一方、比較的にまとまりを見せたのは排出ゼロ目標の年度についてだった。例えば、排出量ゼロ目標について、日本をはじめ、議長国の英国や米国、欧州連合(EU)など多くの主要先進国は、2050年までの排出量ゼロ目標を掲げており、これまで表明を避けてきたオーストラリアも開催直前の10月26日に同目標を表明した。
とはいえ、2050年の排出ゼロを困難とする国も多く、中国、ロシア、サウジアラビアは2060年、インドは2070年までの排出量ゼロ目標を掲げることとなった。
無論、先進国に比して排出ゼロ達成目標が漸進的であるというだけで、上記の国が脱炭素に否定的というわけではない。インドは、2030年までに非化石電源を500GWに増やし、再エネを50%にすることやCO2排出係数を45%削減することなどを発表し、ロシアはプーチン大統領が首脳級会合に欠席したものの、2050年に2019年比でGHG60%削減するとした。
しかしながら、2018年時点での排出量1位の中国(28.4%)、3位のインド(6.9%)、4位のロシア(4.7%)が漸進的な姿勢を示したことは、先進各国と途上国の対立構造を浮き彫りにした。地球温暖化を抑えるためには、先進各国が目標を達成することは前提条件で、それ以上に途上国のGHG排出量を削減することが鍵になるとされている。COPの中盤には、米国バイデン首相から、中国・ロシアに対して批判的な声が向けられる場面もあった。
そして、この対立構造をより際立たせたのが2番目の「環境対策のための途上国への資金支援」についてだ。中でも、中国は「先進国からの資金支援が足りない」旨をCOP序盤から繰り返して途上国代表の立場をとっており、同様の主張はインドやバングラデシュ、インドネシアなどからも寄せられた。
パリ協定では、先進国を対象に、2020年までに途上国へ年1,000億ドル(約11兆4,000億円)資金拠出するという目標が設定されていた。しかし、その達成は適わず、日本の岸田首相が新たに5年間で最大100億ドル(約1.1兆円)の追加支援を行うと表明したように、先進各国から追加支援の声が上がったが、達成は2022~2023年にずれ込む見通しだ。
このように、排出量ゼロ目標に関しては、2050年までに自国の排出量ゼロを掲げつつ、途上国の脱炭素も推し進めようとする主要先進国と、脱炭素を推し進めるようとするならばパリ協定通りの資金援助を施すべきだと主張する途上国という構図が出来上がった。
そうした中、11月10日には、米国と中国の両国政府が気候変動対策での協力策を持った共同宣言をまとめ、英国のジョンソン首相から「COP26の交渉を押し上げる合意だ」と評される一幕もあった。しかし、この米中合意が中国の排出量目標前倒しにつながることはなく、排出ゼロ達成目標時期の前倒しや、2030年の目標強化を引き出すことも叶わず、具体的な数値目標に乏しい結果となった。
そして、両国の溝が顕著となったのが、冒頭で触れたグラスゴー気候合意の「石炭火力の段階的廃止」についてだった。先述のように、先進国は途上国に対して、CO2排出量削減を促しているが特に大きなトピックとなっているのが、石炭火力発電だ。石炭は化石燃料の中でも特にCO2排出量が多いが、途上国や新興国としては安価な石炭火力を利用したいという思いがある。
議長国である英国は、CO2排出量の多い石炭火力発電について、主要国が2030年代、他の国は2040年代に段階的に廃止する方針などを盛り込んだ声明を発表し、その内容でグラスゴー気候合意でもまとまりかけた。しかし、最終段階直前になって石炭火力の廃止に難色を示していたインドが文言の修正を提案。さらにその姿勢を、同じく石炭火力発電に頼っている中国が擁護。米欧の推す内容への反発を見せ、最終的には「石炭火力発電の段階的な廃止」と記すこととなった。
これについて、英国のシャーマ議長は「この合意を保護することが大事だ」と述べた。
石炭廃止、森林保全などGHG排出にまつわる周辺要素についても各国表明・・・次ページへ
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