5月20日、米カリフォルニアでUberなどのライドシェアサービスにもEVが義務づけられた。ライドシェアへのEV義務化はアメリカで初の規制になる。
5月20日、米カリフォルニアの大気資源局は「クリーンマイル基準」を全会一致で承認した。これにより、UberやLyftなど、ライドシェアの車両は段階的にではあるが、2030年までにドライバーの車両をEVにしなければならなくなった。ライドシェアへのEV義務化はアメリカで初の規制になる。
Uberは日本ではUber Eatsがおなじみだが、海外ではライドシェアが当たり前になっている(参考記事:「シリコンバレーのACES革命最前線 Shared ~ライドシェアとマイカーシェアリング~」)。簡単に言うと、スマートフォンに最適化された配車サービスだ。だれでも簡単にはじめることができるライドシェアはACES(日本ではCASE)の車のシェアに相当する。
では、なぜ大気資源局は規制に踏み切ったのか。それは、ライドシェアリングの車両は乗客を乗せるまでの合間などが発生し、通常の自家用車よりも50%も多くのCO2を排出しているせいだ。乗客を乗せないで走る時間は走行時間の4割に達する。ライドシェアはUberとLyftがほぼ独占しており、その排出される温室効果ガスはカリフォルニア州の車両の排出量の約1%に相当している。
カリフォルニア州はもともと脱炭素・再生可能エネルギーに前のめりな州だ。ガソリン車の新車販売は2035年までに禁止する。今、日本で議論されている「新規の住宅建築への太陽光パネル設置義務づけ」は2018年に決まり、2020年1月の新築物件からすでに適用されている。
また、電力小売事業者に対し、2030年までに再生可能エネルギーの割合を6割に、さらに2045年には100%にすることを義務づけている。カリフォルニアの民間電力小売事業者は約40%前後が現在再生可能エネルギーであり、大幅な引き上げが求められている。太陽光発電の増加が見込まれている。
カリフォルニア州は日照条件が良く太陽光発電に向いており、余剰電力まででている。一方で、気候変動が原因と考えられる山火事が毎年のように起きていることもあり、住民の再エネへの意識も高くなっている。
そしてもちろん、シリコンバレーの地であり、新しいテックにも意欲的だ。こうしたことがカリフォルニア州をアメリカでも屈指の再エネの州にしている。
一方でライドシェア各社も脱炭素に熱心である(ように見える)。Uberは2040年、Lyftは2030年までにすべての車両をEVにする目標を掲げている。
UberではUber Greenという、乗客がEVを選ぶことができるオプションプログラムもある。客はガソリン車ではなくEVを選び、さらに追加で一ドル払う。その一ドルの半分をドライバーは直接受け取り、のこりの半分はEV購入支援に充てられる。客はのちに10%割引が適用される。EVを選んだ客も、EVのドライバーも得をするプログラムだ。2025年までに8億ドルをUberは提供する。
また自動車メーカー、EVレンタル会社などと提携し、ドライバーのEV移行支援荷も務めている。テスラやGoogleのWaymoらと立ち上げた、「Zero Emission Transportation Association」は2030年までの新車販売をすべてEVにする目標を立てている。イギリスでは日産と提携してドライバーにリーフの導入支援もしている。
今回のEV義務化は概ねUber側も受け入れているようだが、ライドシェアのドライバーは従業員ではなく独立した請負業者であるため、費用負担の問題は複雑になっている。EVへ買い替える資金を出すのは企業かドライバーか、どちらなのか。
Uberのサステナビリティ担当のAdam Gromis氏は「私たちはこの規制を支持します。しかし、ドライバーへの(金銭的な)支援と規制を同時に考えると、検討すべき点がある」と述べた。つまり、車両の買い替え支援をどこまでおこなうか、の線引きだ。
ライドシェアのドライバーは低所得者が多いこともあり、EV移行への余裕がない人も多い。環境保護団体やドライバーはこのEV化の費用を企業が負担するよう求めているが、不透明だ。
大気資源局のクリーンカー担当は「目標達成は企業次第だが、(実際に車両を持つ)ドライバーに金銭的なインセンティブを支払うことを期待する」と述べた。
このライドシェアのEV義務化は、カリフォルニア州以外にも同様に広がると考えられる。バイデン大統領のEV促進のインフラ法案もあり、アメリカのEV化は加速している。このようなギグワーカーにもその波は来ている。
(Text:小森岳史)
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