審議会ウィークリートピック
2020年11月18日、経済産業省の第27回「系統ワーキンググループ」が開催された。議題は「系統連系に関する各地域の個別課題について」である。具体的には、中国・四国間連系線と東北・東京間連系線の容量運用が取り上げられた。これらのモデルケースをもとに、再エネ電源の立地と送電系統の運用の在り方について考える。
再エネ電源と「系統制約」「需給制約」の問題
系統ワーキンググループは、再エネ電源の系統接続保留問題を契機として2014年10月に設置されたワーキンググループであり、接続可能量の検証のほか、再エネ電源の接続可能量の拡大方策等について検討をおこなうことを目的としている。
電源(本稿では特に明記しない限り、再エネ電源を意味することとする)と電力系統の関係において、接続保留や出力制御(抑制)が生じる原因は、主に「系統制約」と「需給制約」の2つに大別できる。
「系統制約」の一例は、東京電力パワーグリッドのエリアのうち、千葉方面で顕在化している問題である。特定の送電線・系統の運用容量の制約が原因であり、出力抑制が発生し得るのはその系統に接続する電源のみである。
この系統制約に対しては、地内送電線の新規投資・増強ではなく、日本版コネクト&マネージの1つとして、ノンファーム接続により解消を図ることが予定されている。また、今後策定される広域系統「マスタープラン」に基づき、プッシュ型で地内送電線の新設・増強をおこなうことも系統制約解消の一手段となる。
「需給制約」の一例は九州エリアで顕在化している再エネ電源の出力制御(抑制)であり、九州エリア全体としての需要と供給のバランス維持の観点から、供給過剰となることを防ぐために一定の優先順位に基づき他の電源種別を抑制した後に、再エネ電源を抑制している。これが需給制約による抑制であり、「下げ代不足」とも表現される。
なお、抑制順位を定める優先給電ルールの中では、火力電源の最大限の抑制のほかに、地域間連系線(以下、単に連系線と呼ぶ)の活用も定められている。九州エリアから中国エリアに送電(輸出)できるならば、その分、仮想的に需要が大きくなったように見え、下げ代不足解消の一助となる。
よって、需給制約の解消には連系線の活用・増強が重要となる(上記の系統制約においては地内送電線が対象となることに留意)。
現在は間接オークションが導入されているため、再エネ電源の抑制が必要となるような供給過剰時間帯では、JEPXスポット市場当該エリア価格は0.01円/kWh(JEPXの下限値)となり、連系線の空き容量はすべて前日市場で活用されることが通常である。前日市場で空き容量が残った場合は、必要に応じて「⻑周期広域周波数調整」の発動により連系線は最大限活用されることとなる。
他エリアにどれぐらい送電(輸出)できるかは、連系線の運用容量によって決まるため、系統ワーキンググループでは運用容量拡大策についても検討している。
(本稿では、連系線の新設・増強に関する検討は割愛する)
地域間連系線運用容量算定の考え方
地域間連系線の運用容量は、図1のように「熱容量」、「系統安定度(同期安定性)」、「電圧安定性」、「周波数維持面」から定まる系統運用上の各限度値のうち、最小の値に基づき算定される。
図1.連系線の運用容量の算定
出所:地域間連系線等の強化に関するマスタープラン研究会連系線の運用容量の算定の4要素は以下のとおりである。
① 熱容量:
送電線1回線故障や変圧器1台故障(いわゆるN-1故障)における健全設備の連続許容温度から求められる電流または直列機器(遮断器、変圧器等)の定格電流に基づく潮流の値。
② 系統安定度(同期安定性):
想定故障の発生を模擬した場合において、発電機の安定運転が維持できる潮流の値。
例えば、以下の想定故障がある。
- *連系線等の1回線故障
- *連系線等が接続している変電所・開閉所の片母線故障
- *ループを構成している場合の1ルート断故障
③ 電圧安定性:
想定故障の発生を模擬した場合において、系統電圧を上昇(または低下)限度範囲内に維持できる、または系統の電圧安定性を維持できる潮流の値。想定故障は②と同じ。
④ 周波数維持面:
それぞれの系統が大幅な周波数上昇(または低下)することなく、周波数面からの系統安定維持が可能となる潮流の値。
系統が分離した場合に、連鎖的に電源脱落、負荷脱落に至らないことを考慮して、当該設備を運用する一般送配電事業者が定める値。
つまり運用容量は、一定の故障発生を想定し、求める信頼度基準が達成される数値が算定されている。
筆者作成結果として、連系線によって何が最小律となるかは異なり、例えば中国・九州間連系線(関門連系線)では周波数制約により運用容量が算定されている。
中国・四国間連系線の運用容量拡大
四国エリアでは(2020年9月末時点)、接続済み太陽光発電が285万kW、接続済み風力発電が28万kWとなっており、5月の低負荷期には需要に占める太陽光発電出力比率は88%を記録するなど、再エネ出力制御の可能性が高まってきている。
第27回系統WGでは四国電力送配電株式会社から、中国四国間連系線(以下、本四連系線)の運用容量拡大に関する提案がなされた。現在、本四連系線の運用容量は熱容量制約により120万kWとなっているが、この拡大により再エネ出力制御が低減できる可能性がある。
本四連系線は図2のように、架空送電線+ケーブル区間から構成されている。
図2.本四連系線の構成
出所:四国電力送配電株式会社 「中国四国間連系線の運用容量拡大について」 2020.11.18 第27回系統ワーキンググループよりOFケーブル熱容量は架空送電線熱容量よりも小さいため、熱容量はケーブル区間で決定されている。一般的に熱容量は短時間(数秒から数分という単位)では、一定程度拡大することが可能である(許容潮流を拡大できる)。
ところが本四連系線のケーブル区間では過負荷容量145万kWの場合、短時間許容温度に達する時間は4時間と比較的長いことが報告された。連系線1回線故障発生時には、この4時間以内に給電指令により調整電源を抑制し、潮流を連続容量120万kWまで抑制することで過負荷を解消することが出来る。これにより、2回線運用時の運用容量を120万kWから145万kWに拡大することが可能となる。
上記運用容量算定の4要素のうち、熱容量制約が145万kWまで緩和されるとしても、他の3要素が制約となっていないか確認する必要がある。具体的には、ルート断故障(2回線故障)時における周波数維持面の確認である。
四国電力は従来からルート断故障に備え、電制電源(※1)と阿南紀北直流幹線のEPPS(※2)の合計で100万kW以上を確保してきた。
- ※1 緊急時に、瞬時に発電を制限(遮断)する装置をあらかじめ設置した電源
- ※2 緊急時に、あらかじめ設定した電力を瞬時に送電する機能(30分で自動終了)
平常時であればこれで問題ないが、再エネ電源出力が多い時間帯には、火力電源はすでに下げ切っており、十分な電制電源容量が確保できないという問題が生じる。
この対策としては、再エネ電源を新たな電制電源と位置付ける。すでに特高の再エネ電源は「需給制約」による出力制御に対応するため、オンライン制御による緊急出力制御機能を具備している。この既存の再エネ出力抑制システムを活用することにより、EPPSが稼働する30分以内に再エネ電源(特高)を抑制し、周波数を維持することが可能となる。
ルート断故障時に再エネ出力を自動抑制する新たなシステム開発に1年程度要する見込みであるが、その後には運用容量は145万kWまで拡大する予定である。
東北・東京間連系線の運⽤容量低下
東北エリアでは2021年3月時点において、太陽光が630万kW、風力が197万kW連系済みであることが見込まれており、春秋の低負荷期に再エネ出力制御の可能性が高まっている。
東北東京間連系線は図3のように、500kV相⾺双葉幹線2回線と275kVいわき幹線2回線で構成されており、東京向き運⽤容量は同期安定性と熱容量の制約要因によって決定している。
ここであらためて連系線運⽤容量と電制の関係について説明しておこう。
図3のような系統構成において500kV相⾺双葉幹線で2回線事故が発⽣した場合,残った健全な275kVいわき幹線に潮流が廻り込むことになる。電制無しでは、事故時の過負荷を避けるためにはいわき幹線の熱容量236万kWをそのまま連系線運用容量とせざるを得ない。万一の相⾺双葉幹線の事故に備えて、平常時の運用容量を小さく抑える勿体ない状態となってしまう。
図3.東北東京間連系線 電制が無い場合
出所:東北電力ネットワーク株式会社「下げ代不足時における東北東京間連系線の運用容量低下とその緩和策について」2020.11.18 第27回系統ワーキンググループよりここで発想を転換し、相⾺双葉幹線の事故時にはそのときだけ発電出力を抑制することで、いわき幹線の過負荷を避けることとする。緊急時のためにあらかじめ電制電源を指定しておくことにより、平常時の運用容量を550万kWまで拡大することが可能となっている。
図4.電制による運用容量の拡大
出所:東北電力ネットワーク株式会社「下げ代不足時における東北東京間連系線の運用容量低下とその緩和策について」2020.11.18 第27回系統ワーキンググループよりところがこの工夫も、再エネ出力が大きい時間帯においては四国送配電と同じ問題が生じる。
従来は多くの火力が稼働していたため、緊急時にはそれら火力電源を電制することが出来たが、再エネ高出力時には需給バランス確保上、優先給電ルールに基づき、火力は停止もしくは低出力で稼働することとなる。よって電制電源容量が充分確保できないため、連系線運用容量は400万kW程度へ縮小せざるを得なくなる(550万kW→400万kW)。
再エネ高出力時に東北から東京エリアへなるべく多くの再エネを送電したいところだが、逆に運用容量は縮小するという皮肉な現象が発生する。
この問題への対処は、四国送配電と同様である。
再エネ電源(当面はオンライン制御可能な特高電源)を新たな電制電源と位置付け、相⾺双葉幹線2回線事故時にオンライン制御することにより、再エネ高出力時には連系線運用容量を30万kW程度回復することが可能となる。なお再エネ抑制開始から完了まで10分程度を要するため、この間、いわき幹線は過負荷状態となる。
再エネ電源主力化のために 全体最適化の検討を期待
2050年脱炭素社会の実現および再エネ電源主力化のためには、地域間連系線・地内送電線の新設・増強は一定程度必要と考えられるが、これには長い期間と巨額の費用(もちろん費用便益評価はプラス)が必要となる。短期的には本稿で見たような既存設備を活用した運用面での改善、拡大を同時に進める必要がある。
再エネ電源を新たに電制電源と位置付けることに抵抗感を感じるかもしれないが、そう遠くない将来には電源の大半が再エネであることが想定されることから、再エネ電源自身がこのような下げ調整力を持つことは不可欠である。
同様に、現在はほぼ特高電源に限り具備しているオンライン制御機能を、高圧電源にも拡大することが、更なる再エネ導入拡大にも資すると考えられる。
今回、第27回系統ワーキンググループでの運用容量拡大の報告は、四国送配電と東北電力ネットワークの2社だけであったが、多くのエリアで共通の課題を抱えていると考えられる。連系線運用容量の算定は自社エリアだけで決まるものばかりでなく、隣接する他社エリアの需給バランス・電源構成によっても変わり得るため、なるべく多くの一般送配電事業者間で足並みを揃えた全体最適化の検討を進めることを期待する。
現状よりも拡大された連系線運用容量を先行して示すことは、再エネ事業者等に予見性を与え、出力抑制が相対的に少ない、最適な電源立地を選択させるインセンティブを与えることであろう。