1997年の地球温暖化対策 市民・事業者・行政による協働とCOP3、京都議定書 | EnergyShift

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1997年の地球温暖化対策 市民・事業者・行政による協働とCOP3、京都議定書

1997年の地球温暖化対策 市民・事業者・行政による協働とCOP3、京都議定書

2020年09月11日

レジェンド?はたまた惰性?~足温(そくおん)ネット20年の軌跡

市民立発電所の設置を進めてきた、「足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ(足温ネット)」。そのはじまりは、フロンガス回収事業からだった。1997年、京都議定書が採択されたCOP3に関連した地球温暖化対策、そして市民活動とはどのようなものだったのか。足温ネット事務局長の山﨑求博氏によるコラムをお届けする。

区民が必要だというのなら

当時(1997年)の江戸川区長は中里喜一氏。区長公選制の時代から区長を務め、区内の緑地を増やすべく植樹を推進したり、区の上空を航空機が飛ぶとなると騒音被害がでると国とのケンカも辞さない名物区長でした。彼が、フロン回収事業に反対する理由は極めてシンプルです。

民間が作ったフロンを、なぜ区が公費で回収・処理しなければならんのか

正論です。このために、江戸川区は新年度(1997年4月)から事業がスタートできず、お隣の葛飾区に先を越されることになってしまいます。あせった区の担当職員が、独自にフロン回収を始めた私たちにコンタクトを取ってきたのは、「区長を説得してほしい」というものでした。

私たちは早速、区長と面談し、区長の言われることはもっともだが、地球温暖化対策は愁眉の課題であり、フロン回収に取り組む必要がある、と訴えました。区長の回答は、これまたシンプルでした。

区民から必要だというのなら事業を進める

こうして、江戸川区のフロン回収事業は補正予算を組み、9月から実施されることになりました。首長は政治家だなとつくづく感じました。

市民・事業者・行政による協働

区の事業スキームは、区がフロンガス回収機を借り上げて、区内の自動車解体業者に貸与し、業者が回収したフロンガスを千葉県市川市にある廃棄物処理会社に持ち込み、高温で分解処理するというもので、予算は530万円でした。そのスキームを区民が後押しして、自動車解体業者と行政が連携し、地球温暖化対策としてフロンガスを回収するという、地域発の事業となったのです。
区が発行する事業報告書にも「区民の後押しがあった」と記載されました。

3ヶ月後に京都で気候変動枠組み条約第3回締約国会議(COP3・1997年)の開催を控え、マスコミは江戸川区の事業に注目します。私たちもこの動きを盛り上げようと、江戸川区と共催でフロンガスと地球温暖化問題について考える「区民のつどい」も開催したり、フロンガスの回収に賛同する方向けに自動車用ステッカーを配布したりしました。特に、区民のつどいには260名もの市民が参加し、東京新聞にも大きく取り上げられました。

1997年開催「区民のつどい」

江戸川区がNGOイベントに登壇

さて、12月に入りCOP3京都会議がはじまると、オブザーバー参加が認められた私たちはお寺に寝泊まりしながら国際会議場でのロビイングやNGO側のサイドイベントの準備に追われます。

COP3のパス

当時、日本ではフロンガスの回収が業界の自主的取り組みに委ねられ、回収・処理が法律で義務付けられていなかったことから、そうした実情を訴えるペーパーを英語で作り、会議場などで配りました。そして、12月2日にはフォーラム「足元から地球温暖化を考える」を主催し、フロンガスの回収・処理を訴えるとともに、江戸川区役所からもフロン回収事業について報告します。NGOイベントに行政が報告者として登壇することは当時としては珍しいことでした。

1997年、COP3にあわせて開かれた気候フォーラムのチラシ

結局、区のフロン回収・処理事業はあしかけ4年にわたって行われ、総計で約5トンのフロンガスを回収・処理しました。二酸化炭素に換算すると数十万トンに匹敵します。また、国主導による業界の自主的取り組みよりも回収率が高く専門紙から評価されました。

この後、フロン問題に関して私たちは、東京都公害防止条例(現・環境確保条例)改正の動きをキャッチしてフロン対策の必要性を東京都に働きかけると共に、フロン排出規制に向けた環境NGOの連絡会を立ち上げ、法定外目的税として「フロン税」を提案する等の活動を展開していきます。そして、こうした動きの中で政府は2001年にフロン回収・破壊法を成立させ、区の事業も終了しました。

1997年当時の東京新聞

市民活動と行政、どのように付き合うか

フロン回収事業の取り組みとその後の区での事業化は、活動を始めたばかりの私たちにとって素晴らしいスタートにつながりました。こうして、地域での活動を基盤としながら、具体的な事業を通じて地球温暖化問題に取り組むスタイルが定着していくことになります。

さて、環境NGOの「お悩みあるある」の中に、「どうしたら行政と協働できるのか」というものがあります。

この経験を踏まえて言うと、行政が何を考えているか、何に困っているかを聞き出し、受け止めることです。一方的に提案や働きかけを行っても、必要と感じなければ行政は何の反応も示しません。しかし、そのことに腹を立てても仕方がないので、自分たちが進めたいことについて、行政側がどう捉え、何を課題と考えているのかが分かれば、それに合わせた提案も考えることができます。無論、行政側の言うことを何でも聞くこととは違いますから、是々非々の姿勢で良いのです。

今後の連載では、様々な主体との関りが出てきます。そうした関わり方についてもお話しできればと思います。それでは、また。

COP3 メインセッションの様子 Credit: UN Photo / Frank Leather.

連載:レジェンド?はたまた惰性?~足温(そくおん)ネット20年の軌跡

山﨑求博
山﨑求博

1969年東京江東区生まれ。東海大学文学部史学科卒。現在、NPO法人足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ事務局長。自分をイルカの生まれ変わりと信じて疑わないパートナーとマンション暮らし。お酒と旅が大好物で、地方公務員と環境NPO事務局長、二足の草鞋を突っかけながら、あちこちに出かける。現在、気候ネットワーク理事、市民電力連絡会理事なども務める。

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