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再エネ調達が課題になるこれからの時代に、スターバックスが進化させた「再エネ調達法」とは

再エネ調達が課題になるこれからの時代に、スターバックスが進化させた「再エネ調達法」とは

2021年10月21日

世界中に多くのファンをもつコーヒーチェーンのスターバックスコーヒーは、今年で創業50周年を迎えた。環境の再生に取り組むリソースポジティブカンパニーとなるため、再エネ導入にも積極的だ。

日本ではまだPPAでの導入はこれからだが、一回りも二回りも先にいっているスタバの取組みには学ぶところが多い。スタバはすでにバーチャルPPAと呼ばれる手法で再エネを調達しているが、今回、この方法をとある形で進化をさせ、再エネ調達における欠点を補完してきた。VSAと呼ばれるその手法を見ていきたい。

資源回復に責任もつ「リソースポジティブカンパニー」

2021年5月、スターバックスコーヒー日本法人は直営店舗で使用する電力を再生可能エネルギー100%に切り替えていくことを宣言した。当初の計画どおりに進めば、10月末には国内の店舗の約2割にあたる約350店舗の切り替えが完了する。

こうした動向の背景にあるのは、2020年1月にスターバックスがグローバルで掲げた「リソースポジティブカンパニー」というビジョンだ。リソースポジティブカンパニーとは、事業活動によって使用する量より多くの資源を回復させ、排出するより多くのCO2を削減するという考え方だ。創業50周年の節目となる2021年の前年にコミットされた。

CO2・水利用・廃棄物を2030年に半減

リソースポジティブカンパニーとなるため、2030年に向けた3つの目標が設定された。(1)店舗運営とサプライチェーンでのCO2排出量を50%削減、(2)事業運営とコーヒー豆の生産で使う水の50%を水リスクの高いエリアに還元、(3)店舗や工場からの廃棄物を50%削減し、サーキュラーエコノミーにシフトの3点だ。

これに対する戦略は、植物性のメニューオプションを拡充、使い捨ての包装をやめリユース可能なものにするなどの5つ。土壌の修復に重きを置いたリジェネラティブ農業、廃棄物のマネジメント、持続可能な事業運営へのイノベーションも挙げられた。

2020年の「Global Environment and Social Impact Report」によると、1年目は、CO2排出を11%、水の使用量4%、廃棄物12%の削減に成功した。もっとも、削減の理由は、主に新型コロナの影響による事業活動の縮小だという。その意味では、2021年以降に真価が問われることになるだろう。

再エネ調達の難関はアジア

2015年以来、スターバックスは北米や欧州、中東、アフリカといった80以上の国や地域で事業を展開しており、再生可能エネルギーの調達に取り組んでいる。前述のレポートによると、再生可能エネルギーの調達はおおむね順調だ。北米と欧州の直営店舗を再生可能エネルギー100%で運営できるほどの量を購入しているという。

一方で、日本と中国の市場には制約があり、アジアにおける再生可能エネルギーの調達が課題とされている。グローバル全体での再生可能エネルギーの調達比率は72%だ。2020年は、お膝元の米国における再生可能エネルギープロジェクトに力を入れ、自社の直接排出によるCO2の削減に取り組んできた。

PPAの次なる「バーチャル蓄電契約」とは

スターバックスの再エネ調達においては、メインとなるのは電力購入契約(PPA)だ。中でも、再エネ発電所の環境証書を直接購入する一方、発電所の電気は市場に売却し、電気事業者から別途電気を購入した上で差額を決済する、いわゆるバーチャルPPA(VPPA)が目立つ。

そして注目されるのは、カリフォルニア州において、太陽光発電のVPPAに加えてバーチャル蓄電契約(Virtual Storage Agreement、VSA)を締結したことだ。契約容量は太陽光が24MW、蓄電池が5.5MWで同州の550以上の店舗に電力を供給できる。2021年内の稼働予定だ。再生可能エネルギーの調達をサポートするLevelTen Energyのサポートによって実現した。

VSAは、VPPAに蓄電池を設置したものだとイメージしてもらえればいいだろう。VPPAの欠点は、発電事業者が市場価格で電気を販売することになるが、太陽光発電がさかんな時間帯は市場価格が低い傾向がある。一方、スターバックスに供給する電気には市場価格が高い夕方などの時間帯も含まれる。したがって、実質的に電気を安く売って高く買い戻すことになるため、経済性の面で課題が残る。

これに対しVSAでは、太陽光が発電した電力を蓄電池に貯め、ピーク時間帯などに放電(売電)を行うことで経済性を向上させることができる。ピーク時間帯は電力の市場価格が高いだけでなく、石炭やガスなどの化石燃料による電力が多い。蓄電池で売電をコントロールすることで、より付加価値の高い電力の運用が可能になるということだ。

LevelTen Energyによると、電力会社以外による蓄電池の設置による、これほど大規模なVSAは初の試みであるという。今回、スターバックスがVSAの活用を決めたことで、VPPAやVSAへの投資が拡大すると期待されている。また、投資する側にとっても、高い市場価格で売電できるため、魅力的な案件となる。

一方、本拠地のワシントン州では風力発電から州内の直営店舗や焙煎工場などにクリーンな電力を調達している。

その他、太陽光発電を地域で共有する、いわゆるコミュニティソーラープロジェクトも注目される。ニューヨーク州ではプロジェクトに約9,700万ドルを投資。供給先は直営店舗に加え、家庭や中小企業、NGO、教会、教育機関など広い範囲に及ぶ。地域に愛されるサード・プレイスをコンセプトとする同社にとって、コミュニティソーラーは親和性が高い取組みだと感じられる。

アジア市場とサプライチェーンの脱炭素化に期待

スターバックスは今後、アジア市場での再生可能エネルギーへのシフトを強化するとしている。冒頭の日本での取組みはその皮切りだろう。

VSAという先駆的な事例を築いた同社だからこそ、どのようにサプライチェーン全体の排出量を削減していくのかが注目される。電気を直接供給するフィジカルPPAに加えて、VPPA・VSAとコミュニティソーラーなどを組み合わせた、サプライチェーンによるサプライチェーンのための太陽光発電所なども登場するかもしれない。

また、この先例は、系統を介するVPPAでどのように蓄電池を活用するかを明示した。市場価格が高いタイミングを選んで売電することで、事業者の投資回収を早めるだけでなく、市場のひっ迫を防ぐ効果も期待できる。これは効率的で合理的なPPAのあり方だと思われる。

国内でもPPAは少しずつ拡大しており、日本らしい進化をみせている。また、日本のPPAは今後、オンサイト型からVPPAを含めたオフサイト型へと発展していくことが予想される。先行する海外事例を参考にしながら、追加性のある再生可能エネルギーの調達手段として多様化、浸透してほしい。新たなエネルギービジネスとして力強く成長する未来を信じている。

山下幸恵
山下幸恵

大手電力グループにて大型変圧器・住宅電化機器の販売を経て、新電力でデマンドレスポンスやエネルギーソリューションに従事。自治体および大手商社と協力し、地域新電力の立ち上げを経験。 2019年より独立してoffice SOTOを設立。エネルギーに関する国内外のトピックスについて複数のメディアで執筆するほか、自治体に向けた電力調達のソリューションや企業のテクニカル・デューデリジェンス調査等を実施。また、気候変動や地球温暖化、省エネについてのセミナーも行っている。 office SOTO 代表 https://www.facebook.com/Office-SOTO-589944674824780

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