化している。
小売電気事業者については、2023年度末までは、卸取引市場で合理的な価格で調達するなどにより、供給力を確保することが求められているという。また、結果として供給力確保が難しくなった場合でも、市場において売り切れが生じ、結果的に取引が成立しない場合であっても、事後的にインバランス料金の支払いを行なう場合は、確保に向けた努力を行なっているという、正当な理由があるとみなされる。インバランス料金は、予備率が3%を超える場合は80円/kWh、予備率が3%以下の場合は200円/kWhとなっており、需給ひっ迫時には小売電気事業者は大きな負担を背負うことになる。
一方、2024年度以降は、容量市場を通じて電源が確保されているため、容量拠出金を支払うことが義務となる。
もっとも、卸電力取引市場を合理的に機能させ、売れ残りがあるにもかかわらず取引が成立しないような状況を避けるために、市場の運用の再検討の必要性については、含みを持たせている。同時に小売電気事業者に対しても、過度に卸電力取引市場に依存するのではなく、相対取引や先物市場などの活用をうながしている。
なお、前述の容量拠出金については、新電力側からは新たな負担の追加だという認識が示されている。また、現状では相対取引なども決して安価ではなく、いずれも電気料金の引き上げにつながる可能性がある。結果として、自由化されたにもかかわらず、電気料金が安くなっていないといい批判が起こりうるという見方もできる。
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